昨シーズンは最下位ながら、レオパレス21の廃部により、今シーズンも1部で戦うことが許された伊予銀行女子ソフトボール部。今シーズンこそは自力での1部残留をと、チーム一丸となり、全力で戦ってきた。しかし、結果は最下位こそ逃れたものの12チーム中、11位。1部・2部の入れ替え戦でも、2部の準優勝チーム・日立マクセルに連敗を喫し、2部降格という厳しい結果に終わった。前節を終わった時点では9位となんとか踏ん張り、後節のスタートも3連敗を喫したものの、決して悪い内容ではなかった。果たしてその後、チームが波に乗れなかった要因とは何だったのか――。

「チームとしては前節から打線も好調でしたし、ピッチャーも前節での課題を少しずつ克服していましたので、試合の内容は悪くはありませんでした」と、指揮官としてチームを率いて5年になる大國香奈子監督は選手の奮闘ぶりを称えた。しかし、それはあくまでもチーム内でのことだったに過ぎなかったという。相手もレベルは上がっており、伊予銀行がそこに追いつくまでには至らなかったのだ。

 そして不運も重なった。後節がスタートし、伊予銀行はいきなり3連敗を喫した。しかし、4試合目で戸田中央総合病院を下し、前節をあわせると実に6試合ぶりの白星を飾った。これでチームは勢いに乗れるはずだった。ところが、リーグ戦は一時中断となり、9月26日からは千葉国体が始まった。四国・愛媛代表として出場した伊予銀行は初戦、岩手と対戦し、5−1と快勝。表彰台を狙っていた伊予銀行にとっては幸先よいスタートとなった。そんないい流れに、まさに水を差したのが雨だった。結局、晴天に恵まれることはなく、準々決勝以降は中止となってしまったのだ。

「国体で勢いに乗りたかったのですが、雨で3日間、何もできなかったんです。これが痛かった。その後、リーグに戻ってからの調整はうまくいきませんでした」。それでもリーグ再開後の2試合目にはHondaに勝利。さらに負けはしたものの、前節で0−19と完敗に終わった太陽誘電相手に2−3と接戦を演じた。その後も今シーズン優勝したトヨタ自動車に4−5、北京五輪では日本に初めて金メダルをもたらしたエース上野由岐子擁するルネサスエレクトロニクス高崎に11−12と惜敗。これまで太刀打ちできなかった強豪相手にも、堂々の戦い振りを見せた。

 だが、それでも勝つことはできなかった。
「チームとしてはいい試合ができていました。でも、結果的に勝ちにつなげることができませんでした」
 接戦も大敗も負けは負け。勝負ごとの厳しさを改めて思い知らされたシーズンとなった。

 それでも今シーズンから副キャプテンとしてチームを支えてきた中森菜摘選手が、打率3割1分という好成績を残し、初めてベストナインを獲得するという快挙を成し遂げた。指揮官から見ても、チームで最も成長したのは彼女だという。
「中森にはとにかくランナーを返して打点を挙げることを要求してきました。ですから、彼女の打席の時には送りバントのサインは出さずに、打たせてきたんです。そのことで責任感が芽生えたのでしょう。打席での集中力が高まりましたね。もともとコンスタントに打てる選手でしたが、今シーズンはより安定感が増したと思います」

 来シーズンは3年ぶりの2部での戦いが待っている。2部は今シーズンからシステムが様変わりしている。アドバンスセクションとホープセクションとの二手に分かれ、各セクションで総当たり戦が行なわれる。そして上位2位までのチームが順位決定プレイオフに進出するのだ。そこで優勝すれば自動的に1部昇格が決定。2位は1部チームとの入れ替え戦に臨むことになる。

「2部とはいえ、どのチームも打線は強い。決して甘くはないですよ」
 そう言って、指揮官は今からしっかりと手綱を締めた。新しいチームが参入するとの情報もあり、2部では2年間、ブランクのある伊予銀行にとってはデータ収集も容易ではない。しかし、どんなに険しい茨の道であろうとも、それに屈するわけにはいかない。「優勝」そして「1部復帰」。それこそが伊予銀行にとっての唯一無二の使命だからだ。来シーズンは内容以上に結果が求められることになりそうだ。


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