この11月、タイでフットサルのW杯が開催される。日本代表の目玉はキング・カズこと三浦知良(横浜FC)である。
 サッカーが11人で行われるのに対し、フットサルは5人。選手交代に制限は設けられていない。その意味でフットサルはサッカーとは似て非なる競技といっていいだろう。
 カズは「サッカーと一緒だよ」と語っていたが、「それじゃダメ」と苦言を呈したのが、ヴェルディ時代の後輩・北澤豪である。

「フットサルで成功しようと思うなら考え方を切り替える必要がありますね。たとえば距離感。サッカーならスペースがあるから、ちょっと前にボールを置いていても取られることは、まずない。ところがフットサルだと、ちょっと前に置いただけで、もう取られている。ボールを内側に置くとか、工夫が必要になってくるんです」

 あまり知られていないが、北澤はフットサルの元日本代表で、89年、オランダで行われたW杯にも出場している。現在は10クラブで結成するFリーグの最高執行責任者(COO)補佐だ。彼がカズに苦言を呈するのは、もちろんW杯での活躍を期待しているからに他ならない。

 98年のフランスW杯は、大会直前のスイス合宿でカズとともに最終メンバーから外された。「あの時、カズさんと一緒じゃなかったら、自分を冷静に保てていたかどうかわからない」と北澤は語っていた。

 つまり北澤にとってカズはアニキ分であると同時に同志でもあるのだ。こんなエピソードも。

「今年1月、北海道でのFリーグの試合前に話した時には“ちょっと、このままじゃまずい”と言っていたんです。ところが本番では“さすがカズ!”というプレーを随所で披露していた。あのあたりが普通の選手とは違うんですよね」

 1次リーグで日本は前回王者のブラジル、ポルトガル、リビアと対戦する。決勝トーナメント進出は容易ではない。“死のグループ”を突破すう上で、カズは救世主となれるのか。

<この原稿は2012年10月15日発売の『週刊大衆』に掲載されたものです>
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