愛媛はアウェーでアビスパ福岡、ギラヴァンツ北九州と今季初の連敗を喫してしまいました。さすがに負けが続くと、チームの雰囲気は良くありません。

 ただ、次の試合はすぐにやってきます。次節(15日)のホームゲーム(水戸ホーリーホック戦)で巻き返せるよう、今はチーム一丸となり、勝利を目指して頑張るだけです。

 このアウェーの2連戦はレフェリーのジャッジが、愛媛にとってアンラッキーなかたちで出てしまいました。しかし、勝敗をレフェリーのせいにしていては本質を見失います。

 試合中はどうしても気持ちが入っていますから、不利な判定に感情が高ぶるのは当然でしょう。しかし、そこで感情のまま、自分をコントロールできなければ、決していいボールコントロールはできません。レフェリーの特徴をつかみ、それに応じたプレーを選択するのも選手にとって大切なテクニックです。

 特に福岡戦のレフェリーは審判交流の一環で来日していたパラグアイ人でした。僕のパラグアイでのプレー経験から話をすると、南米のレフェリーは「自分が試合を仕切っている」という意識が強い傾向があります。そのため、選手が異議を唱えることに過剰反応するのです。選手とレフェリーが試合中に会話を交わすことはあまりありません。

 僕がパラグアイに渡ったばかりの頃は、こちらの言葉が拙かったせいもあるのでしょう。「今のはファウルじゃないか?」とアピールしただけで、「ハポネーズ!(日本人)」と呼びつけられ、「オマエ、サッカー分かって言っているのか!」とまくしたてられた経験があります。

 一方、その後、ヨーロッパに渡るとレフェリーは非常に紳士的になりました。「選手とレフェリーはともに試合をつくる」という考えなのでしょう。試合中もよくコミュニケーションをとっています。

 一番、驚くのは明らかなミスジャッジをした時、「ゴメン」と謝ってくるレフェリーがいることです。「謝罪するとレフェリーの権威が下がるから良くない」と感じるかもしれませんが、選手にしてみれば「オレが間違っていない」と態度を頑なにされるほうが、よほどレフェリーへの不信感は高まります。

 むしろ潔くミスを認めてくれたほうが、「次はしっかり見てくれるはず」と信頼できますし、気持ちよく次のプレーに集中できるものです。クラブ数が増えたことで、Jリーグを担当するレフェリーは年々増えています。選手とレフェリーがお互いにレベルアップしながら、いい試合をしていければと感じています。

 さて先日、ロンドン五輪のU-23代表が発表され、マナブ(齋藤学=横浜F・マリノス)が見事、メンバー入りを果たしました。日本のグループリーグ初戦の対戦相手はスペイン。今回の五輪は、このスペイン戦がすべてと言っていいでしょう。

 スペイン相手に互角の戦いができれば、次戦以降も勢いに乗るはずです。逆にコテンパンにやられてしまうと立て直すのは難しくなります。

 僕もスペインに2年半いましたが、彼らは小さい頃から、まさにサッカー畑のなかで育っています。将来を見込まれた選手は10歳頃からマシアと呼ばれる寮に住み、徹底してサッカーのスタイルや哲学を叩きこまれるのです。

 練習では、それに応じて自らがどのポジションで何をすべきなのかを磨いていきます。そのため、どの選手も若くしてサッカーに対するビジョンが明確です。インタビューの受け答えを見ていても、とてもしっかりしています。

 そんな環境で成長した選手たちの集まりですから弱いはずがありません。今のスペインの強さの裏は、こういった育成システムにも要因があるのではないかと感じています。

 U-23とはいえ、日本がスペインに勝つのは簡単な話ではありません。しかし、ここにきてMFティアゴ・アルカンタラがケガで代表を辞退するという話が入ってきました。ティアゴは中盤で攻撃の起点となり、世界最高の司令塔シャビの後継者と目されている選手です。もし、彼が不在となれば日本にも付け入る余地が出てきます。

 スペインと互角に渡り合うためのキーマンは誰か。個人的な期待も込めて、僕はマナブを指名したいと思います。彼のキープ力や突破力は、スペイン相手でもきっと通用するはずです。彼が中盤でアクセントになることで、日本のチャンスは増えるでしょう。

 ぜひマナブには、今回の代表を攻撃でグイグイ引っ張ってほしいものです。それくらいの働きをしてくれないと、こちらもおもしろくありません。彼の頑張りに刺激を受けつつ、僕自身も試合に出て結果を残せるよう、日々、頑張りたいと思っています。

(この連載は毎月第2、4木曜更新です)


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