2013年シーズンがスタートし、現在、伊予銀行男子テニス部は各自課題をもって練習に励んでいる。今年のテーマは昨年同様に“ゲームでの対応力”だ。特に通常のように2セット先取ではなく、8ゲーム先取の国民体育大会では「切り替えの早さが重要」と秀島達哉監督は語る。愛媛国体が4年後に迫っており、伊予銀行にとって国体の重要度は増している。それに向けての課題克服は、チームの使命にほかならない。果たして、現在のチーム状況はどうなのか。

「いったん崩れてしまうと、そのままズルズルといってしまうことがよくある。でも、それでは勝てません。悪い時にも、なんとか立て直して対応していく力がなければダメなんです」と秀島監督。その「ズルズルといく」ことがほとんど見られなくなったのは、佐野紘一選手だ。今年も、チームの大黒柱としての活躍が期待されている。

 現在、シングルスの日本ランキングは35位。この数字が示す通り、佐野選手の状態は非常にいいという。
「トーナメントでのとりこぼしがなくなりましたね。確実に勝てる相手には、きっちりと勝利を挙げています」
 チームにとって、安定感のあるエースの存在は大きい。

 では、佐野選手がさらにレベルアップするためには、何が必要なのか。秀島監督は「ベースの部分の精度アップ」を挙げた。
「佐野のショットひとつひとつは、クオリティーが高いんです。しかし時折、トリッキーなプレーをすることがある。それ自体は彼の持ち味ですからいいのですが、時折ミスをして、優位な展開で進められるはずの試合でも、接戦になってしまうことがあるんです。トリッキーなプレーは、ベースの部分がしっかりしているからこそ活きるプレー。例えば、ドロップボレーをするにも、基本的なボレーの精度が低くては何もなりません」
 自らの持ち味を出すためにも、佐野選手はその根底にあるベースの部分のレベルアップに今、取り組んでいる。

 佐野選手とともに、もう一人のエースとして台頭してきたのが2年目の飯野翔太選手だ。本人にはその自覚が芽生えており、「今年は自分がやらなければ」という気持ちから、佐野選手に“追いつけ、追い越せ”とばかりに、より積極的に練習に取り組んでいるという。

 その飯野選手の課題は、リズムが単調になってしまうところだ。同じ打点で打つため、ストロークの威力自体はあるにもかかわらず、相手にとっては追い込まれている感覚はなく、逆に打ちやすい状況をつくっているのだ。それを打破するためには、クルム伊達公子の代名詞である“ライジングボール”のように高い打点から打ち、速い展開にもっていくことが必要とされている。緩急のついた試合展開ができるようになれば、佐野選手との“ダブルエース”にまた、一歩近づくことができる。

 さて、日本リーグ後、新しくキャプテンに就任したのが、入行7年目、チーム最年長となった植木竜太郎選手だ。もともと責任感のある植木選手だけに、どうすればチームが強くなれるのかを必死に考えているのだろう、秀島監督の目には少し力みが生じているように見えているという。

「練習メニューをどうしようかということをいろいろと考えてくれているのですが、少し肩の力を抜くようにと伝えたんです。彼が一生懸命に取り組んでいる姿を見るだけで、必ず他のメンバーたちはついていくはずですから」

 そして、指揮官はベテランとなった植木選手に対しても、「さらにパフォーマンスを高めることができるはず」とにらんでいる。そのために克服しなければならないのは、サーブだ。
「身体は小さいのですが、その身体を伸び伸びと使って打った時のサーブは力があって、非常にいいんです。ところが、競った展開になると、焦りからなのか手先だけの打ち方になって、ダブルフォルトになることも少なくない。サーブさえ安定すれば、植木はもっと勝てるプレーヤーになるはずです」

 もちろん、現在は本調子ではない小川冬樹選手や廣一義選手が復調し、ダブルスでは定評のある坂野俊選手がさらなるレベルアップを図ることもまた、チームの底上げには必須だ。秀島監督就任5年目の今年、伊予銀行男子テニス部は、もう一段、上のステージへと上がることができるか。第一関門は、10月の国体である。


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