二宮: 本田さんは焼酎好きとのことですが、きっかけは?
本田: 実は僕がお酒を覚えたのは海外だったんです。練習の拠点にしていたカナダは寒い。それに向こうはクリスマスやイベントがあるたびにホームパーティを開いて皆が集まるんです。それからお酒を楽しめるようになりました。

二宮: カナダで焼酎!? 現地でも手に入るんですね。
本田: はい。日本の食品を取り扱っているスーパーがあって、焼酎も購入できました。最初の1杯はビールでも、2杯目からは焼酎。アマチュア時代は飲むのは週に1回程度でしたが、今は地方へ仕事に行ったり、お付き合いもあるので週2、3回くらいに増えていますね。

 「よく遊び、よく働け」

二宮: アマチュア時代に飲んでいたのは、やはりオフの前日?
本田: そうですね。月曜から金曜までが練習だったので、金曜夜にコーチの家に招かれて飲み会をしていました。指導を受けていた選手が集まってバーベキューをしたり、ビリヤードで遊びましたよ。もう毎度のことなので、僕たちはコーチのワインセラーを勝手に開けて飲んでいたほどです(笑)。

二宮: オンとオフのメリハリをはっきりさせるのが海外のやり方ですね。
本田: 僕が指導を受けたコーチは「Play hard. Work hard」と言っていました。つまり、「よく遊び、よく働け」と。金曜の夜や土曜日は遊んで、日曜日は休養や自主トレーニングに充てる。そして、月曜の朝には100%の状態で練習に臨む。もちろん、遊ぶといっても徹夜で飲んだりはしません。12時まで、とか時間を決めていて、その後はきちんと自分の部屋に戻っていました。そのあたりの切り替えは全員、徹底していましたね。

二宮: それでも、お酒が入って話が盛り上がると、自然とフィギュアスケートの話題になったりするのでは?
本田: スケートのことは一切、話が出ないですね。オフの時は一緒に湖で泳いだり、ゴルフをしたり、山登りをしますが、話題になるのはプライベートやたわいものないこと。そのくらい海外はオンとオフがはっきりしています。

二宮: 大会後に他国の選手と飲み会をしたことは?
本田: ありますよ。試合の時、ホテルが一緒なので誰かの部屋にお酒を持ち寄って集まったり、食事に出たら他の選手もいて、いつの間にかに一緒に飲んでいたり……。最近の選手はあまり飲まないようですが、僕たちの時代はお酒好きな選手が多かったです。

二宮: 今回はそば焼酎「雲海」のSoba&Sodaを楽しんでいただいていますが、寒い時期にはお湯割りもいいですね。
本田: 焼酎はいろいろな飲み方で楽しめるのが好きです。そば焼酎はクセがないので、お湯割りにしてもおいしいでしょうね。Soba&Sodaは初めての飲み方で新鮮でした。また機会があれば試してみたいと思います。

 実戦練習で調整法をつかむ

二宮: 羽生結弦選手を指導しているブライアン・オーサーコーチは前回のバンクーバー五輪もキム・ヨナ(韓国)を金メダルに導いています。彼が指導者として優秀な理由は?
本田: 選手としても五輪でメダルを獲った実績がありますし、すごく知識が豊富で、教える引き出しが多い。分析能力も高いです。僕は彼のコーチであるダグ・リーのレッスンも受けましたが、とても細かいところまでアドバイスをしてくれる。だから僕もカナダに行って指導してもらっていたんです。オーサーも彼の影響を受けている部分が大きいと感じます。

二宮: 本番に向けたピーキングも巧みだと?
本田: 大会が近づくと、週に1回抜き打ちで実戦を想定した練習があります。リンクに行くと抽選箱が置いてあって、くじ引きで滑走順を決めるんです。その順番に応じて、逆算してアップして準備を進めていきます。しかも本番より大変なのは、選手がそれぞれショート、フリーの演技を選択して、どちらかを滑るので、それも確認しながら自分の出番に備えなくてはいけない。こういった練習を何度か繰り返すことで、本番に向けた調整法がつかめてくるんです。

