「春風や まりを投げたき 草の原」(正岡子規)
毎年恒例となった「えひめスポーツ俳句大賞」の2013年度表彰式が3月21日、松山市内で開かれた。この賞は同市出身の俳人で野球好きとしても知られた正岡子規の野球殿堂入りを契機に、「スポーツに接して得られる感動やときめき、共感を俳句に詠み込むことにより、スポーツファンの増加と、スポーツと文化が融合した新しい芸術文化の創造」を目指して設けられ、今回で12回目を迎えた。
(写真:入賞者を表彰する愛媛県体協・大亀会長<左>) 前回の2012年度は全国41都道府県から4,333句の応募があったが、今回は1人あたりの投句数を5つまでに制限したため、応募句数自体は3002句と減少した。その一方で史上最多となる全国44都道府県から、1550名がスポーツを題材にした五・七・五を寄せ、「スポーツ俳句という文化が徐々にではあるが、愛媛ブランドとして全国に浸透してきた」(愛媛県体育協会・大亀孝裕会長)と言える結果になった。集まった作品の中から4人の審査員の選考により、各部門で大賞が決定した。
ここで各部門の大賞作品を紹介しよう。
◇俳句部門(一般)大賞
天高し 意地で突っ込む ハイパント(埼玉県・糟谷憲宏さん)
◇俳句部門(ジュニア)大賞
ぎゅっと持つ バトンの色は 秋の色(愛媛県・今井歌乃子さん)
◇ハイブリッド部門大賞
天高く 驚異の粘り バーを越え(写真)(愛媛県・鳴滝久照さん)
一般の部で大賞を受賞した糟谷さんの一句は、ラグビーで高く上がったボールを奪い合おうとするシーンを切り取ったものだ。「俳句としてのかたち、スポーツとしてのリズム感が見事に融合している」と石幸平審査委員長(愛媛県俳句協会会長)は高い評価を与えた。また、ハイブリッド部門の大賞作品は走り高跳びの跳躍の瞬間を写真と17文字で的確にとらえた。審査員の愛媛県美術会・川本征紀評議員は「鍛え抜かれた競技者の宙に舞う姿はこうごうしさを感じる」と写真と俳句がともに優れている点を絶賛した。
大賞作品以外でも松森向陽子審査員(愛媛県俳句協会副会長)は一般の部金賞の
「青嵐 ゴールキーパー 横つ飛び」(愛媛県・馬越初子さん)を「季語の“青嵐”が情景を効果的に盛り上げ、自然と緊迫したゴールキーパーの動きとが一体化した力強い作品」と指摘。田坂清太審査員(愛媛県俳句協会副会長)は岡山県・植田貞子さんの
「秋天に 足を突っ込む 逆上がり」を「“秋天に足を突っ込む”の感性が素晴らしい」と評するなど、甲乙つけがたい優秀な句が多かったようだ。
各部門では大賞に準じる「金賞」「銀賞」「銅賞」も決まり、一般の部では先に紹介した馬越さんの作品の他、
「背番号 なきユニフォーム 西日濃し」(愛媛県・菅生正恵さん)、
「競泳の 魚となるまで 泳ぎきる」(東京都・大野哲太郎さん)、
「少年の 頬うつくしや 草すもう」(茨城県・為我井節さん)が金賞に輝いた。
ジュニアの部で金賞に選ばれたのは、
「汗まみれ けって走って パスまわす」(神奈川県・新井海斗さん)、
「汗握り 投げたボールの ド真ん中」(青森県・川岸蓮さん)、
「雪の中 登り終えると 君がいた」(愛知県・大坪拓矢さん)、
「おれのトス 秋空高く あげてやる」(長崎県・前田涼輔さん)。ハイブリッド部門では
「春の風 ボールふわりと 敵かわす」(愛媛県・藤原利忠さん)、
「汗みずく むしゃぶり付くや 巨木の根」(写真)(愛媛県・渡邉龍太朗さん)が金賞となった。
さらに愛媛県内の各メディアによる「報道関係賞」も設けられ、
「ホールインワン 称え合ふ 紅葉晴」(テレビ愛媛賞/愛媛県・稲井達夫さん)、
「新記録 待つフィールドや 夏の雲」(南海放送賞/岡山県・信安淳子さん)、
「二じゅうとび 十回ちょうせん 秋の朝」(愛媛新聞社賞/愛媛県・河端孝紀さん)、
「秋晴れの 大地をけって 風になる」(愛媛朝日テレビ賞/愛媛県・大西剛生さん)などが表彰を受けた。
2017年に開催される「愛顔つなぐ えひめ国体」では47都道府県から選手団が参加する。県体協ではその前に、スポーツ俳句大賞で全都道府県からの応募を達成したい考えだ。今回、投句がなかったのは広島、群馬、岩手の3県。県体協では広報活動に力を入れ、2014年度はより多くのスポーツ俳句が集まることを望んでいる。
(写真:一般の部大賞を獲得し、表彰を受ける糟谷さん) 県体協の大亀会長は国体開催に向け、「俳句を通じて活躍する選手の感動場面を詠んでいただきたい。そのことが選手の励みにもなりますし、えひめ国体を盛り上げることになる」と語る。俳句もスポーツも老若男女の違いを越えて、共通の話題でつながる点が魅力だ。田坂審査員は「スポーツ俳句にはスポーツをしている人自身が作った俳句と、俳句を作っている人がスポーツをみて作った俳句とがある。スポーツをしている人自身の俳句が増えることを希望する」と講評したように、スポーツ俳句にはさらなる広がりが期待できる。
3年後の国体では、大会と連動してスポーツ俳句を各競技会場で募集するのもひとつの方法だろう。選手が試合に参加しての喜びや悔しさを五・七・五で表現する。応援に訪れた観客が心揺さぶられた一瞬を17文字で描き切る……。そんな場面が県内あちこちで展開されれば、まさに「愛媛ブランド」の国体となるに違いない。
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公益財団法人 大亀スポーツ振興財団(石田洋之)
(このコーナーでは2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」に向けた愛媛県やダイキのスポーツ活動について、毎月1回レポートします)
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