11月12日から中国・広州で行われたアジア大会で、ボートの武田大作選手(ダイキ)は、男子軽量級シングルスカルで7分0秒43のタイムで銀メダルを獲得した。バンクーバー五輪やサッカーW杯南アフリカ大会などスポーツイヤーとなった2010年も残すところ約10日。ダイキスポーツにとって今年はどんな1年だったのか。ボート武田選手はもちろん、ダイキ弓道部、そして活動2年目を迎えたダイキジュニアゴルフスクールの2010年を振り返りたい。
(写真:世界選手権のシングルスカルでも5位に入った)
<武田、不本意なシーズンで得た収穫>

 武田にとって、今シーズンは波の多い1年になった。本来であれば、今季はダブルスカルで五輪に向けた「準備、勉強の年」にするはずだった。代表候補合宿で何人かとペアを組んだ中で、田立健太選手(戸田中央総合病院RC)とともに世界を転戦することを決めた。決め手となったのは「向上心の強さ」「ケガをしない体の強さ」。ところが、ワールドカップ第1戦(スロベニア)では田立が故障し、ダブルスカルは棄権を余儀なくされた。続く第2戦(ドイツ)では予選2組で5位。敗者復活戦も2組で4位に終わり、上位に食い込めなかった。田立とのコンビは解消を余儀なくされた。

 さらには古傷である左ひざ痛との戦いもあった。その影響で5月のワールドカップ第1戦では、シングルスカル予選2組で4位に終わり、その後のレースを棄権した。7月のスイスでの第3戦は準々決勝を1位通過したものの、準決勝では限界を超えた体が悲鳴をあげ、ゴールするのが精一杯だった。日本に戻っても、ひざ痛はたびたび襲ってきた。全日本選手権の予選前日にはひざが曲がらず、棄権を考えたほどだ。何とか出場した同選手権では男子シングルスカルで史上最多となる12回目の優勝を収めたものの、決して満足のいくレースはできなかった。

 ようやくひざの状態も回復し、迎えた11月の世界選手権(ニュージーランド)。出場メンバーと武田自身の実力を比較すれば、本人曰く「メダルを狙える」大会だった。決勝のレースも中盤までは想定通りに進んだ。ここから本領を発揮して3位以内へ――。その目論見は後半、一気に崩れた。スピードを上げようと思っても自分の動きと船の動きがかみ合わない。無駄な労力を使った体は最後まで持たず、順位は昨年より1つ下がって5位に終わった。

「自分が自分じゃない感じがしました。技術面、精神面のコントロールができなかった……」
 修正を施す間もなく、1週間後には中国へ渡った。最大のライバルはU-23世界選手権を2連覇したモフセン・シャディナガデ(イラン)。22歳の新鋭だ。
「最後は彼との勝負になる。勝っても負けても僅差」
 そう想定して臨んだ決勝。スタートからシャディナガデはどんどん飛ばした。武田も500メートルまではくらいついたが、やはり世界選手権同様、自分の漕ぎがうまく船の推進力につながらない。以降はジリジリと離され、ゴールでは約5秒差をつけられた。
「頭で考えていたことと体と船の動きが全部バラバラでした。やはり中1週間で2回、心と体のピークを持ってくるのは難しかったですね」

 それでもアジア大会では、もう少しで7分を切るところまでタイムを伸ばせた。不本意なシーズンの中にも収穫はあった。
「ヒザの痛みなどで今シーズンは練習ができなかった。なんとか試合に間に合わせた状態でも、世界では戦えた。その意味では最低限の結果は残せたと思います」
 一方で少しでも内容が悪ければ、国際舞台では勝てないことも実感した。
「内容的には惨敗と言っていいでしょう。不完全燃焼の1年でした。世界とただ戦うだけではなく、さらに上に行くためには何が必要か考えないと」

 5度目の五輪を目指すには、2011年こそは本格的にダブルスカルへ取り組まなくてはいけない。自身もスカウト活動に乗り出し、パートナーを探している。集大成となる舞台へ、もうオールを止める時間はない。

