柳本さんの写真2二宮: 2杯目はそば焼酎『雲海 黒麹』をソーダ割りでいただきましょう。

柳本: 飲みやすくて美味しいですね。ソーダ割りは体にやさしい感じがします。

 

 

二宮: まだまだ、たくさん残っています。

柳本: ありがとうございます。温かい蕎麦湯で割って飲んでも美味しそうですね。

 

リーダー2人制

 

二宮: 近年、女子アスリートの活躍が目立ちます。柳本さんが女子チームを率いる上で苦労したことは?

柳本: 女性の集団には目に見えない序列が存在します。チームをうまくまとめるには、2人のボスをつくることが大事なんです。それも違った個性を持つ2人です。

 

二宮: リーダー2人制とは興味深い話ですね。

柳本: 東洋紡の監督時代、2トップにはセンターの吉原知子とセッターの永富有紀を起用しました。吉原は突っ走るタイプで、永富は周りの話を聞けるタイプでした。最初はこの2人は仲がよくなかった。しかし、元々同じチームでプレーしていたこともあり、お互いのことをよく分かっていた。練習終わりにサウナに行ったりして徐々に距離が近くなったようです。

 

二宮: なるほど。

柳本: 僕はチームを変えるために、選手たちに理不尽なことも言いました。「(自分の限界の)20センチ先のボールを取れ」とかね。取れるわけないと分かっていても発破をかけるんです。

 

二宮: 限界に立ち向かう姿勢が大事だと?

柳本: ええ。理不尽なことを言った時に、1人だと「やれません」となる。でもね、2人だと意識し合うから頑張るんです。「監督、ふざけんじゃないよ」などと文句を言いながらも、“頑張ろう”となるわけですよ。

 

二宮: ライバル心が相乗効果をもたらすわけですね。

柳本: そうです。なので、タイプが正反対な2人がトップにいた方がうまくいくんです。

 

二宮: 全日本を指揮した時にもリーダー2人制でしたね。

柳本: 吉原と竹下佳江です。ボールを上げるセッターにとって(距離的に)センタープレイヤーが一番近いじゃないですか。両サイドだったら少々トスがぶれていても打てますが、センターが打つ速攻だけはセッターからしか上がらない。

 

二宮: ここのポジションはチームの軸ですよね。

柳本: そうです。そして2トップを抑えることができる高橋みゆきのようなキャラクターもまた必要になってくるんです。吉原と竹下は真面目だから、一緒に飲んだらどんどん技術論になって息苦しくなりますからね(笑)。その時に高橋が「しょうちゃん1杯!」と輪に入ってきて和ませてくれるんですよ。3人のうち誰かが欠けてもアカンかったですね。でも、あくまでも軸は吉原と竹下の2人ですよ。

 

デコメールも使用

 

160202柳本さんソーダ割り飲んでる正面から(加工済み)二宮: 男性の指導者が女子選手と上手く意思疎通を図るには、独自のスキルが要ると思われます。

柳本: 僕は東洋紡で初めて女子チームの監督に就任した時に失敗しているんです。9月に入社したので、シーズン途中で監督に就きました。当時のメンバーには、ロシア代表のエフゲーニャ・アルタモノアといったワールドクラスのエースや全日本経験者もいました。

 

二宮: 錚々たるメンバーでしたね。

柳本: 翌年も僕は監督を託されていたので、1年目のシーズンを終えて休暇に入る前に、翌シーズンに向けて選手とカウンセリングしたんです。選手の中には「こんな短期間のうちに、そこまで私のことを見ていてくれたんですか?」と、涙を流す子が何人もおったので、手応えを感じていたんですよ。しかし、1週間の休みが明けたら4人しか残っていませんでした。

 

二宮: たった4人ですか!?

柳本: はい。既に3人の入社が決まっていたので、7人で行動しました。この年にVリーグを制して日本一になるのですが、僕は選手たちとのコミュニケーションの取り方を学びました。人数が少ないことも幸いして、ひとりひとりを一生懸命見ることができたので、個々の些細な変化を見逃さなくなりましたね。

 

二宮: 具体的にはどういった点を?

柳本: 例えば、選手が服装や髪型を変えてきたら声をかけるんです。「おぉ! オマエ髪の毛切ってきたな。良く似合っているな」と。男の世界では、そんな話はしないけど、女の世界ではそういうことが言えるんです。メールのやり取りでも、男同士だと「柳本は新地に何時に行く。新大阪には何時に着くから」と、必要最低限の文字だけで済みます。しかし、女性には絵文字やデコメールなど使わなければいけません。

 

二宮: 柳本さんも絵文字を使いましたか?

柳本: はい。動くデコメールとかも使いましたよ。この僕がやれたんです(笑)。

 

二宮: アハハハ。

柳本: さらに言えば男と女では成長の仕方が違います。選手の伸びしろを階段に例えると、男性は直線階段です。1、2、3と上り、途中で停滞したとしても、何かのきっかけがあれば4、5、6と次の階へと進んで行く。しかし、女性の場合は螺旋階段。上っていって、“ヨッシャ!”と思っていたら、次の日には元に戻ってしまう。ギュッと伸びることがないんですよ。

 

二宮: 女性は時間がかかるんですね。

柳本: そうです。順調に成長していても、時には戻ってしまうことがある。だから指導者には辛抱が必要なんです。

 

飲みニケーションで心を掴む

 

160202柳本さん2横長(加工済み)二宮: お酒で選手とコミュニケーションを図ったことは?

