愛媛県体育協会は1924年の設立から90周年の節目を迎えた。これを記念して12月21日、愛媛県武道館で式典が挙行された。県体協では今回の記念式典を、4年後に「愛顔つなぐ えひめ国体」を控えている中、過去を振り返るものではなく、2017年に向けた未来志向のイベントとして開催した。会場には各競技団体の選手・役員のみならず、県や市町村の関係者、一般の参加者合わせて約1400人が集結。国体成功へ決意を新たにしていた。
(写真:予想を上回る人数が詰めかけ、式典は熱気にあふれた)
 式典ではまず県体協の大亀孝裕会長が式辞において、今回の開催目的を説明。4年後の国体へ「総合優勝を目指す本県にとりましては、これからの4年間が大変な道のり。オール愛媛で取り組まなくてはいけない」との認識を示した上で、「本来ならば、功績のあった方々の表彰などを行うのが常だが、えひめ国体の成功、天皇杯獲得に向けて、みなさんの意識を高め、決意を新たにすることを基本コンセプトとした」と語った。

 さらに大亀会長は「えひめ国体には宝があります。愛媛を明るく、元気にしたいという夢と希望があります。この絶好の機会を一過性の催しに終わらせることなく、ふるさとに各競技を根付かせよう」と参加者へ力強く呼びかけ、県民一丸となって2017年へ邁進する重要性を強調した。
(写真:「充実したえひめ国体にするよう頑張ろう」と話す大亀会長)

 いわば、えひめ国体への決起集会となった式典では国体監督候補者の委嘱式が行われた。各競技団体が人選し、県体協が承認した監督候補53名が読み上げられたのだ。開催4年前の時点で責任者を明確にしたのは、「強化は短期間ではできない。早期の体制づくりを促したかった」(県体協・藤原恵専務理事)との狙いによるもの。今回の式典で監督候補を発表することが決まったことで、各競技団体も指導者の確保に動き、想定より多くの人数が候補者として決定したという。

 監督候補者を代表して柔道成年女子の山口奈美さん(新田高)が委嘱状を受け取り、「責任の重大さを肝に銘じ、全力で選手の強化、育成に努めます」と決意表明。えひめ国体では優勝と、全種別での上位入賞を目標に掲げた。

 続いて壇上では、各競技団体の選手、強化担当者、関係者がえひめ国体への熱い思いを次々と語った。県ウェイトリフティング協会強化委員長の真鍋和人さんは「総合成績ではまだまだ全国的には中ほどでしかない。地元で開催されるえひめ国体では総合での入賞を果たすべく選手育成・強化に全力を挙げて取り組んでいる」と現状を報告。新居浜市出身の真鍋さんはロサンゼルス五輪の男子52キロ級で銅メダルを獲得した実績を誇る。「7年後の東京オリンピックを視野に入れ、競技力の向上に取り組みます」と2017年のえひめ国体から、2020年の東京五輪も見据えて選手を育てていく意向を示した。
 
 県ボート協会の強化・普及部長で、現役で地元での国体出場を狙う武田大作選手(ダイキ)は「天皇杯獲得はもちろん、(得点で)200点獲得を目指し、協会一同努力してまいります。“できない”とは言わず、“やれる”と全体で意識し、チーム愛媛として勝ちに行く」と高らかに宣言。「過去5回、オリンピックに出場しましたが、5回とも選考のたびに国内の勝者でいることに慢心せず、挑戦者として挑んできた」と世界で培った経験を若手に伝えていく考えだ。
(写真:「少年選手が充実してきた結果、成年選手として成長し、選手層に厚みを増している」と強化の手ごたえを語る武田)

 県体協では4年後に少年のカテゴリーに入る12〜14歳の選手たちを“ターゲットエイジ”と設定し、この年代への競技普及、育成に重点を置いている。今回は、その中から昨年の全日本ジュニアロード(小学校5、6年の部)で優勝した自転車競技の日野泰静選手(西条市立小松中1年)と、今年の全日本中学選手権で個人優勝を収めたボウリングの泉宗心音選手(松山市立東中2年)が登壇。日野選手が「もっと、もっと強くなって、4年後のえひめ国体では、“優勝したい!”ではなく、優勝します」とさらなる成長を誓えば、泉宗選手が「今までお世話になったみなさんへの恩返しのためにも、えひめ国体では必ず表彰台の一番上に立ちます」と約束した。

 また成年では男子テニス部、女子ソフトボール部が県から強化指定に認定されている伊予銀行・松浦祐一人事部長が「今年の東京国体では、テニスは3位、ソフトボールは準優勝と、好成績を収めることができた」と成果を語った。そして「来るえひめ国体で結果を出すことが、スポーツの分野で私ども実業団、伊予銀行ができる最大の社会貢献」と、今後も有力選手の確保や練習環境の整備に力を入れる方針を表明した。

 式典に引き続いて北京五輪シンクロナイズドスイミング日本代表の石黒由美子さんによる記念講演が催された。石黒さんは小学2年の時、交通事故に遭い、顔面を540針、口の中を260針縫う大ケガを負った過去を持つ。しかし、テレビで見たシンクロナイズドスイミングに憧れて競技を始め、事故の後遺症を克服して念願の五輪代表入りを果たした。石黒さんは講演で自身の半生を振り返りつつ、「諦めなければ夢は叶う」とのメッセージを伝えた。

 講演後、石黒さんは県武道館の隣にある屋内プール「アクアパレット松山」に移動。子どもたちを対象としたシンクロナイズドスイミングの体験教室が開かれた。当初は競泳や水球に取り組んでいる小中学生の希望者が参加予定だったが、当日の午前中、石黒さんがプールで出会った高校生のスイマーたちも飛び入りで合流。トップ選手の指導により、子どもたちはすぐに水の中で回転もできるようになり、シンクロの楽しさに触れていた。また武道館内では国体に続いて行われる障害者スポーツ大会の実施競技であるフライングディスクや、バウンドテニス、ダブルダッチなどの体験会も開催された。
(写真:体験教室では石黒さんによる実演もあり、保護者、関係者のみならず、多くの見学者がやってきた)

 一連のイベントを終了して、県体協では「えひめ国体に向けて前進するきっかけになった」と総括する。特に式典では監督候補者の委嘱や決意表明を盛り込み、「競技団体にとって刺激になり、4年後へ向けた機運が高まったはず」と効果を期待する。

 今年の東京国体「スポーツ祭東京2013」では、愛媛県は天皇杯(男女総合)の成績で26位だった。前年より順位は向上したとはいえ、4年後の国体で総合優勝を達成するには急ピッチで強化を進めなくては間に合わない。県体協では東京国体を踏まえ、各競技団体に2017年に向けた体制づくりと、そのために必要な人材についてヒアリングを進めている。

 特に成年選手が県内で活動を続けるにあたっては職場の確保が不可欠だ。5月には県が「えひめ国体選手および指導者確保推進班」が設立されたが、県体協では職員が無料職業紹介事業責任者の資格を取得し、より雇用先の開拓をサポートできるようにしている。

 選手、指導者が揃っても練習場所が満足になければ競技レベルは向上しない。トレーニング環境を整えることも喫緊の課題である。自治体、学校の施設をフル活用し、必要であれば改修なども早期に求められる。県体協では各施設の優先使用や使用料の減免など、国体候補選手、団体が充分に練習を積めるように働きかけていくつもりだ。

 時間は待ってくれない。記念式典での決意を有言実行すべく、それぞれの立場で国体成功へ向かって前進していく。

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(石田洋之)
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