1年で1部復帰を目指した伊予銀行女子ソフトボール部。前節は9戦全勝と最高のかたちでシーズンを折り返したものの、後節は初戦で今シーズン初めて2ケタ失点を喫するなど苦しんだ。それでも4勝3敗と勝ち越しで終え、前節の貯金もあってプレーオフ進出を果たした。だが、そのプレーオフでは1−2の僅差で敗れ、目標を達成することはできなかった。監督復帰2年目を迎える来シーズンは「厳しさ」を求めていくと宣言した酒井秀和監督。今オフのトレーニングで、既にその効果は表れているようだ。

 今シーズンの反省点として、酒井監督が投打の課題としてそれぞれ挙げたのが「失点」と「打点」だ。特に後節はムダな失点が多く、ここぞという場面での1本が出なかったという。なかでも0−0で迎えたチャンスの場面や、延長までもつれこみ、タイブレークに入った時の打点は非常に貴重で、それが勝敗のカギを握る。その貴重な打点を挙げるには、技術力はもちろんだが、やはり精神面が問われてくると酒井監督は考えている。

「チームの勝敗がかかった緊迫した場面で、いかに平常心のまま自然体でバッターボックスに入れるかどうか。そして打席の中で冷静に分析し、ボールを絞り切ってファーストストライクから打っていく勇気をもてるかどうかが重要です。プレッシャーに強い精神力を養うには、やはりとにかく日頃の練習から数多くのスイングをこなすこと。『自分はここまでやってきたんだ』という自信が平常心につながるのです。これはバッテリーにも言えること。ランナーのいる場面で平常心でいられるかどうかは、練習からの自信によるところが大きい。だからこそ、より厳しい練習の必要性を感じています」

 今月3日からは約1週間に渡って、行内合宿が行なわれた。そこでは全員に複数のポジションをさせ、適材適所を見極めたという。そんなところからも指揮官のチーム再建への強い意欲が垣間見える。また、その合宿には来春に新加入が予定されている6名の選手も参加した。彼女らの存在が、既存選手にいい影響を与えたようだ。

「新しい選手が合宿に加わったことで、既存の選手たちの意識は明らかに高かったですね。守備にしろバッティングにしろ、一つひとつのプレーに気持ちが入っていました。もうウォーミングアップの時から、ハツラツとした声が出ていましたからね。ノックでも『もう1本!』という声が次々と出てきて、選手たちの強い気持ちがこちらにも十分伝わってきました。1週間、本当に濃い練習ができたと思います」

 こうした気持ちの変化は、グラウンド以外での部分でも表れているようだ。酒井監督は11月下旬から選手たちに日誌を書かせている。合宿を通して、選手たちが書く内容にも奥深さが出てきているという。さらに誤字・脱字が減っているという点も、選手たちの意識の表れではないかと見ているのだ。

 この強い気持ちに加えて、指揮官がもう一つ挙げるのは「自主性」だ。
「強いチームとは選手全員が一つの目標に向かって同じ意識をもち、そして結果を出せる組織のことです。そのために重要なのは選手が自主性を持てるかどうかなんです。例えば練習では自分から取り組む姿勢が大事ですし、試合でもこちらがサインを出す前から『この場面ではこういうプレーが必要だな』と予測できるようになってほしい。こうした自主性をもった選手が多ければ多いほど、チームは自然と強くなるんです」

 現在、その自主性においては「まだ入り口に立ったところ」という酒井監督。それでも前述した合宿での選手たちには大きな手応えを感じている。「このチームは必ず強くなる」。指揮官はそう信じている。果たして来春、伊予銀行はどんなチームへと成長しているのか。2年目を迎える酒井監督の下、チームは着々と準備を進めている。



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