近鉄などでプレーした金村義明の解説は辛口ながらもユーモアがあり、聞き応えがある。
 その金村が「この人ならチームを変えられる」と絶賛しているのが、オリックスの新監督に就任した森脇浩司だ。近鉄では金村の3年先輩にあたる。

「マスクは甘いけど、指導者としては一切、妥協しない。ホークスのコーチ時代、ベテランの小久保裕紀や松中信彦に対してもノックの雨を降らせた。2人とも泥んこになりながらノックを受けていましたよ。ベテランになってからも第一線で活躍できたのは、モリ(森脇)さんの厳しい指導があったからだと思いますよ」

 森脇といえばノックの名手。ミリ単位は大げさにしても、センチ単位で打球を調整できるというのだから驚きである。
 新指揮官がホークスのコーチ時代、口を酸っぱくして指導していたのが全力疾走の重要性である。

 振り返って本人は語る。
「まだ小久保や松中が若い頃のことです。僕は2人に、こう言いました。オマエらが内野ゴロを打って、一塁までタラタラ走っていたとする。きっと子供たちは、お父さんにこう聞くぞ。“クリーンアップを打っているような人は全力疾走しなくていいの?”って。プロ野球選手は子供たちの手本でいなくちゃいけない。子供たちに寂しい思いをさせてはダメなんです」

 そして今季限りで引退した元阪神の金本知憲の例を引いた。
「金本の連続フルイニング出場は偉大だけど、僕は1002打席という連続無併殺記録をもっと評価してあげてもいいと思う。たとえば1死一、二塁で内野ゴロを打ったとする。タラタラ走っていたらゲッツーでチェンジですよ。
 ところが彼は全力で走るから二死一、三塁になり、エラーや暴投で1点をもぎ取ってくる。僕に言わせれば全力疾走はことさら美化するものではなく、選手の義務なんですよ」

 来季のオリックス、ひょっとするとパ・リーグの“台風の目”になるかもしれない。

<この原稿は『週刊大衆』2013年1月7・14日号に掲載されたものです>

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