愛媛県体育協会などが主催する「新春えひめスポーツのつどい2011」が3日、松山市内のホテルで開かれた。集まったのはボートの武田大作選手やダイキ弓道部員など、県内のアスリートやスポーツ関係者など約230名。今回は司会をビーチバレーの佐伯美香さんが務め、なぎなたの全日本選手権で史上最多となる7度の優勝経験を誇る池見敬子選手、昨年9月の世界柔道で金メダルを獲得した浅見八瑠奈選手がいずれも和服姿でトークショーに登場し、会は華やかムードに包まれた。出席者はお互いの親睦を深めつつ、新たな年のさらなる飛躍を誓っていた。
(写真:各競技のトップクラスの選手たちが大勢集まった)
 この「新春のつどい」が開催されるのは、今年で6回目。スポーツ関係者が一堂に会し、2017年のえひめ国体に向けて機運を高めようと2006年から毎年1月3日に行われている。会の冒頭で挨拶に立った県体育協会・大亀孝裕会長は天皇杯(男女総合)38位に終わった昨年の千葉国体について、「成績は良くなかったが、変化も感じた」と総括した。その変化とは、「四国ブロック予選で(四国内でもっとも天皇杯順位がよい)香川と競う種目が増えた」「得点を獲得する種目が幅広くなった」「各競技団体、自治体に危機感が出てきた」の3つ。大亀会長は昨年、興南高が甲子園で春夏連覇を達成した沖縄県を引き合いに出し、「人口は愛媛県より3万人ほど少ないが、ボクサーやプロゴルファーを多数輩出している。決して環境の整っているとはいえない沖縄県であり、愛媛はどうすべきか議論をしていただきたい」と、全県をあげた取り組みの重要性を訴えた。
(写真:「兎年 とんで跳ねて スポーツを 愛する人が 大好きだ」との短歌も詠んだ大亀会長)

 続いて昨年11月に就任した中村時広県知事が祝辞を述べ、「人と人とのつながり、結びつきを強めていく点で大きな意味を持っている」とスポーツの意義を強調。スポーツ立県を掲げた前知事の方針を継承し、さらに発展させることを約束した。その第一歩として教育委員会主導で行っているスポーツに関する施策を「できれば知事部局でハンドリングができるような組織改変も視野に入れて考えていきたい」と構想を披露。「愛媛県を強くするためにも大いに力を合わせ、6年後の国体に向かってがんばっていこうではありませんか」と出席者に呼びかけた。

 来賓紹介、祝電披露の後、行われたのが女性アスリート3名によるトークショー。司会の佐伯さん、池見選手、浅見選手がそれぞれ競技を始めたきっかけなどを語り合った。佐伯さん、池見選手は出産後も競技の第一線で活躍するママさんアスリートとしても知られる。小学4年生の長男を持つ池見選手は「子育てとの両立が大変と言われるが、むしろ毎日が充実している。子どもの成長を見ていると、こちらが劣る一方ではいけないと思わせてくれる」と競技へのプラス面を明かした。

 昨年はなぎなたのみならず、「男だったら前からやってみたいと思っていた」とラグビーにも挑戦。初めて数カ月ながら、なぎなたで培ったフィジカルの強さを示し、月1回の代表候補合宿に参加が認められた。7人制ラグビーは男女ともに16年のリオデジャネイロ五輪から正式種目に採用され、注目度が高まっている。愛媛には女子のチームがなく、松山大の男子ラグビー部員に交じって練習する日々だが、「チャンスがある限り、五輪代表入りを目指したい」と38歳は意欲的だ。もちろん本業のなぎなたでも、今年は7月に日本で世界選手権が開催される。こちらも日本代表チームのキャプテンに選ばれており、12年ぶりの世界制覇を狙っている。
(写真:女性アスリート3名が新春らしい和服姿で会に彩りを与えた)

 昨年、世界柔道女子48キロ級を制し、ロンドン五輪の代表権争いへ大きく名乗りをあげた浅見選手はこの年末年始を地元・愛媛で過ごした。長年、同階級の女王として君臨した谷亮子選手が引退し、48キロ級は日本勢が世界ランキングのトップ10にひしめく最激戦区となっている。故郷でのリフレッシュ効果があったのか、15日にアゼルバイジャンで開催されたマスターズ大会ではライバルの山岸絵美選手を破って優勝。幸先よいスタートを切った。五輪で代表権を得るには国際大会で好成績を残し、ランキングで上位に入ることが第一条件になる。浅見選手は「世界選手権(8月、パリ)での連覇」を目標に掲げた。

 また司会を務めた佐伯さんは、昨年より地元の東雲女子大学のバレーボール部コーチに就任。四国大学リーグでの1部昇格を目指す。競技の第一線を退いた後も、講演活動やバレーボールやビーチバレー教室などで精力的に活動しており、3月にはナショナルチームの指導も可能な上級コーチの資格試験に臨む予定だ。「今の若い子たちとは育ってきた環境が違う。フィジカル面やメンタル面でのケアをもっと勉強し、模索しながらやっていきたい」と指導者としてのレベルアップを誓った。

 その後は出席した各アスリートが壇上に上がり、今年の抱負をそれぞれ発表。女子ソフトボールの上野由岐子選手や有名女子プロゴルファー、テニスプレーヤーのサイングッズがオークションやお楽しみ抽選会に出品され、会場が最後まで盛況だった。なお、オークションの売上は国体選手の強化費に充てられる。
(写真:ボート武田選手(左)もウェアを提供した)

 今回の「新春のつどい」を振り返って、県体協は「知事の出席や、3名の女性アスリートが和服で参加し、会が盛り上がった。今後ともより多くの参加者を募り、内容を充実したものにしていきたい」と評価する。さらには選手たちにとっても「多くの方々に活躍を約束し、県民の応援もひしひしと感じたのでたいへん励みになった」と意義は大きかったようだ。

 今年の国体は山口県で開かれる。山口県は人口144万人で、愛媛県(143万人)とほぼ同規模。6年後の国体に向けて学ぶ点は少なくないはずだ。大亀会長も「各競技団体や地域のみなさんにはぜひ観戦していただいて、これからの準備や競技力強化の参考、刺激にしていただきたい」と語っていた。県体協では「底辺の強化、拡大は確実にできている。山口国体では昨年達成できなかった30位前後を必ずや目指したい」と意気込んでいる。兎年だけに愛媛のスポーツ界にとって、ピョンピョンとステップアップできる1年にしたいものだ。
(写真:2011年も愛媛のアスリートたちが故郷を元気にする)

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(石田洋之)
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