四国といえばお遍路が有名である。88箇所の霊場をすべて巡ると“結願”し、願いが成就すると言われている。「愛顔つなぐ、えひめ国体」まで、あと4年と迫った愛媛県体育協会では、このお遍路にならって県内のスポーツ現場を回る“88箇所訪問”を昨年から行っている。ここまで“51番札所”までを巡り終えた。
(写真:全国制覇した選手を輩出している八幡浜工高レスリング部にて)
 今回の企画を発案したのは県体協の大亀孝裕会長だ。
「競技力向上のためには、大会に行って応援するだけではなく、日頃、練習している現場に行って激励しよう」
 バレーボール、ボート、ハンドボール、ソフトボール、ラグビー……。昨年の5月から、実際に活動している学校やクラブの練習場を大亀会長らが訪れてきた。

「現場に行くと限られた施設の中で、熱心な指導者の下、一生懸命練習している姿が印象に残りました」
 訪問に同行した県体協の藤原恵専務はそう振り返る。新居浜市では学校の教室よりも狭いスペースで20名ほどの少年たちがウエイトリフティングの練習に取り組んでいた。乙亥大相撲で知られる西予市野村では高校生と中学生が一緒になって強化に取り組んでいた。

 競技の裾野を広げ、国体で好成績を収めるにはジュニア層の育成は不可欠だ。それには学校単位にとどまらず、地域と連携し、年代の垣根を越えて選手を育てていく必要がある。全国で結果を残している競技では、そういったシステムがうまくできていた。

 訪問の際、大亀会長は地元で後援会を立ち上げることを呼びかけている。これも地域との結びつきを強める試みだ。「後援会によって地元から物心両面でサポートしてもらえれば、選手たちの励みにもなり、レベルアップにもつながります。地域全体で関心を持ってもらい、盛り上げてもらうことが、4年後の国体成功にもつながるのです」と藤原専務はその狙いを説明する。
(写真:宇和島市の津島高相撲部では地域の子ども相撲とも合同練習を開いている)

 大亀会長が代表理事を務める公益財団法人の大亀スポーツ振興財団では、こうした後援会に対して、助成金を出してサポートしている。今年度は8団体に資金援助が行なわれ、2013年度早々にも、さらに5団体の後援会が誕生する予定だ。後援会立ち上げの動きは、他にも出てきており、スポーツを地域で支える体制が生まれつつある。

 88箇所訪問は2013年度も継続して実施され、今年中には“88番札所”まで到達する見込みだ。これまでは高校をはじめとする少年の活動を視察することが多かったが、今年は成年の活動現場にも足を運ぶ。もちろん、県下のスポーツの現場は88箇所にとどまらない。100箇所、150箇所と、今後も“巡礼”は継続される。

 大亀会長は選手たちに「100歳の青年もいれば、20歳の老人もいる。夢、希望を持っていれば、年齢は関係ない」と目標をもつことの大切さを訴えかける。訪問先で配布するえひめ国体のポスター(写真)にも次のような励ましの言葉が並ぶ。

「え」笑顔で耐える厳しい練習
「ひ」媛国体 主役は君だ 勝ち取れ青春
「め」目指せ頂点 君がやらなきゃ誰がやる
「こ」この涙 媛国体で花開く
「く」苦労して掴む栄光 君のもの
「た」耐え忍び 明日の頂点 目指す君
「い」いっぱいの声援胸に立つ舞台

 えひめ国体の成功と地元開催での天皇杯獲得――この思いを4年後に結願させるべく、スポーツ版お遍路はこれからも続いていく。

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関連リンク>>公益財団法人 大亀スポーツ振興財団

(石田洋之)
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