女子ソフトボール2部リーグの前節4試合を終え、伊予銀行女子ソフトボール部は3勝1敗としている。現在は4試合で浮き彫りとなった課題を克服しようと、練習に一層力が入っている。「チームの状態は上がってきている」と手応えを感じつつも「プラスアルファが欲しい」と述べる酒井秀和監督。試合を振り返りながら、今後への課題について訊いた。

「試合の中には勝敗を分ける1球やワンプレーがあるもの。しかも10回やって、10回勝てる相手などひとつもない。だからこそ、細かいプレーを大事にしなければならないんです」
 そう語る酒井監督が今、課題として挙げているのは、「バッテリーとしての制球力アップ」「併殺プレーの精度」「2死二塁からのバックホームの確率」「ストライクゾーンを広くとったうえでのバッティング」「犠打の成功率」だ。

 その中で「ストライクゾーンを広くとったうえでのバッティング」とは、いったいどういうことなのか。酒井監督にこの疑問を投げかけると、次のような答えが返ってきた。
「相手にとって“ここはタイムリーを打たれたら絶対にダメ”という場面では、ピッチャーは制球力を高めてくる。そのなかでタイムリーを打つには、ストライクコースを広げていかないといけません。ファーストストライクやセカンドストライクは狙い球を絞って打ちにいくことが重要ですが、追い込まれてからの球は狙い球ではないからと簡単に見逃し三振をしていてはタイムリーは生まれません。カットでもいいから、打ちにいくゾーンを広げる必要があるんです」
 こうした細かいプレーのひとつひとつが、チームに勝利を呼び寄せるのだ。

 一方、手応えを感じつつあるのが打線のつながりだ。「各選手が役割を理解し、先頭打者が出て、送って、返す、という“つながり”が出始めている」と酒井監督。3戦目のYKK戦では2−0とリードした3回裏、2死無走者から4番・矢野輝美選手が二塁打、5番・加藤文恵が四球で出塁すると、その日初先発の新人・池田千沙選手が2ストライクに追い込まれながらも粘って、走者一掃のタイムリーを放った。これで完全に試合の主導権を握った伊予銀行は、この試合4−1で快勝した。

「この場面では、いいつながりが出ました。加藤の『先輩2人がせっかくつないでくれたチャンス。ここで結果を出す!』という強い気持ちが表れた一打でしたね」
 こうした“つながり”が、さらに理想のチームへと押し上げていくのだと、酒井監督は語る。

 今季の打線は昨季までとは違うラインアップとなっている。驚いたのは、これまで主軸を務め、ポイントゲッターの役割を担ってきた相原冴子選手の1番への起用だ。その理由はこうだ。
「どのチームも、相原にはロングヒッターとしての認識が強かったと思うんです。でも、彼女は足もあって、1番としては適任なんですよ。今年はキャプテンでもありますから、彼女が切り込み隊長として出塁することによって、チームのムードも上がる。勢いをつけるという意味で、彼女を1番に起用しているんです」

 そして、“新4番”にはチーム最年長、ベテランの矢野選手を抜擢している。彼女に期待しているのは、もちろん打点だ。現在4試合を終えて、14打数10安打4打点、打率はホープセクションで2位の7割1分4厘。「ここまでは持ち味の勝負強さを発揮してくれている」と指揮官も全幅の信頼を寄せている。

 また、今年入社した新人4選手も全員が試合に出場しており、チームにもいい影響を与えているようだ。特に開幕戦からスタメンで出場した正木朝貴選手は、堅実な守備、そして新人らしいがむしゃらさを出し、チームの士気向上に一役買っているという。その正木選手も含め、今後、新人選手たちは体力面がひとつの課題となる。
「スキルは十分にありますから、それに体力がつけば、さらにひとまわりもふたまわりもレベルアップするはずです」
 指揮官は大きな期待を寄せている。

 さて、伊予銀行女子ソフトボール部には、リーグ戦のほかにもうひとつ、重要な任務がある。国民体育大会だ。4年後には愛媛国体が控えており、県をあげての強化が進められている。今年5月には県内の企業・クラブ9チームを「強化指定チーム」に指定し、大会参加費や練習環境整備などにおける費用面での補助など、本格的な支援を行なっていくことが発表された。もちろん、伊予銀行は男子テニス部とともに女子ソフトボール部も強化指定チームに選出されている。

 そうした中での今年の国体での意義を酒井監督は「経験」としている。
「国体には独特な雰囲気があるんです。短期決戦ということもありますし、県の代表という責任感の中、1部リーグのトップチームとも対戦しますからね。うちは若いチームだけに、その雰囲気を味わったことのある選手は多くはありません。ですから、ぜひその雰囲気を経験して、その中でどうすれば勝つことができるのかを感じてほしいんです。それと4年後の愛媛国体では、おそらく現在のチームが土台となったチームづくりが行なわれているはずです。それは他のチームも同じでしょう。だからこそ、今、自分たちはどのあたりの位置にいるのかを確かめるいいチャンスだと思うんです」

 指揮官が「勝負の年」と称した今シーズンは、前半から後半へとさしかかっている。チームの状態はまだ道半ばだが、酒井監督は確実に上がってきているという感触をつかんでいる。これからが、伊予銀行女子ソフトボール部の本領発揮といきたいところだ。


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