開校から4年半を迎えたダイキジュニアゴルフスクールにとって、この夏は練習の成果を発揮する大会が目白押しだ。7月15日に愛媛・新居浜カントリー倶楽部で行われた四国小学生ゴルフ大会では小学1〜3年の部で3年の城戸姫菜さんが女子で1位になり(男女総合でも2位)、10月に福島県で開催される全日本小学生ゴルフトーナメントへの出場権を手にした。20日から2日間に渡って実施される国体の愛媛県代表最終選考会には高校2年の野々村颯記さんと中学3年の竹下桃夏さんが残った。
(写真:平日は夕方〜20時まで、土日祝は午前中、専用の施設で練習を重ねる)
「アマチュアの場合、1日で大きくスコアが変動します。2日ありますから、まだどうなるか分かりません」
 江口武志監督はそう見通しを語る。前年の選考会は4位で代表にあと一歩及ばなかった野々村さんは「去年は気持ちが空回りした。今年はスコアの差を意識せず、自分のプレーをすることに集中したい」と話す。

 高校では水泳部に所属しており、体のバランスが整い、腹筋や背筋が鍛えられた点はゴルフにも役立っている。休日には松山市内にあるエリエールゴルフクラブで実戦形式の練習を積み、「アプローチやグリーンまわりが他の選手よりも得意になった」と明かす。

 江口監督も「コースでの経験を重ねることで、どうプレーするか自分で考えられるようになってきた。スコアメイクができるようになった」と成長を認める。4年後のえひめ国体は、慣れ親しんだエリエールゴルフクラブが競技会場だ。地元で全国の頂点に立つべく、まずは国体初参加を目指す。

 その野々村さんより選考会で上位にいるのが竹下さんだ。小学3年からゴルフ好きの祖父と父の影響でゴルフを始めた。早くから取り組んでいた分、テクニックは高いレベルにあったが、より上を目指すには飛距離のアップが課題だった。
「もともとショットは安定していましたし、アプローチはうまかったです。ただ、スポーツである以上、基礎体力がないと伸びない。特に体幹を鍛える必要があると本人にも話をしました」
(写真:練習場内にはパッティングの練習エリアもある)

 江口監督の指摘を受け、竹下さんは今年から毎晩欠かさず、筋力トレーニングに励んでいる。また自宅から練習場までの往復約5キロの道のりを走り、足腰も強化した。その効果はてきめんだった。「それまではスイングに芯がない感じだったのに、振ってもブレないようになった」と本人も変化を実感するようになると、飛距離も急激に伸びた。

「これまでは2日目や、1日の中でも最後あたりのホールで崩れることが多いんです。どうしてもラストでスコアを伸ばしたい、力を出し切りたいという思いが強くなりすぎるのでしょう。ムリしてバーディーを狙って、逆にボギーを叩いてしまう。ひとつのホールにこだわらず、2日間を平常心で回りたい」
 学校でも先輩にあたる野々村さんとともに国体へ。それが竹下さんの望みだ。

  国体予選が終わると、25日には四国ジュニア選手権が愛媛・北条カントリー倶楽部で開催される。女子の野々村さん、竹下さんに加え、男子では中学2年の岡山史弥くん、村田幸大郎くん、児玉和生くん、中学1年の田中隆貴くん、山田竜誠くんが出場する。選手たちの目標は5位以内に入って全国大会の切符をつかむことだ。
(写真:地元紙でも有望株として大きく紹介された岡山くん)

 成長期のジュニアたちにとって、1学年の差は決して小さくない。体格の違いが飛距離の差につながるため、下級生が上位にくいこむには、それをカバーする高い能力が求められる。今回、上級生の壁を打ち破ろうとしているのが岡山くんだ。何より、ほぼ毎日、スクールに通うほどの練習の虫。ショットの精度に加え、中学に進んで、身長は165センチまで伸び、他選手に負けない飛ばす力がついてきた。

「監督のアドバイスでフォロースルーを大きく、トップの位置を高くして、しっかり振りきることを意識して取り組んでいます」
 さらなる高みを見据える岡山くんにとって、目下の課題はパットにあった。4月には大人に交じって地元の大会に出場したものの、パットに苦しみ、散々な結果に終わった。家に帰って落ち込んでしまうほどの大失敗。苦い経験が少年に弱点と正面から向き合うきっかけを与えた。

 これまで慣れ親しんでいたパターを監督の勧めで変更し、打ち方も一からやり直した。不得手にしていた分、やればやるほど技術は高まっていく。わずか3カ月ほどながら、本人も「パットが得意になってきた」と自信をのぞかせるほどに変わった。憧れのゴルファーは同郷の松山英樹選手。“松山の次は岡山”と言われるようなトッププレーヤーになるべく、努力を重ねている。

 小学生で一足早く全国大会進出を決めた城戸さんも練習熱心な選手だ。スクールのみならず、家でも素振りをし、部屋にマットを敷いてパッティング練習をするほど。「きれいにボールが当たって、飛んでいく時が気持ちいい」とすっかり競技のとりこになっている。試合に臨むにあたっても、「いいスコアを出そうと思い過ぎず、まずは自分のできることをする」と考え方は小学3年とは思えない。135センチと同年代では体も一回り大きく、指揮官も「どこまで伸びるか楽しみ」と期待を寄せる。
(写真:四国小学生ゴルフ大会では83のベストスコアを記録した城戸さん) 

 江口監督は選手を指導するにあたり、平均ストロークを重視する。心身ともに発展途上のジュニア選手たちの多くは試合によって好不調の波が大きい。しかし、それでは全国レベルで勝てる選手にはなれない。
「いい時はパープレーに近いスコアも出せるけど、悪い時は90になってしまうのではいけません。どんな状況でも70台後半から80台前半で踏ん張れる。それが本当に強い選手です」

 だからこそ江口監督は本調子でない時の対処法を選手たちに伝授している。ゴルフは自身の体調やメンタルのみならず、雨や風といった外部の環境にも左右される競技だ。その時にどう考え、何をするか。対応策が多ければ多いほど、それが試合に生かされる。今後もこれまで同様、実戦に即した指導で、選手の力を少しずつ伸ばしていく方針だ。

「伸びる選手は、まずはゴルフが大好きです。だから、よく練習します。こちらが週に1、2回はクラブを握らない日を設けないといけないほどなんですよ」
 そう江口監督は目を細めながら子どもたちの練習を見つめる。好きこそ物の上手なれ――。地道な努力が花開くことを信じて、選手たちは日々、クラブを振り続ける。

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(石田洋之)
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