シーズン終盤に差し掛かり、パ・リーグのペナントレースが面白くなってきました。8月24日現在、首位の福岡ソフトバンクが2位の北海道日本ハムに勝率でわずか1厘上回っているものの、-0.5ゲーム差という珍しい現象が起きています。開幕当初は誰もがソフトバンクの優勝は堅いと思っていただけに、驚きを隠せません。

 

 3連覇を狙うソフトバンクと追いかける日本ハム。直接対決は残り2試合なので、他の4チームとの対戦成績が優勝争いを大きく左右します。両チームの残り試合数は、ソフトバンクが30試合、日本ハムが29試合。では、チームごとの残り試合数をみてみましょう。

 

 ソフトバンクは、ロッテ6試合、楽天7試合、西武8試合、オリックス7試合、日本ハム2試合。

 日本ハムは、ロッテ6試合、楽天9試合、西武5試合、オリックス7試合、ソフトバンク2試合。

 

 3位以下でいま最も勢いがあるのは西武です。20日から4試合連続で2ケタ安打を放つなど、­8月は今季最高の勝率.579を記録しています。その西武相手に日本ハムは残り5試合ですが、ソフトバンクは残り8試合もあります。ソフトバンクは16、18日の西武戦で連敗を食らっているので、西武戦が最も多く残っている状況は正直キツイです。

 

 今季のソフトバンクの対戦成績をみると、日本ハム(勝率.409)を苦手としているのは明白ですが、8月に入り、下位へのとりこぼしも目立ちます。最下位オリックスには3連敗を喫しました。一方、日本ハムは得意な楽天戦(勝率.750)が9試合も残っています。残り試合数で比べると、日本ハムの方が有利な条件が揃っています。

 

 直接対決が少ない分、両チームが3位以下のチームにどういう戦い方をするかが見ものです。これは、両チームに言えることですが、優勝するためには残り試合で最低でも10勝、2ケタが必要です。そこに届かなければ、優勝はキツイでしょうね。

 

 ソフトバンク失速の原因

 ソフトバンクはシーズン序盤はぶっちぎりで首位をキープしていましたが、ここにきてチーム全体に疲れが見えてきました。前半戦はこれでもかと言わんばかりにダメ押し点をあげていましたが、夏場に入ってからはそれがなくなってきています。むしろ、後半戦はここぞという場面で打線が繋がっていません。

 

 その原因は、豊富な選手層のわりには個々の力が発揮できていないことが挙げられます。4番・内川聖一が腰痛でスタメンを外れたり、松田宣浩が思うように調子を上げられず(打率.256)機能していなかったり、昨季トリプルスリーを達成したギータ(柳田悠岐)のムラも目立ちます。

 

 また、オーダーも流動的です。交流戦で活躍した城所龍磨が2軍に落ちたり、長谷川勇也をスタメンで起用するかと思えば、突然外したり、打線を固定できているように見えて意外とフラフラ、定まっていません。こういう部分もチームにとってはマイナスに働いていると思います。

 

 有原と高梨が逆転優勝のカギ

 一方、追いかける日本ハムは、投打が噛み合っています。チームの躍進を支えているのは、10勝の有原航平をはじめ、高梨裕稔ら先発ピッチャー陣です。二刀流の大谷翔平が、後半戦から野手に専念しているため、先発で1試合も投げていないのにも関わらず勝ち続けています。いまの日本ハムの投手力はソフトバンクと同じくらいの強さがありますよ。

 

 このまま日本ハムが好調をキープして逆転優勝するためには、有原と高梨がカギを握っています。チームを支えているこの2人が、最後の最後に失速しなければいいのですが、有原にしても高梨にしても1年間戦った経験がないので、好調を維持できるかが少々心配です。

 

 打線は、3番に大谷が入ったことで、さらに厚くなりました。前半戦は“あと1点”をとれずに負けるゲームがありましたが、いまはその“あと1点”がとれるようになりました。ここがソフトバンクとの大きな違いではないかと思います。

 

 大谷は打者に専念してから打ちまくっていますね。8月は、打率.321、6本塁打、15打点を記録。二刀流の時は、どうしても登板日を最優先に考えるため、打者として試合に出場しても打席数が制限されていた部分がありました。相手にとって、打者・大谷と投手・大谷のどちらが怖いかといえば、当然、前者でしょう。これだけ打つバッターはそうそうそういないので、相手にとっては怖いバッターですよ。

 

 気になるのは、投手・大谷が解禁される日です。チームは、残り29試合を約1カ月間かけて戦います。恐らく、首脳陣はここぞという正念場まで、投手・大谷を温存すると思います。現状の投手力に大谷が加わったら、相手にしてみれば脅威以外の何物でもないでしょう。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商−近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日−エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)−ロサンジェルス・ドジャース−メキシコシティ(メキシカンリーグ)−エルマイラ・パイオニアーズ−オリックス・ブルーウェーブと、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


◎バックナンバーはこちらから