昨年12月6〜9日の4日間、伊予銀行男子テニス部は実業団日本一決定戦である日本リーグのファーストステージに臨んだ。結果は1勝3敗。「なんとか2勝2敗で」と目論んでいたが、予想以上に苦戦が強いられたかたちとなった。だが、今月25日からスタートするセカンドステージで3戦全勝すれば、まだ3年ぶりの決勝トーナメント進出の可能性は残っている。秀島達哉監督にファーストステージで得た手応えと課題、そしてセカンドステージに向けた意気込みを訊いた。
(写真:25日からは3年ぶりの決勝トーナメント進出をかけてセカンドステージに臨む)

「初戦のリコー戦が最大のポイントです」
 日本リーグ開幕前、指揮官はそう語っていた。その初戦のオーダーは既に決定していた。シングルスには植木竜太郎選手と飯野翔太選手、そしてダブルスには佐野紘一選手と廣一義選手が組むことになっていた。シングルスで1−1にもちこみ、ダブルスで勝負という計算をしていたのだ。

 ところが、その初戦の朝、アクシデントが起こった。廣選手が体調を崩し、出場できなくなったのだ。急遽、秀島監督は全選手を集め、緊急ミーティングを開いた。最大のキーマンである佐野選手をシングルスにもっていくのか、それともペアを替えてダブルスで勝負させるのか――。オーダー提出の締め切り時間直前まで結論は出ず、最後の決断は指揮官に委ねられた。秀島監督は佐野選手をシングルスNo.1にし、ダブルスは萩森友寛選手と坂野俊選手のペアに託すことにした。

「私自身もいろいろと迷いました。佐野はダブルスが得意ですから、坂野と組ませることも考えたんです。しかし、ずっと佐野と廣のペアでいこうと準備をしてきましたから、急にペアを替えるよりも、シングルスでいかせようと。その方がリスクは少ないと判断したんです。佐野自身の調子は非常に良かったですから、それに賭けようと思いました」

 佐野選手は第1セットは取られたものの、第2セットを奪い返し、最終セットにまでもちこんだ。しかし、その最終セットは2−6で落としてしまった。その後、シングルスNo.2で飯野選手が逆転で勝利を収めたものの、萩野・坂野ペアで臨んだダブルスは、最初のセットをタイブレークの末に落とすと、第2セットも奪われ、0−2。伊予銀行は、白星スタートを切ることはできなかった。

 引き戻すことができなかった流れ

 アクシデントを乗り越え、勢いに乗りたかった伊予銀行だが、あと一歩及ばず、痛い1敗を喫した。翌日の第2戦ではMS&AD三井住友海上に勝利し、1勝1敗としたものの、続く第3、4戦を落とし、1勝3敗と後がない状態となってしまった。秀島監督はやはり初戦が最大のポイントだったと見ている。

「一番、初戦に賭けていたのは佐野でした。佐野自身、自分がチームの柱だということは自覚していましたから、リコーに勝ってチームを勢いに乗せたいと思っていたんです。ですから、勝負どころとなるであろうダブルスでは廣と共に、絶対に勝とうと準備してきました。ところが、突然のアクシデントでシングルスに出場となった。そこで勝つチャンスはあったものの、勝ち切ることができなかった。それが最大の敗因だと責任を感じていたのでしょう。それを最後までひきずってしまっていましたね。結局、第2戦以降、佐野はダブルスで出場しましたが、ペアがコロコロと入れ替わりましたから、彼には随分と負担をかけてしまったと思っています」

 1勝2敗で臨んだファーストステージの最終、イカイ戦、秀島監督は「ここはきっちりと勝ちにいこう」と選手たちに声をかけ、臨んだ。しかし、勝ち星を計算していたシングルスNo.2の飯野選手が1−6、2−6と完敗。ダブルスでは廣選手が復帰し、佐野・廣ペアで臨んだものの、2−6、2−6で敗れ、結局イカイ戦は全3試合を落とすという結果に終わってしまった。

「飯野は第1、2戦とタフな試合が続いていました。ですから、第3戦は休ませようかなとも考えたんです。しかし、本人が『いかせてください』と。そこで佐野とダブルスを組ませたんです。結局、4試合連続でしたから、最後のイカイ戦ではいつものように体は動いていませんでしたね。佐野と廣のダブルスも、やはり廣のブランクもあって、少しかみ合っていなかった部分がありました」

 カギを握る初戦の日本紙通商戦

 しかし、ファーストステージでは手応えもつかんでいる。今回、秀島監督は全選手にセットの入り方を強く意識させたという。これまで試合でエンジンがかかるのが遅い傾向があり、「挽回しなくては」と焦りを生じることが少なくなかった。挽回するには、プレッシャーがかかり、それだけエネルギーも必要となる。そこで、特に3ゲームを強く意識することで、先にリードを奪い、逆に相手にプレッシャーを与えようとしたのだ。そのためにはファーストサーブの確率を高めること、そして粘り強いリターンがポイントとされた。

 結果を見れば、うまく3−0とリードすることは難しかった。ファーストサーブとリターンについても、全員が全員、できたわけではない。逆に相手にリードを奪われることもあった。だが、そこでの対応に関して、指揮官は選手たちの成長を感じたという。
「手強い相手ばかりですから、3−0とリードすることは非常に難しい。それでもそうした意識があるのとないのとでは、まったく試合の展開が違います。メンタル部分での準備、つまりは心構えが重要なんです。そういう意味では、選手たちにも変化があったことでしょう。それに、たとえリードされたとしても、誰ひとり慌てることがなかったのは収穫でしたね。飯野などは逆にそこから立て直して勝利に結びつけていましたから」

 25日からはセカンドステージが始まる。対戦相手は日本紙通商、協和発酵キリン、九州電力だ。伊予銀行が狙っているのは、全勝。しかも第1戦の日本紙通商、第2戦の協和発酵キリンには3−0と完勝するつもりだ。現在、3位につけているリコーがファーストステージで日本紙通商に2−1、そして協和発酵キリンには3−0で勝利を収めている。そのため、伊予銀行が両チームに3−0で勝つことができれば、勝敗数で並んだ時、日本紙通商戦での勝利数が1つ上回る。そうなれば、決勝トーナメント進出の可能性が見えてくるのだ。

「第1戦の日本紙通商戦を3−0で勝つことができれば、チームはグンと勢いに乗るはず。ファーストステージ同様に、はじめが肝心であることは間違いありません」
 3年ぶりの決勝トーナメント進出へ。今シーズンの集大成として、チーム一丸となり、勝利を掴みにいく。


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