28日に開かれた緊急理事会で横綱・朝青龍のモンゴル帰国が決定した。これにより約1カ月間にわたって繰り広げられた朝青龍騒動は新たな局面に入ることになる。


 このところ朝青龍の“心の病”ばかりがクローズアップされているが、そもそもの事の発端は横綱が腰椎疲労骨折などで「全治6週間」の診断を受け、夏巡業の休場を公表しながら、モンゴルで“草サッカー”に興じていたことにある。問われているのは“職場放棄”の罪だ。

 ところが、いつの間にか「全治6週間」はどこかに追いやられ、“心の病”ばかりが取りざたされるようになった。根本的な疑問だが、診断書には「第5腰椎(椎弓)疲労骨折」「左肘内側側副靭帯損傷」「左尺骨神経障害」などと病名が記されてあった。こちらの治療はどうなっているのか。

 力士は体が資本である。「解離性障害」の治療も大切であることに違いはないのだが、同時に傷ついた体も治すべきだろう。それをやらないから「“心の病”も仮病ではないのか」と痛くもない腹を探られるのだ。

 朝青龍は自宅マンションと都内のホテルにほぼ1カ月間、こもりっきりである。私が知るところ“心の病”の診察は何度か受けたようだが、整形外科のドクターには1度も体を診てもらっていない。仮に本人から依頼がなくても、横綱といえば相撲界における最大の財産だ。財産を守る上でも、協会は整形外科のドクターに往診を依頼すべきだった。

 最近は指導を放棄したようにも映る高砂親方の態度もがっかりだ。「全責任をもつ」と記者会見で語ったが、これまでの行動を見ていると額面どおりには受け取りにくい。本当に弟子のことを思うのなら、たとえ自らが悪役になり泥をかぶってでも心身のメンテナンスにだけは責任を持つべきだろう。手遅れになってからでは遅いのだから。

 診断書の付記の欄にはこんなことも記されている。<左肘関節痛、左前腕から手にかけてのしびれ、脱力感、ならびに腰臀部痛、下肢のしびれ感を訴えます>
 知り合いの整形外科医に訊くと<約6週間程度の休養、加療を要します>との診断は「重傷」にあたるそうである。サッカーは論外、飛行機に乗るのも注意が必要という話だが……。

<この原稿は07年8月29日付『スポーツニッポン』に掲載されています>

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