二宮: 具体的には、どのようなルーティンで本番に臨んでいたのですか。
本田: 滑走前の6分間練習ではリンクを1、2周して氷の状態を確かめたら、最初に必ずトリプルジャンプを跳んでいました。もしジャンプの調子が悪くても残り時間で修正できるからです。ジャンプがすぐにできるよう、リンクに上がる前にはアップを入念にして体を温めておきますし、もし氷の上で体がキレていないと感じたら練習のピッチを上げます。こういった調整ができるようになったのも、カナダで実戦のシミュレーションができていたから。試合前に何を、どのくらいの量で、どのタイミングで食べればよいかも計算して食事をしていましたよ。

二宮: 氷の状態はリンクや出番によって硬かったり、軟らかったりするはずです。その特徴をつかんで滑ることも大切になりますね。
本田: リンクで演技がスタートするまで1分の時間が与えられますから、その間に氷の状態を把握します。トップスケーターであれば氷に乗った瞬間に分かりますから、それに応じて微妙なタッチを変えていく。今回のソチ五輪は会場内も暖房がきいていて暖かく、客席ではダウンジャケットがいらないくらいでした。おそらく滑っていたスケーターには暑く感じたかもしれないですね。

二宮: 室温が高くて氷が溶け気味になると、滑りが悪くなると聞きます。硬い氷のほうがスケーターにとっては良いのでは?
本田: 調節は難しいのですが、フィギュアの場合は適度に締まっていて、適度に軟らかい氷がベストですね。寒くてあまりにも氷が硬いとジャンプの着地や転倒時の衝撃が大きく、足腰に負担がかかります。当然、体を動かす上でも温かいほうがいいんです。寒いと筋肉の反応が鈍くなってケガをしやすくなります。海外では会場内は温かいケースがほとんどです。日本の会場は全体的に寒いですね。

 海外と異なる日本のリンク

二宮: 日本が世界のトレンドと異なるのはなぜ?
本田: 単純にコスト面がネックになるのでしょう。暖房をつけると電気代もかかりますし、製氷の手間もかかる。カナダでは2階から温風を出して天井のファンで循環させる設備もあるので館内は暖かかったです。練習中は半袖Tシャツでも汗をかくくらいでした。でも、フィギュアの練習時間が終わって、アイスホッケーの選手たちが入ってくると暖房のスイッチを切っていました。

二宮: 競技によって室温を調整するわけですね。
本田: ホッケーの選手は防具を着ていますし、氷が硬くないとパックの滑りが悪くなる。そういうところまで施設側が考えているのは、さすが本場だなと感心しました。

二宮: コストはかかっても、競技に関してベストな環境を整えることが文化として根付いているわけですね。
本田: そうですね。カナダではトロントの北にあるバリーを拠点にしていましたが、市が施設を管理していましたね。建物の中には2面リンクがあって、朝の9時から5時まではフィギュア専用で貸してくれて、その後はアイスホッケーなどが使っていました。2面あるから、シングルの選手と、アイスダンスの選手でリンクも使い分けることもできました。しかも、少し離れた場所には観客席もあるリンクがあって、そちらでも滑れました。

二宮: 海外ではリンクの使用料も安いと聞きます。
本田: 1時間800円くらいで使えるリンクもあります。日本では1時間単位で数万円かかって、それを使う人数で割っています。大人数で使えば負担は軽くなりますが、その分、リンクを十分に使った練習ができなくなります。

二宮: フィギュアも日本でこれだけの人気競技になったのですから、もう少し環境改善に目が向けられるといいのですが……。
本田: 競技を志す子どもたちも増えていますからね。ただ、前向きにとらえれば、制限がある中で練習していることが日本の強さにつながっているとも言えます。限られたスペース、時間で練習をするので、集中して効率よくやろうと工夫したり、他の時間もつかってトレーニングを積むんです。それはプラスになっているのではないでしょうか。海外の選手は逆にいつでもリンクが使えるから、1時間で3本滑って終わったり、トレーニングにかける時間が短いですね。

