2017年9月開幕予定の愛媛国体まで残り5年となった。愛媛県で国体が開催されるのは1953年以来、64年ぶり。ただし、この時は四国4県での共催だったため、単独で開かれるのは初めてとなる。既に県内19市町で馬術、カヌー、クレー射撃を除く競技の実施が内定。この2日には県の準備委員会主催によるイベント「いよ伊予GO! 国体えがおフェスタ」が開催され、愛媛県の中村時広知事、元サッカー日本代表で新居浜工高時代に国体出場経験のある福西崇史さんと、二宮清純によるトークショーなどが行われた。
 イベント内では大会愛称「愛顔(えがお)つなぐえひめ国体」と大会スローガン「君は風 いしづちを駆け 瀬戸に舞え」が発表された。愛称とスローガンはいずれも一般公募されたもので、スローガンは俳人の正岡子規らを輩出した県らしく俳句仕立てになっている。またミカンと犬をミックスさせた「みきゃん」が大会マスコットに決まった。

 えひめ国体で掲げられた理念は5つある。
・県出身の「手づくり選手」が大活躍し、「手づくりスタッフが支える「手づくりの国体」
・県民のスポーツ活動(する、みる、支える)の活性化につながる「実になる国体」
・既存の施設を最大限に活用するなど簡素化に努める「身の丈にあった国体」
・全国からの参加者と県民が民泊などにより交流をふかめる「ふれあいの国体」
・愛媛の自然や文化などの魅力を全国に発信する「愛媛らしさあふれる国体」
 
 そしてこれらを実現するために
・県民総参加で「えひめ」の底力を発揮する
・スポーツで活力あふれる「えひめ」を創る
・知名度アップで「えひめ」の魅力を輝かす
 との3つの基本目標が定められ、これからの5年間でさまざまな活動を展開していく。

 そのひとつが県民運動の実施だ。四国には88カ所の霊場を巡るお遍路の文化がある。各寺を巡礼するお遍路さんは弘法大師(空海)と同じとみなされ、昔から地元の人々が食べ物などを手渡してもてなしてきた。国体に向けた県民運動では、この「お接待」の精神を生かし、それぞれの頭文字をとった5つの大きな方針が定められている。

・「お」応援しようえひめ国体
(選手の応援やイベントやボランティアとしての参加、協賛支援)
・「せ」精一杯のおもてなし
(手づくりの横断幕などによる選手団歓迎、各都道府県の応援団結成、選手たちの民泊協力)
・「つ」伝えよう愛媛の魅力
(地域資源の紹介、特産品を活用した記念品作成、郷土料理やご当地グルメをふるまう、新たなブランド開発)
・「た」楽しくスポーツ、健康づくり
(デモンストレーション競技、体験教室への参加、各競技の観戦)
・「い」一緒にしようわがまちづくり
(環境美化運動、交通安全運動への参加、公共交通機関の利用)

 ただし、五輪が日本中を熱くさせるように、国体機運の盛り上げには、県勢の活躍が欠かせない。この29日から本格的に競技がスタートする「ぎふ清流国体」では愛媛県勢は36競技で489人の選手・監督が参加する。各競技団体が愛媛国体へ育成、強化を進めていたにもかかわらず、前年から選手団の数は50人以上減った。
(写真:7日には約280人が出席し、結団式が行われた)

「特に昨年73点を稼いだ弓道は成年男女、少年男女ともブロック予選で敗退し、全滅してしまいました。剣道でも昨年と比べると成年と少年の女子が出場を逃しましたし、サッカーの成年男子、ソフトボールの成年女子も出られません。得点が見込める団体競技が本戦に進めなかったのは痛いです」
 そう苦しい状況を明かすのは愛媛県体育協会の山本巌常務理事だ。昨年、愛媛県は天皇杯(男女総合)で25位に入り、大きく順位をアップさせた。ここをベースにさらなる上位を狙いたいところだが、県体協の「前年より総得点が60〜80点ほど下回る」との厳しい見方をしている。例年なら、再び30位台に逆戻りする点数だ。

 そんな中、頼みの競技はボート。昨年も参加競技の中で県勢トップの128点をあげたが、今年も成年男子ダブルスカルに5大会連続五輪出場の武田大作(ダイキ)が出場する。16日に行われた全日本選手権男子シングルスカル決勝では五輪までの蓄積疲労もあって腰を痛め、2位に終わったが、国体では「集中して若い選手と一緒に頑張りたい」と意気込む。山本常務理事は「160点を獲って、競技別での全都道府県1位を目指してほしい」と期待を寄せる。お家芸とも言えるなぎなた、全4種別で参加が決まった山岳なども得点が見込めそうだ。

「ブロック予選では近年、打倒・香川を目指してきました。昨年も予選通過率は香川が33%とトップ。愛媛は31%と肉薄していたんです。ところが今回は香川が32%、愛媛は29%。香川との差は縮まらず、逆に高知が17%から23%と通過率を上げて迫られています」(山本常務)
 国体では開催県の特権で全競技でエントリーできるとはいえ、ただ参加するだけでは意味がない。少しでも好成績をあげて得点を稼ぎ、天皇杯1位を目指すなら、ぶっつけ本番では厳しいだろう。少なくとも前年までに1度は国体に出て経験を積み、勝利への戦略を練っておく必要がある。

 山本常務理事は「まず、少なくとも四国内で1番になることを各競技団体は目指してほしい」とハッパをかける。5年後に育成や強化が花開き、それを一過性に終わらさないためにも、より綿密な計画を立てることが求められる。
「何がどこまで進捗しているのか、チェックリストをつくって、ひとつひとつクリアしていかなくてはいけません。選手にしても5年後に主力になる子供たちや有望な若手を学校、企業と連絡を取り合ってどこまで把握しているか。競技団体によって、まだまだ取り組みに差があるのが実情です」
 
 選手を発掘し、育て、トップレベルに引き上げるには5年という期間は決して長くない。「計画を立てても実行が伴わなければ意味がありません。切羽詰まっているとの認識を共有し、一丸となって取りかからなくては……」と山本常務理事は危機感を募らせる。国体の基本目標にもあるように、県民総参加で「えひめ」の底力を発揮する時が、もうそこまで来ている。

---------------------------
★質問、応援メッセージ大募集★
※質問・応援メッセージは、こちら>> art1524@ninomiyasports.com 「『DAIKI倶楽部』質問・応援メッセージ係宛」

---------------------------------
関連リンク>>(財)大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)
◎バックナンバーはこちらから