香港はオフシーズンとなり、僕は現地の日本人中学生チームとコーチ役を兼ねて一緒にプレーするなど、来季に向けて体を動かしつつあります。

 本当は家族で旅行にでも行きたかったところですが、子どもたちは学校や幼稚園があり、スケジュールが合いません。子どもたちの休み期間は、逆に僕がシーズン中のため、家族サービスが十分にできないのはやむを得ないこととはいえ、つらいですね。

 そんな先日、うれしい知らせがスペインから届きました。僕が所属していたラス・パルマスが念願の1部昇格を果たしたのです。僕自身、ラス・パルマスでは故障もあり、決して十分な活躍ができたわけではありません。しかし、東日本大震災やW杯など事あるごとに、現地から取材依頼やメッセージが届き、いまだに気にかけてもらっています。

 今回も「メッセージをほしい」との連絡をもらい、快く取材に応じました。早速、「ダビド・シルバ(マンチェスター・シティ)から福田まで」という見出しで記事が載っていましたね。ラス・パルマスは育成出身の多く、育てながら勝利をモノにする理想的なクラブです。僕もいつか、そのシステムを勉強したいと思っています。

 さて、現在所属しているYFCMDはメインスポンサーの撤退により、来季は存続しない可能性が高くなってしまいました。この2年半、僕は家族とともに香港で暮らし、多くの方に支えてもらってプレーができました。皆さんに恩返しするためにも、香港で引き続きプレーすることを望んでいます。実際、いくつかのクラブと交渉をしている段階です。

 YFCMDでの日々を振り返ると、いろいろなことがありました。最初はチームも僕も、なかなか結果を残せなかった状態から、昨季はシーズンで13得点をあげ、今季はチームも上位争いを演じました。若手の成長を間近で感じられたのは本当にうれしかったです。

 個人的には今季、開幕してしばらくゴールが生まれず、苦労しました。しかし、現実から逃げることなく、バリエーションを増やすトレーニングをし、最終的にはハットトリック1回を含む12得点をマークできました。人間、うまくいかない時期にどう過ごし、壁を乗り越えるか。「このままではダメだ」という崖っぷちから盛り返せた経験は、今後の人生でプラスとなるはずです。

 グラウンドを離れても、他の外国人の私生活面で相談に乗ったり、チームメイトとはひとりひとり密な時間を過ごせました。最終戦を終え、仲間からは「また一緒にやりたい」と声をかけられました。僕がやってきたことは間違っていなかった――。互いの信頼関係を最後に実感し、このクラブに所属できたことをありがたく思っています。

 それだけに最後の試合となったAFCカップへの出場プレーオフ決勝、サウスチャイナ戦は何とか勝ちたかったです。結果は1-1のまま延長戦でも決着がつかず、PK戦での敗戦。僕もケガ明けながらスタメン出場し、惜しいチャンスもありました。香港では多い2500人弱のお客さんが応援に来てくれただけに、ゴールで報いることができなかったのは残念です。

 残念といえば、ともに香港でプレーした吉武剛が引退を表明しました。本人は現役続行を希望して、いろいろなチームのテストを受けていましたが、うまく行かなかったようです。僕も37歳になり、今後のことはいろいろと考えます。ただ、「また福田さんのゴールを見たい」と応援していただける人がいる限り、その人たちのためにプレーし続けるのが使命だと今は考えています。

 もちろん、所属チームが決まらないことにはプロ選手を続けることはできません。先が見えないのは正直言って不安です。来季に向けて体づくりをしようにも、気持ちが入らないのも事実です。

 とはいえ、いくら悩んで考えても、動き出さなければ、何も始まりません。どんなにきつくてつらくても、やるべきことをやり、1日1日を堂々と過ごす。現実と向き合い、前に進むしか、壁を打ち破る方法はないのです。たとえ、それが厚い壁の薄皮をはがすような状況に過ぎなくても逃げ出してはいけません。

 だから僕も、現状を真摯に受け止め、明日へ一歩を踏み出すつもりです。また、今後のことが決まったら、このコラムでもご報告します。

 いつも、日本で応援してくださっている皆さん、本当にありがとうございます。これからも応援に応えられる人間であり続けたいと思っています。引き続き、よろしくお願いします。

(このコーナーは第4木曜更新です)
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