国民体育大会、全日本選手権を終え、伊予銀行男子テニス部はいよいよ実業団No.1を決定する日本リーグに臨む。ファーストステージで4連勝を飾り、その余勢を駆って5年ぶりに決勝トーナメントに進出した2年前とは一転、昨シーズンはファーストステージで1勝3敗と苦しい状況に追い込まれた。その結果、7位に転落し、悔しい思いをした。果たして、今シーズンはどう戦っていくのか。秀島達哉監督に現在のチーム状況および今大会のポイントを訊いた。

 10月初旬に山口県で行なわれた国体は、最大のヤマ場と予想されていた2回戦で敗退した。相手は強豪の千葉県。四国・愛媛県代表として出場した植木竜太郎、廣一義の両選手は実力を発揮したものの、千葉県勢の経験やスキルは、思っていた以上に高かったという。だが、指揮官はこの敗戦を決してマイナス材料と思ってはいない。

「植木は格上の相手に3−8で敗れました。スコア的には完敗でしたが、積極的にフォアハンドで攻めていましたし、スコア以上に試合は競り合いでした。もちろん、植木自身は実力の差を感じたでしょう。そのことで『このままではダメだ』という気持ちにもなれたと思います。それを日本リーグにぶつけてもらいたいですね。一方、廣は調子がいいですよ。千葉との試合も負けはしたものの、格上の選手と互角に渡り合っていましたからね。ただ、先手を取られてしまったことで、最後まで流れを引き寄せられずに終わってしまったんです。逆に廣が出だしで先手を取れていたら、十分に勝つことができたと思います」
 試合の内容は決して悪くなかっただけに、伊予銀行にとって得たものは少なくなかったようだ。

 今年の日本リーグは12月1日に開幕する。伊予銀行は4日間に渡って行なわれるファーストステージ(横浜国際プール)でリコー、協和発酵キリン、エキスパートパワーシズオカ、リビック。そして1月のセカンドステージ(ブルボンビーンズドーム)で九州電力、ライフ・エヌ・ピー、東京海上日動と対戦する。秀島監督が掲げる、2年ぶりの決勝トーナメント進出への最大のポイントはファーストステージの初戦、リコー戦だ。

「前回は、絶対に勝たなければならなかった初戦の協和発酵キリン戦での敗戦が、最大の要因でした。ですから、今回は初戦のリコー戦には絶対に勝ちたい。ここで勝つことができれば、チームも勢いに乗ってくるはずですから。リコー戦の結果で、決勝トーナメントに進出できるか否かが決まると思っています。リコーとのチーム力は五分と言っていいでしょう。こちらも層が厚くなっていますが、リコーも間違いなくレベルアップしている。それだけに、勝てば大きいですよ」

 今シーズンの集大成となる日本リーグを直前に控えた今、故障者もおらず、チーム状態は良好だ。なかでも2年目の廣選手は国体以降も好調を維持しており、指揮官からの期待も大きい。その要因の一つとして、2つ下のチームメイト佐野紘一選手からの影響が挙げられるという。佐野選手は早稲田大学時代、ダブルスでインカレ連覇という実績をもつ選手だ。勝負強く、繊細な勝負勘を持っている半面、型にはまっておらず、大事なポイントで大胆なプレーができるのが佐野選手の強みだ。その佐野選手と全日本選手権以降、ダブルスを組むことで廣選手は勝ち方がわかってきたのだ。

「廣は佐野とダブルスを組むことで、いい影響を受けています。どうすれば勝つことができるのか、それを理解するようになってからは、自分自身に自信がもてるようになったのでしょう。これまでは格上の相手に対して『負けても仕方ない』というようなところがありましたが、今は『こういうふうにして勝とう』と考えるようになっているんです」

 今回の日本リーグでは、この廣選手と佐野選手の出来がチームの勝敗を大きく左右すると指揮官は見ている。そのため、シングルス、ダブルスともに2人を軸にしたメンバー構成を行なう予定だ。若手が台頭し、底上げされたチームは着実にレベルアップしている。2年ぶりの決勝トーナメント進出に向け、どんな戦いを披露してくれるのか。まずはファーストステージで勢いに乗れるかどうかに注目したい。



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