年が明け、2月にはソチ五輪がやってくる。愛媛県勢ではスノーボード男子ハーフパイプで青野令が2大会連続の出場を決め、活躍が期待される。愛媛県で単独開催される2017年の「愛顔つなぐ えひめ国体」まで残り3年。地元開催での国体を成功させる上で、愛媛県勢の活躍は欠かせない。目標とする天皇杯獲得(男女総合優勝)へ大きなカギを握るのは成年競技だ。特に団体競技での上位進出は高得点につながる。
 愛媛県では国体競技力向上対策室が主体となり、国体などで好成績が期待できるチームを対象に、金銭面、環境面でのサポートを行っている。2013年度は9チーム(伊予銀行の男子テニス部、女子ソフトボール部、愛媛銀行の女子卓球部、ダイキの女子弓道部、男子ソフトボール・ウエストSBC、サッカー・愛媛FCレディース、女子バレーボール・CLUB EHIME、女子バスケットボール・今治オレンジブロッサム、男子ハンドボール・EHC)が強化指定に認定された。

 そのうち、昨年の東京国体「スポーツ祭東京2013」では、伊予銀行によるソフトボール成年女子チームが準優勝。愛媛FCレディースが出場したサッカー女子は3位に入った。伊予銀行を主体としたテニス成年男子も3位入賞を収めた。

 愛媛FCレディースは女子のトップリーグである「なでしこリーグ」のひとつ下のカテゴリーにあたる「チャレンジリーグ」に属している。国体ではチャレンジリーグの上位クラブや、年代別代表にも選出されている高校生が出場するため、上位入賞は決して容易ではない。

 そこで愛媛FCレディースの江後賢一監督は、国体仕様に戦術を変更した。
「厳しい試合になることは予想ができていました。いつもは、どんどんボールをつないで攻撃的なスタイルを目指していますが、まずはしっかり守備から入り、カウンター狙いでチャンスをモノにする戦い方に変えました」
 国体はリーグ戦とは異なり、トーナメント方式の一発勝負。勝ちに徹してスタイルを改めたことが吉と出た。

 1回戦ではチャレンジリーグ上位のスフィーダ世田谷FCを中心とした東京都を無失点に封じて撃破。地元の強豪を初戦で下して勢いに乗ったことが3位入賞につながった。愛媛FCレディースは昨季、チャレンジリーグで10勝10敗2分で16チーム中8位。皇后杯では3回戦まで勝ち進み、MF澤穂希選手、FW川澄奈穂美選手ら代表選手を擁するINAC神戸レオネッサとの真剣勝負が実現(結果は0−10の敗戦)するなど、着実に力をつけている。

 目標とするなでしこリーグ昇格、3年後の国体優勝へ重要なのは、優秀な選手を集めることだ。現在、チーム内のメンバーは宇和島市にある環太平洋大学短期大学部の在校生、卒業生が半数以上を占めるが、これに加えて大卒の人材や、他クラブからの移籍組を加えて強化する必要がある。そこでハードルとなるのが選手たちの就職先探しだ。

「練習や試合を考えると、少なくとも土日祝日は休みで、17時までには業務を終えられるところが条件になります。県や愛媛県体協、愛媛FCのスポンサー企業にも協力をいただいているのですが、そういった働き口を前もって確保するのは、なかなか難しい部分もある。就職環境が良くなれば、もっと選手を集められるのですが……」と江後監督は語る。

 練習場の確保も大きな課題だ。練習時間は土日を除けば、平日夜に限られるため、ナイター設備のあるグラウンドは学校の部活動や、他の競技団体の利用で埋まってしまう。現状は松山市内の高校や中央公園のグラウンドなどを転々としながら、トレーニングをしている。いずれも土のグラウンドのため、雨が降ると使えない。

「現場の我々としては、大変でも、まず結果を出すこと。それが環境を変えることにつながると思っています。選手たちにも“国体でいい成績を収めることが大事なんだ”と話をしているんです」
 江後監督は既にえひめ国体の監督候補に決定している。今季はなでしこリーグ昇格とともに、「長崎がんばらんば国体」で昨年以上の成績を狙い、3年後の地元開催へチーム力をアップさせていく。


 女子バレーボールのクラブチームである「CLUB EHIME」は早くから国体に向けてチームづくりを進めてきた。当初は社会人の同行会レベルだったチームを、5年前より強化に着手。元NECのセッターで地元出身の矢野美紀監督の下、2年連続で四国ブロック予選を勝ち抜き、国体出場を果たした。

 愛媛県バレーボール協会では4年前より国体を見据えた選手集めにも取り組んできた。今年度までに4年間で7名の選手を新たに確保。来年度も1名の選手が加入予定で、この先も毎年2名程度の人材を増やしていく方針だ。県協会の中村進会長は「就職先の企業探しはもちろん、こちらの熱意を伝えることが一番大切だと思っています。だから何度も話に行って、愛媛に来てもらえるようにお願いしています」と話す。

 県協会では競技力向上のため、定期的に元全日本監督の葛和伸元氏や、柳本晶一氏らを招いてクリニックを開催している。トップクラスの指導者から技術指導を受けるだけでなく、そこで得た情報や培われた人脈も駆使し、選手獲得に役立てている。

 チームを強くする上では、実戦経験を多く積むことも不可欠である。遠征費などの活動資金を支援する目的で、「CLUB EHIME」には後援会組織が立ち上がっている。一昨年に発足し、現在では企業・団体で約40、個人で約150名と会員が増え、チームをバックアップする。

「後援会をつくることで資金面はもちろん、皆さんに応援していただくきっかけづくりにもなっています」と中村会長は語る。愛媛県体育協会では国体に向けた地元のサポート体制や機運盛り上げのため、各競技での後援会づくりを推進している。「CLUB EHIME」の取り組みは、そのモデルケースと言ってよい。

 国体のバレーボールはトップリーグであるVリーグのチームも参戦するため、トーナメントを勝ち進むのは簡単な話ではない。昨年、一昨年とも愛媛県勢は初戦敗退だった。
「1回戦突破。これが当面の目標です。1回戦で勝てば準々決勝で負けても5、7位決定戦に臨めます。Vリーグのチームには勝てなくても、大学のチームには勝てるくらいにはなりたいですね」

 中村会長には大きな夢がある。えひめ国体を足がかりに「CLUB EHIME」を将来的なVリーグ入りを視野に入れたチームへと発展させることだ。
「愛媛県出身者でもVリーグで活躍している選手がいます。現状は選手が県外にどんどん流出していますが、愛媛に根付いた強いチームがあれば、彼女たちの受け皿にもなるでしょう」

 えひめ国体への取り組みを一過性に終わらせるのではなく、その先を見据える。これはバレーボールに限らず、どの競技でも共通のテーマだろう。スポーツを媒介に愛媛に若者が増え、地域が活性化する。成年の育成・強化は国体成功だけにとどまらない波及効果を生む点でも重要である。
  
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(石田洋之)
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