1月19、20日の2日間にわたって開催された「IPC/東京2020オリエンテーションセミナー」には、延べ384名が参加。国際パラリンピック委員会(IPC)からパラリンピックの概要の説明や、意見交換が行なわれた。それを受けて20日には記者会見が行なわれ、冒頭の挨拶でアンドリュー・パーソンズIPC副会長は「(東京パラリンピックは)これまでにない成功を収めるだろう」と6年半後の成功に大きな自信を示した。その一方で、今後の課題としてはパラリンピックの競技化を進めることの重要性を語った。
 2012年に開催されたロンドンパラリンピックは、予選からチケットが売り切れる競技が出るなど、スポーツの祭典としての成功を収めた。IPCがそのロンドン大会以上の成功を期待しているのが20年東京大会だ。昨年3月にもIOC評価委員のひとりとして東京を視察に訪れているパーソンズIPC副会長は「日本には素晴らしい基礎が出来上がっている。人材も揃っているし、パッションもある」と高い評価を口にした。

 しかし、日本の障害者スポーツを取り巻く環境は世界的に見ても、決して先進国とは言えない。パラリンピックの代表選手においても、競技の環境整備や、国民への認知、理解は諸外国に遅れをとっている。会見でも「日本の障害者スポーツに対する認知度は十分とは言えない。意識改革を進めていかなければ、いくつもの壁がある。今後、日本はどうすべきなのか」という質問があがった。それに対して、パーソンズIPC副会長は「パラリンピックの競技化を進めていくことが重要だ。そのためにはまず、メディアを利用して選手をアスリートとしてプロモーションしていくことだ」と答えた。

 一方、鳥原光憲日本パラリンピック委員会委員長は、今後の課題についてこう語っている。
「日本ではパラリンピックの価値が十分に理解されていない。(セミナーでは)利害関係者とコミュニケーションをとりながら、いかにパラリンピックのブランドを高め、レガシーをつくりあげていくかということが大事だという説明を受けた。今後はパラリンピックの魅力をあらゆるかたちで周知させていくことに注力していきたい。そのひとつとして、これからの世代、小学生を始めとした子どもたちにパラリンピックの魅力を伝えていくこと。そして企業にもパラリンピックの価値を理解してもらえるような活動を進めていきたい」

 今回のオリエンテーションは、あくまで概要の説明や成功例の紹介などで、IPCから東京に対しての要望はなかったという。だが、会見でパーソンズIPC副会長が何度も「成功」「自信」「期待」という言葉を口にしており、IPCが東京パラリンピックに望むハードルは非常に高いということが窺い知れる。果たして、6年半でパラリンピックおよび障害者スポーツの価値、魅力を浸透させ、IPCの期待に応えることはできるのか。日本が目指すスポーツ立国実現へのチャンスと捉えたい。

(文・写真/斎藤寿子)