リーグ戦開幕まで、約2週間となった女子ソフトボール。今季、4年ぶりに1部に参戦する伊予銀行女子ソフトボール部は、着々と準備を進めている。2月の鹿児島でのキャンプ後は、マドンナカップ(3月12〜14日)、岡山オープン(3月18〜20日)と実戦を重ねてきた。果たして今、チームはどんな状態なのか。開幕に向けての手応えと課題を、酒井秀和監督に訊いた。


「走攻守すべてにおいて、昨年よりもスピード、精度はアップしていることは間違いありません」
 現在のチーム状況について訊くと、酒井監督は開口一番、そう言って手応えをつかんでいることを示唆した。

「走塁に関して言えば、例えばレフト前にヒットを打った時、そのワンヒットでいかにチャンスをつくれるか。一塁をまわってスピードを落とさず、隙あらば次の塁を狙う技術が身についてきました。バッティングにおいてもスピードボールにある程度対応することができるようになっていますし、守備範囲も広くなってきています」

 また、今シーズン、酒井監督が選手たちに求めている“プロ意識”についても、手応えを感じている。それは3月、地元松山市で行なわれた第11回マドンナカップでも感じられたという。実業団、大学の10チームが参加して行なわれた同大会、伊予銀行は最終日、リーグ戦でも顔を合わせることになるシオノギ製薬と豊田自動織機と対戦した。

 まず行なわれたシオノギ製薬戦、伊予銀行は0−7という完敗を喫した。敗因は序盤で起きたひとつのミスから始まった失点だった。外野からのサードへの送球が、三進を狙うランナーに当たり、そのまま先制を許してしまったのだ。
「確かにランナーが上手かったのかもしれません。送球のラインにかぶるように走ったということもあるでしょう。しかし、こうした走塁技術は1部では当然あり得ます。やはり受ける側の三塁手が、“ここに投げて”とランナーとかぶらないようなところにミットを構える必要があったのです」
 その回、さらにタイムリーを打たれて一挙に3点を失った。攻撃もふるわず、反撃の糸口さえもつかめないまま、伊予銀行は敗戦を喫したのだ。

 しかし、ここでズルズルと引きずらないのが、今季の伊予銀行の強さだ。試合終了後、次に控えていた豊田自動織機戦に向けて、選手ミーティングが行なわれた。そのミーティングで、具体的にどんな話があったのかは、指揮官は知らない。なぜなら、選手たちの自主的な判断・行動を促し、“プロ意識”を高めるため、選手ミーティングには加わらないようにしているからだ。

 果たして、昨季1部3位の強豪相手に、伊予銀行は1−0で勝利を収めたのである。大敗の後の勝利に、酒井監督は改めてチームの進化を感じたという。
「おそらく選手ミーティングでは、修正点を明らかにし、次のゲームでどうすればいいのかが明確にできていたんでしょうね。選手たちできちんと気持ちを切り替えられたことは、成果のひとつと言ってもいいと思います」

 その試合に先発した木村久美投手はコースをついた低めのストレートとチェンジアップを中心とした配球で、相手に的を絞らせず、まともにスイングさせなかった。そして貴重な1点は、2死無走者からヒットで出塁したランナーを4番・矢野輝美選手のタイムリーで返したものだった。バッテリーが連携して配球を組み立てて相手打線を封じ、数少ないチャンスを主軸がモノにする――。理想的な試合展開だった。

 1部リーグの開幕は4月12日。伊予銀行はぺヤングと対戦する。開幕が迫る中、指揮官の心境はいかに……。
「もちろん開幕戦は大事ですよ。でも、私は22分の1の試合という風に考えています。開幕戦だから、ではなく、他の試合と同じくらい大事だと。私たちは1戦1勝を目指していきます。とにかく目の前にある試合に集中する。一投、一打を無駄にすることなく、自分の役割を果たしていく。それが結果につながっていくと思っています」

 開幕を前に、4月3〜5日にはトヨタオープンに出場する。最後の実戦となる同大会では、これまで積み上げてきたものを出し切り、自分たちの実力をはかるつもりだ。そして、そこで浮き彫りとなった課題を開幕までに修正していく。

「自分たちの力が1部でどれだけ通用するかは、正直言ってやってみないことにはわかりません。でも、ひとつだけ言えることは、チームは確実にレベルアップしているということです」
 1部の戦いが決して甘くないことは、想像に難くない。だからこそ、「やれることは精一杯やってきた」という自信は不可欠である。今、その自信が伊予銀行にはある。


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