29日(現地時間)、世界水泳選手権バルセロナ大会の競泳2日目が行われ、男子100メートル平泳ぎ決勝は北島康介(日本コカ・コーラ)が59秒98のタイムで6位入賞に終わった。優勝はクリスチャン・スプレンジャー(オーストラリア)。58秒79で金メダルを獲得した。注目の萩野公介(東洋大)は2種目4レースに出場し、100メートル背泳ぎ準決勝で全体6位、200メートル自由形準決勝では全体3位で、いずれも決勝へとコマを進めた。入江陵介(イトマン東進)、寺川綾(ミズノ)の男女背泳ぎのエースは、ともに100メートル背泳ぎで全体4位に入り、準決勝を突破した。女子100メートル平泳ぎでは、準決勝でルタ・メイルティテ(リトアニア)が世界記録を更新。同組で泳いだ鈴木聡美(ミキハウス山梨)は精彩を欠き、全体12位で準決勝敗退となった。
 北島、10年ぶりのバルセロナ

 2003年、バルセロナで開催された世界水泳。男子100メートル、200メートル平泳ぎで、20歳の日本人が金メダルを獲得した。いずれも世界新記録のおまけ付き。翌年のアテネ五輪でも100メートル、200メートルの平泳ぎ2冠を達成し、08年の北京五輪では2種目を連覇。平泳ぎ界のレジェンドとなった。

 北島康介――。当時20歳の若者は、現在30歳になった。昨年のロンドン五輪では個人種目でメダルを逃した。五輪後は休養し、現役引退の可能性もあったが、北島はまだ自らの競泳人生に幕を引かなかった。
 復帰後すぐの今年4月の日本選手権で100メートル平泳ぎでは優勝。ただ1分0秒78のタイムには「この記録では強いと言えない」と本人の表情は厳しかった。

 今大会は予選から59秒88をマークして通過し、準決勝では59秒92と全体8位でファイナルへと進んだ。準決勝最下位とはいえ、2位から8位まではわずか0秒14差でひしめき合っており、コーチとも「望みは捨ててはいけない」と話していたという。

 そして臨んだ決勝。折り返しの50メートルのターンで5位につけ、前を泳ぐキャメロン・ファンデルバーグ(南アフリカ)、クリスチャン・スプレンジャー(オーストラリア)を追い上げた。しかし最後は伸びきらず59秒98で6位。「記録を落としてしまったのが心残り」と、タイムには不満の様子だった。このレースを制したのはスプレンジャー。100メートル平泳ぎで世界記録を持ち、ロンドン五輪で金メダリストのファンデルバーグを差し切り、今季世界ランク1位の力を見せつけた。

「力を出し切ったとはいえないが、ファイナルへ行けたことはサプライズ。よく持ち直した」と、北島は復帰してから半年足らずで世界の第一線で戦えたことには手応えを掴んだようだ。10年ぶりのバルセロナは「得るものは大きかった」と話す、その表情に充実感がにじんでいた。北島は残りは50メートル平泳ぎとメドレーリレーに出場する。

 ハードな日程を楽しむ萩野

 100メートル背泳ぎ準決勝では、ロンドン五輪同種目銅メダリストの入江が「バタついた」と、不本意な泳ぎながらも全体4位の53秒41で決勝へ進出した。

 一方、日本選手権で入江に競り勝った萩野は、「前半は慌てた」と7位で50メートルのターンを通過した。それでも後半盛り返し、一気に順位を上げる。この組3位、全体では6位で準決勝を突破した。53秒68の記録には「決勝に残れてラッキーだった」と納得はいっていないが、厳しい日程のなかできっちりと結果を出した。

 そして萩野は50分後、200メートル自由形準決勝に臨んだ。ロンドン五輪同種目金メダリストのヤニック・アニエル(フランス)と同組で泳ぎ、序盤は下位に沈む苦しい展開だった。最後のターンの時点で、まだ順位は7番手。ここで萩野のスパートをかけ、ラスト50メートルを26秒58で泳ぎ、ごぼう抜き。1秒近くあった差をはね返し、この組トップでゴールした。3種目目の決勝行きを果たした。

 ここまで2日間で6レースをこなした萩野。明日は100メートル背泳ぎと200メートル自由形の決勝2レースが控える。厳しい日程がまだまだ続くが「2本も決勝を泳げるなんて幸せ者。噛みしめながら泳ぎたい」と、萩野はこの状況を楽しんでいるようだ。

 メダリスト、涙のセミファイナル

 女子100メートル平泳ぎで世界記録が生まれた。15歳でロンドン五輪金メダリストとなったメイルティテが、その実力をいかんなく発揮した。

 メイルティテは準決勝に登場すると、前半の50メートルをただひとり29秒台を叩き出す。後半も他を寄せ付けず圧倒。1分4秒35のタイムは4年ぶりの世界記録更新となり、高速水着時代の記録を上回った。

 ゴール直後、メイルティテは何度も水面を叩き、力強いガッツポーズを作った。ロンドンでは母国リトアニアに五輪競泳初の金メダルをもたらし、歓喜の涙に暮れた。最速の称号を得た16歳の金メダリストが世界水泳初制覇まで、あと一歩と迫った。

 準決勝の同組で泳いだ鈴木は、ロンドン五輪の銅メダリスト。「前半からストロークが多かった」と、出遅れた。後半順位を上げ5位に入ったが、1分7秒83は全体12位。前回の上海大会での準決勝敗退のリベンジとはならなかった。鈴木は「自分にプレッシャーをかけてしまった。2年前からの目標を達成できなかった」と瞳を濡らした。

 ロンドンでは3つのメダルを持ち帰った鈴木だが、世界水泳では1種目目でつまづいた。とはいえ下を向いてばかりいられない。鈴木は今大会の残り種目を「スタートから笑顔でいきたい」と、トレードマークでの逆襲を誓った。

 主な結果は次の通り。

<男子100メートル平泳ぎ・決勝>
1位 クリスチャン・スプレンジャー(オーストラリア)58秒79
2位 キャメロン・ファンデルバーグ(南アフリカ) 58秒97
3位 フェリペ・リマ(ブラジル) 59秒65
6位 北島康介(日本コカ・コーラ) 59秒98
山口観弘(東洋大)は予選敗退

<女子100メートルバタフライ・決勝>
1位 サラ・ショーストロム(スウェーデン) 56秒53
2位 アリシア・コウツ(オーストラリア) 56秒97
3位 ダナ・ヴォルマー(米国) 57秒24 
星奈津美(スウィン大教)は準決勝敗退

<女子200メートル個人メドレー・決勝>
1位 カティンカ・ホッスー(ハンガリー) 2分7秒92
2位 アリシア・コウツ(オーストラリア) 2分9秒39
3位 ミレイア・ベルモンテ(スペイン) 2分9秒45
渡部香生子(JSS立石ダイワ)、寺村美穂(セントラルスポーツ)は準決勝敗退

(杉浦泰介)