10月9日まで開催されていた第67回国民体育大会「ぎふ清流国体」で、愛媛県は天皇杯(男女総合)の成績で34位に終わり、昨年の山口国体での25位から順位を落とした。天皇杯優勝を目指す地元での「愛顔つなぐ、えひめ国体」までは、あと5年。各競技団体が育成、強化のあり方を見直さなくてはいけない結果を突きつけられた。
(写真:開会式で入場行進する愛媛県選手団)
「昨年と比べて苦しい戦いになることは予想していましたが……」
 愛媛県体育協会の山本巌常務理事は、今回の成績について、そう切り出した。確かに大会前から30位台という成績は予想できたことであった。昨年、成年男子が遠的で準優勝するなど活躍した弓道は四国ブロック予選で全種別(成年男女、少年男女)が敗退。本番に選手を送り込めなかった。また得点が見込める団体競技でもサッカーの成年男子、ソフトボールの成年女子が出場を逃した。山口国体と比較すると愛媛県勢の“戦力”は大幅にダウンしていた。

「ただ……」と前置きして山本常務理事はこう続ける。
「不出場も含めて得点が0の競技が18から24に増加してしまいました。一昨年が21競技ですから、そこからも後退している。各競技団体の強化策が成果として現れていないという側面も浮き彫りになってしまいました。残念ながら国体に出て、結果を残せる体制がまだ不十分なところが多いと言わざるを得ません」

 各競技が厳しい結果となる中、安定した結果を残したのがボートだ。かじ付き4人スカルは少年男女がそろって優勝。武田大作(ダイキ)も参加した成年男子ダブルスカルは2年連続の2位に入った。昨年を上回る136点を獲得。同競技では全国4位になった。
(写真:愛媛県勢3連覇を果たした少年男子かじ付き4人スカルの選手たち)

 また大会前の予想を上回る好成績を残した競技もある。そのひとつが成年男子ソフトボールだ。日本代表を擁する各県の代表チームを破り、ベスト4に進出。3位入賞を収めた。愛媛県代表の中心となったのが、クラブチームのウエストソフトボールクラブ(SBC)である。

 このウエストSBCはもともと企業チームだった。松山市を拠点に建設コンサンタント業を営む株式会社ウエストコンサルタントが10年以上前から保有していたチームを昨年、クラブ化した。えひめ国体に向け、社員ではない選手を外部から受け入れ、ひとつのチームとして強化をはかるためだった。

 愛媛県の成年男子のソフトボールは四国生コンが長年、中心となって牽引してきた。しかし、3年前に日本リーグから撤退。全国レベルで戦うチームが不在になっていた。ウエストSBCはクラブチームへの移行とともに日本リーグへ参戦。大会の遠征費などはオーナーである株式会社ウエストコンサルタントの西川広一代表が捻出し、より高いレベルで実戦経験を積んでいる。

「勝敗は抜きにして強豪と対戦することで学ぶことが多々あります。それはチームにとって大きなプラスになっていますね」
 チームを率いる重野友彦監督はそう参戦の効果を語る。この成果は早速現れ、山口国体ではウエストSBC主体の愛媛県代表がベスト8入りを果たした。現在、クラブに所属する選手は16名。うち12名は株式会社ウエストコンサルタントやグループ企業で働きながら競技を続けている。

 国体で上位に行くために、まず越えなくてはならない壁――それがブロック予選である。四国のソフトボール界には国体や日本リーグ優勝の実績を誇る高知パシフィックウェーブという強敵がいる。
「まずは高知を倒すこと。それを目標にしていれば必然的に全国で戦える力がつくと考えています」
 重野監督の言葉通り、高知を破って本戦出場した前回はベスト8、今回はベスト4と全国の舞台で勝ち上がっている。

 仕事との兼ね合いもあり、シーズン中の練習は週4日で時間は3時間程度。限られた練習時間で徹底しているのが「守って勝つ」スタイルだ。
「守りで負けるのはやめよう。それがチームの方針です。なんとか最小失点で抑えて接戦をモノにする」
(写真:ウエストSBCの選手たち。今回の国体では10名が県代表入りした)

 国体でも守りを中心とした粘り強い戦いが勝利につながった。準々決勝の相手、岡山は日本代表のピッチャーを先発に立ててきたが、守備が無失策でエースの客野卓也を守り立て、3−3のまま最終回にもつれこむ。そして7回、2死二塁のチャンスから豊田健二が値千金の決勝タイムリー。1点差ゲームを制した。

 準決勝の群馬戦では打線が封じられ、零封負けを喫したものの、守備はこの日もノーエラー。チームカラーである堅守は変わらなかった。さらなる上を狙う上で課題となるのは選手の確保だ。男子のソフトボールは競技人口が決して多いとはいえない。野球経験者など他の競技から選手を引っ張ってくることも大切になる。

「愛媛に、こうやって国体でも結果を出しているチームがあることをもっと示していく必要があるでしょうね。そのためにも勝って注目される存在になりたいと考えています」
 重野監督はそう今後の目標を語る。チームには20代前半の選手も多い。5年後のえひめ国体では彼らが主力となり、若い新戦力と融合すれば頂点に立つことは不可能ではない。

 今回の国体ではバスケットボールの成年女子もクラブチーム主体の県代表チームが3位に入った。ただ、このように成年の団体競技で成果をあげているところは少ない。
「愛媛には団体競技の実業団チームが少ない。だから地域のクラブを主体にして強化していくかたちが主体になるでしょう。でも、全国で勝てるチームをつくるには当然、それなりの練習が必要です。職場や練習環境の問題をどうクリアするか。ここは私たちも企業や自治体に働きかけてサポートしていきたいと考えています」
 県体協の山本常務理事はこう語る。国体後の16日には県の教育委員会、県体協、各競技団体が一同に会し、反省点を踏まえた今後の取り組みを話し合った。

 抽象的な願望ではなく、具体的な目標を。机上の空論ではなく、現実に即した実行可能なプランを――。地元開催までに迎える国体はあと4回。残された機会を有効に使い、5年後に花開くチームづくりが求められている。

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(石田洋之)
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