<弓道、来季こそ国体で上位を>

 ダイキ弓道部は6月に開催された全日本勤労者選手権大会(山口県弓道場)で準優勝をおさめると、11月の第58回全日本実業団弓道大会、第30回全日本実業団遠的大会(伊勢神宮弓道場)では近的女子の部と産業別(金融・商事・その他の部)で団体優勝を果たした。だが、今夏、ダイキ弓道部が主体となった愛媛県代表は四国ブロック予選で敗れ、国体出場を逃した。最初の近的で1位に立ちながら、遠的でまさかの最下位。予選2位での国体出場権をかけた高知との競射にも競り負けた。
(写真:11月の大会では個人でも山内絵里加選手が近的3位に入った)

 2011年の目標は当然、国体出場、そして優勝だ。
「安定した射が続いて波がないようにすることが大事。いつも同じように弓を引けることが国体はもちろん、他の大会の好結果にもつながる」
 石田亜希子監督は、こう来季への課題を口にする。11月の大会では、入社1年目の北風磨理選手が遠的で4位に入るなど、若手も力をつけてきた。県代表入りをかけた部内の争いがハイレベルになればなるほど国体での上位もみえてくる。

 また今年はジュニアでも、大きな成果があった。中学生を対象として開設しているダイキジュニアクラブから河野蒼生選手(津田中)が8月のJOCジュニアオリンピックカップ全国中学生大会で女子個人優勝を勝ちとったのだ。ジュニアクラブ創設以来、全国大会での優勝は初の出来事だ。練習時間は基本的に週2回で各1時間程度。ダイキ弓道部が使った後の屋内練習場を借りて活動している。全国には部活動として毎日、弓に取り組んでいる選手もおり、指導している村上敏彦さんも「ビックリ」という結果だった。

「普通は練習では的に当たる子も、試合では緊張でうまくいかない。当てようとして、会(弓を引ききった状態)に持ってくるまでに早く離してしまう。でも河野さんはいい意味での不器用。練習と違った引き方ができない。逆に緊張したほうが自分のポイントまでしっかり引けるくらいなんです」
 村上さんは河野選手のよさをこう分析する。

 現在、クラブで練習しているのは9名。「まずは楽しく弓を引かせて、高校、大学につなげるのが目的」と村上さんは語るが、子どもたちは成績が上がっていくと、競技にのめり込むようになる。このジュニアクラブから2017年のえひめ国体で主力となる人材が現れるかもしれない。

<ジュニアゴルフ、新指導者でレベルアップを>

 2017年のえひめ国体で優勝が狙える若手ゴルファーを育てるべく開校したダイキジュニアゴルフスクールは、2011年が3年目のシーズンとなる。この夏、スクールに強力なアドバイザーが加わった。女子プロゴルファーの平瀬真由美選手だ。平瀬プロといえば1993、94年と2年連続で賞金女王に輝いた実績を持つ。現在は結婚して夫の実家と職場がある愛媛県で生活をしている縁もあり、ダイキ株式会社・大亀孝裕会長の熱心な勧誘を受け、スクール専属アドバイザーとして就任が決まった。
(写真:平瀬アドバイザーには地元メディアの注目度も高い)

「練習のための練習ではダメ。試合のための練習をしなさい」
 そう語る平瀬アドバイザーの指導は量より質、より実戦に即した内容だ。ツアー18勝をあげた実力者だけに、そのアドバイスは的確で月2回のレッスンを子どもたちは待ちわびている。さらにこの12月からは江口武志氏が新監督に就任した。江口監督は上級者には実際のコースでラウンド練習する機会を増やし、レベルアップをはかる方針だ。

 今季は8月の四国小中学生ゴルフ大会(新居浜カントリー倶楽部)でマニックス・ジョイ明美さん(日浦小3年)が小学校低学年の部で優勝。10月の全日本小学生ゴルフトーナメントに出場した。一方で昨年の同大会に参加した竹下桃夏さん(椿小6年)は四国大会で惜しくも出場権を得られず涙を飲んだ。
「竹下さんは小5で全国に行けて、小6では行けなかった。それだけゴルフ人気でジュニアのレベルが高くなっている」(宮崎順GM)
 確かに石川遼の出現以来、国内では10代の有望なゴルファーが続々と現れている。それはジュニア層でも例外ではない。

「まだ国体に出られる選手を輩出するには時間がかかる。来年も全国大会に出場できる選手を1人でも増やすことが目標です」
 課題は男子の底上げだ。他のスポーツに流れる子どもたちが多いため、人材の確保は容易ではない。それでもスクールには専用練習場に毎日通い、コツコツと練習を続ける男の子がいる。努力が実を結ぶ日は、きっとやってくる。

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(石田洋之)
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