愛媛・今治から広島・尾道までを8つの橋で結ぶ“しまなみ海道”を自転車で駆け抜ける国際大会「サイクリングしまなみ」が10月26日に開催された。このイベントは愛媛、広島両県で実施された博覧会「瀬戸内しまのわ2014」のフィナーレを飾る催しとして位置づけられ、約7300人が参加する国内最大級の規模となった。

(写真:普段は通行できない高速道路上を多数の自転車が通り抜けた)
 大会には国内の全47都道府県からサイクリストがエントリー。台湾や韓国、インドネシアなど海外からも参加申し込みがあった。当日は、しまなみ海道内の高速道路を朝6時から6時間にわたって車両通行止めにし、それぞれのレベルに応じて参加者が最長111キロ、最短15キロのコースを走った。

 このビッグイベントを伊予銀行も地元企業としてサポートした。大会には107名の行員が参加。また約90名がボランティアスタッフとして運営を支えた。伊予銀行では昨年3月、行内を中心に自転車愛好者によるサイクリングクラブが結成されており、現在は40名ほどのメンバーがいる。当日は同クラブに所属する会員10名が移動観察員(バイシクルスタッフ)としてコースを走り、参加者の誘導やトラブルなどに対応した。ボランティアスタッフは、ゴール地点のひとつである「しまなみアースランド」の手前で参加者に声援を送る光景も見られ、全員で大会を盛り上げようとする思いにあふれていた。

「サイクリングの魅力を発信し、観光振興、地域活性化にもつながるイベントに行員が協力できたことは、地域貢献の観点からも大きな意義があったととらえています」
 伊予銀行では今回のサイクリングしまなみを、愛媛をさらに元気づける契機にしたいと考えている。この9月には、県が推進する「サイクリング・パラダイス」の民間応援組織として「サイクリング・パラダイスえひめ推進会議」が発足し、伊予銀行も加盟した。

 その取り組みとして、まずは、しまなみ海道でのサイクリングの魅力を約10分間に凝縮したプロモーション映像を制作。県、今治市の協力の下、伊予銀行がアドバイザリー契約を締結している同市のプロライダー・門田基志選手が監修を務めた。「日本のみならず世界にもアピールできる映像を」との門田選手のこだわりもあり、撮影はヘリコプターによる空撮も使った大がかりなもの。伊予銀行のサイクリングクラブのメンバーもエキストラとして参加し、実際にしまなみ海道を自転車で駆け抜ける模様を映像に収めた。
(写真:プロモーション映像の1コマ)

「台湾の人たちに見てもらったら、“日本にこんなすごいコースがあるのか”と驚いていましたね。県内でも講演に呼ばれた際に、この映像を流したら、皆さんが“おおっ、すごい”と声をあげていました。誰がどこで見ても、しまなみ海道が世界に通用するコースだと理解してもらえる内容になったのではないでしょうか」

 門田選手も出来栄えに胸を張る映像は10月23日から「You Tube」で配信され、11月4日からは伊予銀行の全営業店のロビーで放映されている。また、同日からは全営業店で「サイクリング・パラダイス」をPRするポスター(写真)も掲出している。伊予銀行では「You Tubeでのアクセスは1カ月で9000に迫り、大きな反響をいただいています。愛媛県や今治市にも、この映像をサイクリングによる観光振興に活用していただければ」と、制作した映像やポスターを企業の枠を超えて広げたいと考えている。 
>>映像はこちらから(You Tubeのサイトへ)

 伊予銀行では門田選手と昨年10月にアドバイザリー契約を結んで以降、月1回ペースでミーティングを実施。愛媛をサイクリングで活性化するには、どのような活動をすればよいか、助言を受けてきた。その中で出てきたアイデアをもとに「サイクリングしまなみ応援キャンペーン」として、「フリーローン特別金利キャンペーン」を6月2日から10月末まで行った。サイクリング用の自転車やウェア購入、レジャーなど使い道は自由。借入金利を引き下げ、利用しやすくした。

 加えて県が主催し、門田選手が講師役を務めた「アクティブシニアスポーツサイクル体験会」にはボランティアを派遣。9月に県内3カ所で計100名を対象に開かれた体験会では、門田選手を中心にしたスタッフが自転車の乗り降りを手始めに安全な操縦法を指導していった。レクチャー後、実際のロードでサイクリングを行うと、30キロの道のりをほぼ全員が完走できた。

「自転車は正しい乗り方をすれば、健康的で安全な乗り物です。愛媛のシニアの方は“しまなみ海道を走ってみたい”という身近な目標もつくれる。皆が自転車に乗るようになれば、シニア層の元気につながると思っています」
 門田選手は今後もこうした活動を続けていきたい考えで、伊予銀行もサポートを惜しまない意向だ。サイクリングしまなみと合わせて開かれたフォトコンテストの優秀作品を各営業店のロビーで展示するなど、この先もサイクリングの聖地として愛媛をアピールすべくプランを練っている。

 伊予銀行は営業店が県内全域にあり、行員数も多い。「行員向けにも自転車の安全啓発や、サイクリングイベントの紹介や参加の呼びかけなど意識を高める活動をしていきたい」と、さらにサイクリング熱を高め、地域の発展にも寄与する銀行を目指す。
(写真:サイクリングしまなみでもサイクリングクラブの会員が揃いのユニホームで橋上を走った)

 門田選手は「今回のイベントが第一歩。継続して開催することで、しまなみ海道が本当に聖地になる」と訴える。島を渡る船との連携や、沿道のグルメとのコラボ、松山・道後温泉などの観光スポットへの誘引といった広がりを持たせれば、「まだまだ人を呼べるポテンシャルがある」と門田選手は信じている。既にしまなみ海道から四国全体を自転車で巡るパッケージも企画し、海外からも関心を集めているという。

 門田選手は、この10月、マウンテンバイクのジャパンシリーズ富士見大会(10月13日、長野)、クロスカントリーのエリート男子で優勝するなど、プロライダーとしても38歳にして進化を続けている。「選手として海外で得たものを地元での活動に生かしたい」と本人は語る。

「愛媛だけでなく、四国や日本全体を巻き込むことで、しまなみ海道が日本を代表する世界的なコースとして国内外に認知されるはずです。それが愛媛を盛り上げることにもつながる」
 大きな夢に向かって、伊予銀行もともにペダルを踏み続ける。




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