史上初の快挙だそうだ。2年連続して同一球団から2人の野球殿堂入り。昨年は、北別府学氏と故・津田恒実氏、そして、今年は、大野豊氏と外木場義郎氏に決まった。もちろん、いずれも元カープの投手である。

 たしかに、4人ともいい投手だった。津田は豪球だった。北別府は針の穴を通すようなコントロールだった。大野には左腕独特の切れ味があった……。

 そして、外木場。なんというのだろう。今、再生される映像を見ても体感できる、あのリズム感。ピュンと足を上げて、バックスイングも大きく速く、投げ終わると、ビデオの逆回しのように、振りかぶった位置まで戻る。

 4人の中でも、フォームのリズムとスピード感でいえば、外木場である。ほとんど、ストレートとカーブだけという投手も、現在では、まずお目にかかることはない。もちろん、時代によって投球理論が進化、変容したということはあるだろう。だが、それだけに、今回の野球殿堂のエキスパート部門での表彰には意味があると思う。

 で、提案がある。たとえば、あの完全試合の投球をDVDにして発売してはどうか。当時のことだから、1試合まるまるは映像が残っていないのかもしれない(それとも、私が無知なだけで、すでに発売されていますか?)。

 もし、1試合全部の映像が残っていないなら、ノーヒットノーランの2試合も入れて、計3試合にしてはいかがか。なぜなら、映像を見ていて、これほど気持ちのいい投球は他にないと思うからだ。見ているだけで気分が明るくなり、しあわせになれる(私は、少なくとも3枚くらいは買う!)。

 外木場がエースとして活躍したのは、事実上、20勝して初優勝に貢献した1975年までである。つまり、あれから38年もたつわけだ。

 最近は便利になったもので、インターネットで検索すると、外木場も津田も大野も北別府も、いや、彼らだけに限らず、往年の名選手のプレーを簡単に動画で振り返ることができる。そんなことをしながら、ふと思うのだ。もう一度、この目でじっくりと見たいのは誰だろう。私の場合は、外木場である。

 カープの現在に戻ろう。
 今季は今村猛がクローザーをつとめることになるらしい。まぁ、いずれはそうなるのだろうから、この決断は歓迎すべきだろう。

 ただ、今村は連投すると簡単に打ち込まれる日がある。どことなくフォームが重たい。今の今村のフォームに、かつての外木場のようなリズム感、躍動感が宿るようになれば、彼は抑えで大成できると思うのだが……。

(このコーナーは二宮清純と交代で毎週木曜に更新します)
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