 羽生、絶対王者として連覇へ

二宮: 五輪が終わり、男女とも今季限りで競技生活を引退する意向の選手も少なくありません。4年後の平昌五輪に向けて、かなり世代交代が進むのではないでしょうか。
本田: 女子は金メダルを獲得したアデリナ・ソトニコワ(ロシア)、4位のグレイシー・ゴールド(米国)、5位のユリア・リプニツカヤ(ロシア)など10代の選手が中心になっていくでしょう。ジュニアの大会を見ていると、ロシアのレベルが非常に高い。昨年末に福岡で行われたジュニアのGPファイナルではロシア勢が表彰台を独占しました。年齢制限で五輪出場資格はなかったものの、14歳ながらシニアのGPファイナルで4位に入ったエレーナ・ラジオノアもいます。今回のソチ五輪に向けて国を挙げて選手を強化してきた成果で、文字通りのフィギュア王国になっていますね。

二宮: 韓国もホスト国ですから、第一線を退くキム・ヨナに続く選手を育ててくるでしょうね。
本田: 韓国もナショナルチームでジュニアの育成には力を入れています。4年後には、また新しい選手が出てくるはずです。日本にとってはライバルが多くなり、厳しい戦いになるでしょうが、負けないようにジュニアの選手を伸ばしていかないといけません。

二宮: フィギュアの場合、ピーク期間は決して長くありません。4年に1度の五輪では年齢的な巡り合わせも、その選手の運命を左右してしまうから余計に過酷ですね。
本田: 繊細な競技だけに背が少し伸びただけで体のバランスが変わってジャンプの軸がブレてしまう。背が5センチ伸びただけで、ジャンプが全く跳べなくなった選手もいるほどです。男子の場合は筋力でブレを抑えることもできますが、特に女子は難しいと感じます。しかも年齢を重ねると、ヒザのバネが失われるので、なかなか高く跳べなくなる。今回、エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)は31歳で五輪に出場しましたが、やはり全盛期に比べるとジャンプの高さはなくなっていました。その分、軸をしっかりさせて回転数を上げるテクニックで跳んでいたのは、さすがの一語でしたね。

二宮: 男子は羽生結弦選手の時代が名実ともにやってくるのでしょうか。
本田: ショートであれだけの点数を叩きだせる選手はいませんし、絶対的な存在に近づきつつあるでしょう。練習から手を抜きませんし、今回、プレッシャーをはねのけて金メダルを獲得したように精神的にも強い。フィギュアスケーターのピークは動きのシャープさを考えると一般的に20代前半。羽生選手は4年後も23歳ですから、当然、五輪連覇の可能性は出てくると思います。この先、彼が金メダリストとして、どこまで伸びるか楽しみです。

(おわり)

<本田武史(ほんだ・たけし)プロフィール>
 1981年3月23日、福島県生まれ。9歳からフィギュアスケートを始め、1996年全日本選手権では史上最年少の14歳で優勝。以降、6度の優勝を収める。東北高2年時に出場した98年長野五輪では15位。同年の世界選手権では日本人で初めて競技会で4回転ジャンプを成功させる。その後、カナダに留学し、99年四大陸選手権で初代王者に。2002年ソルトレイクシティ五輪で日本人男子最高位(当時)の4位入賞を果たした。02、03年の世界選手権で銅メダルを獲得。03年の四大陸選手権では2種類の4回転を3回決める演技をみせ、2度目の優勝を飾る。06年、プロに転向し、現在はアイスショーに出演する傍ら、解説者、指導者としても活躍している。
>>オフィシャルサイト

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<対談協力>
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営業時間:
朝食   6:30〜10:00 ※土・休日は7:00〜10:00
昼食  11:30〜15:00
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◎クイズ◎
 今回、本田武史さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)
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