日本時間20日、スイス・ミースでパリオリンピックのバスケットボール競技(5人制のみ)の組み合わせ抽選会が行われた。日本はFIBAランキング26位の男子が昨年のW杯優勝のドイツ(同3位)、開催国のフランス(同9位)、ラトビア開催のオリンピック最終予選通過国と同組に。FIBAランキング9位の女子はオリンピック8連覇を狙うアメリカ(同1位)に加え、ベルギー(同6位) 、ドイツ(19位)とグループフェーズ(予選ラウンド)を戦うことなった。

 

「寝ちゃった」「起きていた」
 抽選会を対照的に迎えた男女日本代表の指揮官だが、本大会で“世界を驚かせる”という想いは共通している。3年前は女子代表のHC、ACとして東京オリンピックを共に戦った2人。トム・ホーバスHCは男子のHC、恩塚亨ACは女子のHCという立場に変わった。
 
「寝ちゃった」というホーバスHCは「コントロールできないじゃないですか。観ても」とリアルタイムで結果を追わなかったが、それでも5時半に起き、組み合わせを知ったという。対戦相手がドイツ、フランス、ラトビア開催の最終予選勝者と決まったことについて「(この順番は)いいと思いますよ」と受け止めている。
ドイツは去年W杯で優勝しているけど、普通か弱いかわかんないじゃないですか。初戦で戦うのは悪くないかなと思う。去年のW杯、ドイツは少しずつ強くなっていった。優勝チームがその後はどうなるのか分からない。最初に戦うのは全然悪くない。フランスとの2戦目もいいと思う。1戦目はたぶん雰囲気がすごいと思うし。もしフランスが1戦目で負けたら、大変かもしれないです。ただフランス(戦の順番)は悪くない。いいと思います」
 
 既に対戦国が分かっている2カ国については「去年も試合をした。スカウンティングやロスターはだいたいわかっている」と言い、ラトビア開催の最終予選は日本で合宿中ということもあり、現地視察はしないという。
「ビデオもあるからね。ラトビアのグループは3試合目。オリンピックの間にスカウンティングし、アジャストできる。オリンピック中にアジャストできなければ勝てない」
 
 予選突破をチームの目標にする。昨年のW杯で「まだ世界を驚かせてない」とコメントしたことについて、報道陣に聞かれると、こう答えた。
「日本が目標に達するなら、多分どこかにショックを与えることになると思う。日本はベスト8に入ったことがない。1勝なのか2勝なのかわからないんですけど、やっぱりどこかでショックを与えたい。このチームはできると思います」

 この日の囲み取材の予定開始時刻は10時半。抽選会をリアルタイムで視聴したという恩塚HCは一睡もせず、対応した。
「高ぶりましたね。眠れなくなっちゃいました。その後は寝てないです。朝7時からコーチミーティングをし、『またどうしようか』と話していました」
 
 アメリカ、ベルギー、ドイツとの対戦となった抽選結果について、率直な思いを述べた。
「まず感じたのは“来たな”という感じで楽しみというのを一番多く感じました。東京オリンピックで戦って得た課題を回収すべく、この3年間強化してきた。成長した自分たちでしっかり戦いたい。ベルギーもドイツも強豪国。ベルギーはヨーロッパチャンピオン、ドイツも年々ステップアップしていますし、WNBAのスター選手も加わり、戦力アップするので手強いと思います」
 
 初戦のアメリカは東京オリンピック決勝で敗れた相手だ。恩塚HCは「すごく感慨深いと思っています。だからこそ、この3年間の成長を、学びをぶつけられる機会にしたいなと思っています。当然勝ちにいきます」と力強く語った。
「勝つ形がOQT(オリンピック最終予選)でだいぶはっきりしてきたと思う。一方、OQTでまだ正確さに欠けるところがあった。そこはひとつ成長のポイントにしたいなと思っています。これから3チームのゲームを分析しながら、勝てるポイントをちゃんと見つけ、チームで勝ち筋を共有する。“だからここを頑張る”“こうやったらこうなって好循環が生まれるよね”という戦うストーリー、台本を示していきたいと思っています」

 OQTでは「走り勝つシューター軍団」というコンセプトを掲げ、パリ行きの切符を勝ち取った。
「走り勝つシューター軍団は、日本の最高の強みで、センターピンのようなもの。一番やらなければいけないことだと思っているので、それもやり続けます。東京オリンピックの決勝戦からここまでの成長の中で、個々のスキルだったり、チームで組み立てるということを上乗せしてきました。その上で、成長した選手がいかにチームとして戦えるか、総力戦で戦いたいと思っています」
 
 男女バスケットボールは共に開会式の翌日スタート。日本は男子が27日(現地時間)、女子が29日に初戦を迎える。
 
(文・写真/杉浦泰介)