ボクシングのWBA世界スーパーフライ級王座決定戦が26日、東京・後楽園ホールで行われ、同級2位の河野公平(ワタナベ)が、暫定王者で同級1位のデンカオセーン・カオウィチット(タイ)を8R50秒KO勝ちで下し、王座返り咲きを果たした。河野は4Rにダウンを奪うと、8R、右ストレートで相手をリングに沈め、8カ月ぶりにベルトを取り戻した。
(写真:勝利の瞬間、喜びを爆発させる河野)
 元世界王者同士の激突は8R、一瞬の攻防で決着がついた。
 河野はデンカオセーンをコーナー際に追い込むと、得意のコンビネーションを繰り出す。ノーモーションのワンツー。左をのぞかせながら、素早く右を伸ばす。反応しきれなかった相手のアゴをきれいに打ち抜いた。

 しゃがみ込むように崩れ落ちるデンカオセーン。感触は十分だった。レフェリーのカウントを聞きながら、両手を上げてガッツポーズ。試合が終わるやいなや、高橋智明トレーナーのところへ一目散に駆け寄って抱きついた。
「たまらないですね」
 取り戻したベルトを腰に巻き、満面の笑みを浮かべた。

 相手は元WBA世界フライ級王者で、プロ66戦のキャリアを誇る。過去には坂田健史、亀田大毅、名城信男らを破ってきた日本人キラーだ。しかし、河野も当時のWBAスーパーフライ級王者テーパリット・ゴーキャットジムから王座を奪ったのをはじめ、タイ人には5戦5勝。立ち上がりから左右のパンチを振り回してくる強打の相手に対し、左ジャブを突きながら、うまく回り込み、主導権を握らせない。

 河野陣営の戦前のファイトプランは後半勝負だった。足を使って、37歳のデンカオセーンの疲れを待ち、チャンスにたたみかける。ただ、予想外の展開で好機は早く巡ってきた。4R、デンカオセーンが前に出てきたところへタイミングよく右を合わせる。これがヒットし、相手は前のめりにダウン。会場のボルテージは一気に高まった。

 KOを期待するファンの熱気に、河野は一瞬、気持ちがはやった。だが、高橋トレーナーは「待て」とストップをかける。
「仕留められればいきたかったが、生き返ったら危ない」
 あくまでも勝負は8Rから。5R以降も河野は距離をとりながら、相手の出方をみてアウトボクシングを展開した。

 結果的には、当初の戦略を貫いたことが勝利を呼び込んだ。「動きながら要所で当てる戦い方が良かった」と同じワタナベジムのWBAスーパーフェザー級王者・内山高志が評したように、ステップを踏んでワンツーを打ち込み、むやみに打ち合わない。ダウンを奪われているデンカオセーンは距離を詰めざるを得ず、次第にガードが下がっていく。それが8RでのKOパンチにつながった。

 昨年5月、暫定王者リボリオ・ソリス(ベネズエラ)との王座統一戦に敗れ、僅差の判定負けでベルトを失った。
「悔しくて悔しくてたまらなかった」
 敗戦から1週間は試合を思い出しては涙を流す日々。しかし、励ましてくれる仲間や、再起へ動いてくれたジムの渡辺均会長の姿に「泣いている暇はない」と心を奮い立たせ、トレーニングに励んだ。

 そして、1年足らずでやってきた再挑戦の舞台。コンディションは最高に仕上がり、 河野は「前よりパンチがしっかり打てる。強くなったと思う」と自信を深めていた。「勝つことが恩返しになる」と決意して臨んだ一戦、内容も伴った勝利を収めた33歳は、まさにチャンピオンにふさわしかった。