曇り空からいつの間にか雨が降り始めていた。サウジアラビア戦の会場は、アルラヤンスタジアム。市街地から遠く、建物の少ない砂地地帯のなかにある。サウジアラビアと日本というアジアでは黄金カードなのだが、サウジのグループリーグ敗退が決まっていたため、観客数はまばら。後で発表された観客数は2022人。ちょっと寂しい数字だ。
(写真:記者席から見るサウジ戦ウォームアップの様子)
◇1月17日 「サウジ戦観客数に思わず拍手!?」

 この数字がアナウンスされると、スタジアムのあちこちで拍手が起こっていた。何でだろうと思っていると、カタールが2022年のW杯開催国であることを思い出した。何とまあ、奇妙な偶然。しかし、ガラガラのスタジアムではゴールを決めたところであまり盛り上がらない。練習試合のような雰囲気ながら、日本代表は集中してよく戦っていた。

 試合は5−0の快勝。サウジアラビアに覇気が感じられなかったのは残念だったが、試合を早々と決めた日本代表には力強さを感じた。岡崎慎司選手の活躍は目を見張るものがあった。出場停止の川島永嗣選手に代わって出場した西川周作選手は「ゼロにこだわっていたので、それを達成できたのはうれしい」と責任を果たしてホッとした表情を見せていた。

 松井大輔選手は右大腿のケガのため、この試合を最後にチームから離れた。主将の長谷部誠選手たちに「頑張ってくれよ」とメッセージを残したそうだ。アルベルト・ザッケローニ監督も上機嫌で会見だけでなく、ミックスゾーンの取材にも応対した。チームづくりは順調に運んでいるようだ。


◇1月18日 「どうしても探してしまう“アルコール”の文字」

 この日も雨。先輩のライターさんたちと近くのレストランで、昼食を取った。いつもはアパートメントタイプのホテルで自炊生活を送っているだけに、久しぶりの外食だ。イスラム教の戒律で断酒の日々が続いているが、レストランに入るとどうしてもアルコール類を探してしまう。絶対にないと分かっているのに……。

 インド料理を含めたアジア料理のレストランだったので、チキンのピリ辛ソース炒めやビーフのカリカリ炒め(そんなイメージ)を注文。ドリンクはまたしてもダイエットコーラやセブンアップしかない。こんなにコーラを飲む毎日を送るのは、高校以来だ。30分待たされたものの、食べた料理はうまかった。これにビールがあれば、と思いつつ、コーラを喉に流し込んだ。コーラとライス、うーん、この組み合わせはやはり今ひとつだ。

 聞くところによると外資系のホテルであれば、レストランでお酒を注文できるそうだ。しかし値段はかなり高いとのこと。市内のレストランでは10〜20QR(230円〜460円)ほどで食事が取れるが、外資系ホテルの酒代となるとワイン1本(小瓶サイズ)で80QR(1840円)ほどかかるという噂。こちらでの物価を考えれば、かなり高額だ。

 日本もグループリーグを突破したし、そろそろ外資系のホテルに足を運んでみようかなあ、と思うきょうこのごろである。

(このレポートは不定期で更新します)

二宮寿朗(にのみや・としお)
 1972年愛媛県生まれ。日本大学法学部卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、サッカーでは日本代表の試合を数多く取材。06年に退社し「スポーツグラフィック・ナンバー」編集部を経て独立。携帯サイト『二宮清純.com』にて「日本代表特捜レポート」を好評連載中。