5〜8日、実業団の頂点を決める日本リーグのファーストステージが行なわれた。伊予銀行男子テニス部は、ノア・インドアステージに1−2と惜しくも敗れるも、明治安田生命、三井不動産、三菱商事の3試合に3−0で快勝し、3勝1敗とした。同じく3勝1敗のリコー、伊勢久に取得セットと失セットとの差で上回り、現在2位の好位置につけている。ファーストステージで掴んだ手応え、そして1月に行なわれるセカンドステージに向けての課題を秀島達哉監督に訊いた。
(写真:エースとしてチームを牽引した佐野選手)


「絶対に勝たなければいけない試合が続く中、選手たちにはプレッシャーもあったはずです。その中で、きっちりと3勝できたことは評価できると思います」
 そう切り出した秀島監督は、「しかし」と続けた。
「ただ、内容自体はあまり良くはなかった。悪いなりに勝てた、というのが正直なところです」

 3勝1敗、それも3勝はシングルス2本、ダブルスの計3本で相手に1セットも奪われない完勝だった。にもかかわらず、指揮官があえて厳しい言葉を口にしたのはなぜか――。
「この数年間で、伊予銀行のレベルは着実に上がっています。練習の取り組みにおいても、質、量ともに他のチームに負けてはいません。だからこそ、もうそろそろ決勝トーナメントにいくのが当たり前くらいにならなければいけない。そのためには、ここでつまづいていては話になりませんからね」

 これまでは「決勝トーナメントにいくこと」が目標だった。しかし、秀島監督はそのレベルから脱却すべき時を迎えていると考えている。そして、実際にそのレベルを超えたチームになりつつあると感じているのだ。だからこそ、3勝したことを喜ぶのではなく、あえて内容を問う厳しさを選手に求めている。つまり、厳しい言葉は指揮官の期待度の大きさでもある。

 “ズルズルいかない”が成長の証

(写真:“先鋒”としての役割を果たし、チームに勢いをもたらした飯野選手)
「初戦の結果でリーグの方向性が決まると思っています」
 日本リーグ開幕直前、秀島監督はこう語った。その初戦の明治安田生命戦、まずはシングルスNo.2の飯野翔太選手が6−4、6−1で先勝すると、シングルスNo.1の佐野紘一選手は6−0、6−0とエースらしい圧巻の強さを見せつけた。そして坂野俊・廣一義の両選手でペアを組んだダブルスも6−1、6−4でストレート勝ちを収め、伊予銀行は幸先いいスタートを切った、と傍目には映った。しかし、内容としてはチームとして満足いくものではなかったという。特に、飯野選手のサーブが本調子とはいかなかった。それでも3戦目、4戦目と徐々に調子を上げてきており、昨年からレベルアップした姿も見せている。

「いったん崩れてしまうと、そのままズルズルといってしまうことがよくある。でも、それでは勝つことはできない。悪い時にも、立て直して対応していく力が必要」
 一昨年、昨年と日本リーグ後、秀島監督が口にしていたチームの課題点だ。昨年、「ズルズルいかなくなった」選手に名を挙げたのが佐野選手だった。そして、今年は飯野選手もその仲間入りを果たした。

 4戦目の三菱商事戦、この日もシングルスNo.2として出場した飯野選手は、第1セット、最初の2ゲームを連取された。3ゲーム目をブレイクするも、4ゲーム目を逆に相手にブレイクされ、ゲームカウント1−3となった。しかし、この劣勢の状況から、飯野選手は見事に立て直してみせた。5ゲーム目以降、なんと5ゲームを連取したのだ。そして第2セットも奪い、終わってみればストレート勝ちで、チームを勢いづけた。

 シングルスNo.2の試合は、チームで一番最初に行なわれ、“先鋒”の役割を担う。当然、チームに及ぼす影響は大きく、その結果次第でチームが勢いに乗れるか否かが決まるといっても過言ではない。言うまでもなく、非常にプレッシャーのかかるポジションだ。飯野選手はその役割を全4試合で担った。そのことについて、秀島監督も評価している。

「決して内容は良くはなかったことは確かです。でも、それでもきちんと結果を出してくれた。しっかりとシングルスNo.2の仕事はしてくれました。1戦目よりも2戦目、2戦目よりも3戦目と、徐々に調子も上向いてきていますから、セカンドステージでは、さらにいいテニスを見せてくれると期待しています」

 決勝T進出のカギ握る初戦

 来年1月24〜26日の3日間にわたって行なわれるセカンドステージでは、リコー、イカイ、伊勢久と対戦する。そのセカンドステージでのポイントについて訊くと、秀島監督は迷うことなく「初戦のリコー戦がすべて」と語った。

 近年、リコーとはライバル関係にある。お互いに決勝トーナメント進出のカギを握る相手となっているのだ。今回もファーストステージの戦績が3勝1敗と並んでいる状況での対戦だけに、絶対に負けられない。

「勝った方が、決勝トーナメントに行く可能性が高いでしょうね。うちが調子を上げてきていることは感じているでしょうから、リコーもよりブラッシュアップしてセカンドステージの初戦に臨むと思います。でも、うちはそれを跳ね返したいと思います」

 テニスの内容自体は、より詰めていくことを必要としながらも、やはり3勝したことは選手には大きな自信となっている。「リコーに3−0で勝ちます」と秀島監督。セカンドステージは、伊予銀行男子テニス部が、さらにもう一段、高いステージに上がれるかどうかの正念場となりそうだ。


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