1月24〜26日に行なわれた日本リーグのセカンドステージ、伊予銀行は1勝2敗とし、通算4勝3敗で4位。あと一歩のところで、4年ぶりの決勝トーナメント進出には至らなかった。最大のヤマ場となったのは、セカンドステージ初戦のリコー戦だった。しかし、これまでほぼ互角の戦いをしてきた相手に、シングルス2本はストレート負けを喫する完敗だった。果たしてチームはどう立て直しを図っていくのか。秀島達哉監督に訊いた。


 責任感の強さからくる重圧

 昨年12月5〜8日に行なわれたファーストステージでは3勝1敗とし、4年ぶりの決勝トーナメントへと期待が寄せられていた。チーム内でも大きな手応えを感じていたという。今年1月に入っても、チーム状態は非常に良かった。「全てを懸けていた」リコー戦に向けて、秀島監督からは早めにシングルスとダブルスのオーダーが発表され、選手たちは各自、相手のストロングポイントとウィークポイントを洗い出し、対策をしっかりと進めてきていた。

「ここまできたら、あとはこれまでやってきたことを出すだけだ。もちろん全力で勝ちにいくが、勝ち負けよりも今までやってきたことを信じてプレーしよう。そうすれば自ずと結果はついてくる。明日はみんなでいい一日にしよう!」
 前日の全体ミーティングで指揮官はそう言って、選手たちを鼓舞した。キャプテンの植木竜太郎選手が制作したプロモーションビデオもまた、チームの士気を高めるのに一役買っていた。

 そうして迎えた翌日のリコー戦。試合前のチームの雰囲気は非常に良く、秀島監督も自信を深めていた。先鋒役を務めたのは、シングルスNo.2の飯野翔太選手だった。相手の熊谷宗敏選手とは、昨秋の大会で一度対戦しており、勝っていた。その時の試合を振り返り、飯野選手は戦略を練っていた。秀島監督によれば、それは次のようなものだった。
「相手はどんどん前に来るタイプではないので、時には前に出させてリズムを崩そうと。それにエース級をガンガンに打ってくるわけでもないので、先に攻めて先手を取るテニスをしていこう、というふうに考えていました」

 ところが、試合の前半、飯野選手は思うようなプレーができずに苦しんだ。責任感の強さが、彼の動きをかたくしていたのだ。
「自分から攻めていかなければダメだぞ。もっとしかけていこう」
 第1セットの後半、秀島監督はそう飯野選手に発破をかけた。しかし、飯野選手が攻めれば攻めるほど、相手にカウンターを食らい、なかなか勝機を見出すことができなかった。

 結局、飯野選手は1−6、0−6と完敗。次のシングルスNo.1の佐野紘一選手も2−6、3−6とストレート負けを喫した。一度傾いた流れを、引き戻すことはできなかった。
「飯野は絶対に勝ちたい、勝たなければいけない、という気持ちが強すぎたのかもしれません。性格的に責任感の強い選手ですからね。また、相手が非常に好調だったこともありました。しっかりと戦略をたてて挑みましたが、それ以上にいいテニスをされてしまいました」

 秀島監督はそう冷静に分析すると、次のように課題を述べた。
「飯野はポテンシャルはあるのですが、プレッシャーのかかる場面では、なかなか本来の力を出すことができない。今後は、それを克服していかなければいけません。飯野自身も何年かかっても逃げずに取り組んでいく、という覚悟をしてくれていますので、一緒にメンタル面の強化をしていきたいと思います」

 カギ握る“No.2強化策”

 リコー戦での敗戦が大きく響き、決勝トーナメント進出には至らなかった伊予銀行だが、ダブルスでは大きな結果を出した。シングルスで苦戦を強いられたリコー戦を含め、今大会は7戦全勝したのだ。なかでも全7試合に出場した廣瀬一義選手について、秀島監督は成長を感じ取っている。

「廣瀬は性格的に、闘志を前面に出すタイプではありません。彼自身には内に秘めたものがあるのですが、それが表に出てくることはこれまであまりありませんでした。それで日本リーグ開幕前には、チームメイトから『それでは勝てない』と指摘されていたんです。それがいい刺激になったんでしょうね。彼は4年目ですし、年齢的にも下を引っ張っていく立場にある。そのことを自覚したのでしょう。練習でも『こういうことをしたい』というような能動的な言動が目立つようになりました。それが試合にも活きたのだと思います」
 そんな廣選手に指揮官はさらなる成長を期待している。

 とはいえ、日本リーグではダブルスだけで勝利を掴むことはできない。そこで秀島監督は次への対策として、“シングルスNo.2の強化”を掲げている。
「うちとしても佐野のNo.1は強みでもありますが、各チームのNo.1はどこも強い。プロ選手やエース級の選手が出てきますから、そう簡単に勝てるわけではありません。勝率は五分五分といっていいでしょう。だからこそ、No.2のポテンシャルをさらに上げて、ここでは絶対に勝てるようにしたいんです。もし、No.1を取られても、ダブルスに持ちこむことができる。ダブルスは今、どこのチームにも負けない自信がありますからね」

 No.2の筆頭に挙げられているのは、現在のところ飯野選手だ。飯野選手自身も「このままでは終われない。日本リーグの借りは日本リーグでしか返すことはできない。次は絶対に勝ちます」とモチベーションはこれまで以上に高い。その言葉に秀島監督も「結果的に負けはしましたが、次への糧にできるはず」と手応えを感じている。もちろん、No.2候補は飯野選手だけではない。ベテランの植木選手、小川冬樹選手もまだまだ後輩には負けていられないと闘志を燃やしている。さらに4月には早稲田大学から中島啓選手が入行してくる。早大の監督や同期が認めるほど、抜群のテクニックをもつ選手だという。チーム内の競争はより激しさを増すことになりそうだ。

 さらに秀島監督は新プランを提言している。
「これまで国体や日本リーグ以外の期間は、各選手が個人戦を戦い、個々にレベルアップを図ってきました。しかし今年は、チーム戦の機会をより多く設けるつもりです。個人戦とは責任の重さも雰囲気も違うチーム戦での戦い方を選手の頭と心、そして身体にしみこませていきたいと思います」
 伊予銀行男子テニス部の新たな挑戦が始まる――。


◎バックナンバーはこちらから