柳本: ありますよ。僕は全日本の監督に就任したばかりの頃、体育館の光景にびっくりしたんです。選手たちは企業のチームごとに固まっていて、他のチームの選手と交わろうとしない。これは、えらいことだなと思いました。

 

二宮: そこでアルコールの力を借りたと?

柳本: はい。チームの中心だった「吉原・竹下・高橋」の3人の気持ちを掴むために一緒に飲みに行きました。彼女たちはお酒が好きなんでね。その時に僕の思いを3人に伝えたら「分かりました。監督がそこまで言うんだったら頑張りましょう」と、言ってくれましたよ。

 

二宮: いわゆる“飲みニケーション”ですね。

柳本: ポイントポイントで、飲みニケーションをとりましたね。その時は酒がだいぶ助けてくれました。時には選手から「監督、今日も飲みに行くんですか?」と言われることもありましたよ。「オマエらのために飲んでいるねん!」と返しても、「またまた。そんなことないくせに」と、酷いですよね(笑)。

 

二宮: アハハハ。

柳本: 選手たちには「今日はこんな嫌なことがあって、上手くいかなかったことがいっぱいあったやろう。明日もそんな顔をしている皆を見たくないやろう。だから、その日に切り替えに行くんだよ。“酒は今日と明日の曲がり角”や」とよく話しましたね。

 

二宮: うまいことを言いますね。

柳本: あとは、監督に就任してすぐロシア遠征に行った時に、ホテルの部屋割りを工夫して、一番奥に「しょうちゃんラウンジ」を作ったんです。夕方から開放しておいて、選手が自由にコーヒーやお酒を飲めるようにしました。

 

二宮: しょうちゃんラウンジとはいいネーミングですね。

柳本: 「今日はしょうちゃんラウンジで1杯飲もうよ」と選手に声をかけて、そこでコミュニケーションを取りましたよ。酒を飲ますのが善人というわけじゃないですが、そういうことは大切にしました。

 

3つの切りが大事

 

柳本さんの写真二宮: 指導面で、気をつけたことは何でしょう?

柳本: 僕は「教えられたものは忘れる、盗んだものは忘れへん」と伝えました。これは自分の現役時代の経験に基づいているんです。僕は新日本製鐵(現・堺ブレイザーズ)で日本一を何度も経験していました。しかし、代表ではセッターのポジションに猫田勝敏さんがおるから使ってもらえへんのです。

 

二宮: 猫田さんは1972年ミュンヘン五輪の金メダリスト。世界一のセッターと称されていましたもんね。

柳本: 僕も最初は頑張っていましたが、補欠の状況が長く続いたら性格も変わってくるんです。猫田さんに対して、朝起きた時に“怪我しろ、怪我しろ”と、心の中で思っていましたよ。しかし、猫田さんは学生時代から僕を可愛がってくれていたので、その状況を見かねて食事に誘ってくれたんです。その頃は猫田さんのせいでフラストレーションが溜まっていたので、“何かあったら言ってやろう”と思って気合いを入れて行きました。ところが、情けないね。お腹がいっぱいになったら、ちょっと落ち着くねん。気持ちが(笑)。

 

二宮: アハハハハ。

柳本: その時に猫田さんが「晶一、どんな人間もええ環境でやっていても、いつかは訓練の時期がある。人間は最大で120点までしか伸びない。でもな、世界と戦うには150点いるんだよ」と言ってきたんです。当時の僕は、バレー漬けの生活を送っていたのに、まだ30点足りないと言われたんです。

 

二宮: 残りの30点は何だったのでしょう?

柳本: 「人間力」です。人生は理不尽なことや人間関係のトラブルなど想像もしないことが起きます。それらを乗り越えて身につけた30点があって、ようやく120点が光るんです。なので、どちらかが欠けてもあかん。猫田さんの言葉で、僕はハッと我に返りました。それまで、猫田さんと自分を比べてばかりいたんです。例えば6時間ある練習の中で、僕には最後の15分しか、練習時間が与えてもらえない。「なんでオレが15分なんやねん」とばかり思っていました。

 

二宮: 要するにプライドが邪魔をしていたと?

柳本: 日本一というプライドがあったので、“全日本の柳本”に成長していく努力をしていなかった。猫田さんの話を聞いて、今からでも遅くないからリセットしようと割り切りました。その瞬間から、「オレは15分も練習させてもらえる」と考え方を改めて、与えられた時間をものすごく大切に使うようになりました。

 

二宮: なるほど。発想の転換ですね。

柳本: 僕はレギュラーではなかったから、練習中はほとんどコートの外にいた。まずはコート外にこぼれてきたボールを拾う確率を日本で一番にしようと思ったんです。スパイカーが飛ぶ前のクセも勉強しましたし、一歩でも早く動き出してとるようにしたんです。クセはすぐには覚えられないので必死にメモを取りましたよ。その努力が実り、75年に日本リーグでレシーブ賞を獲得できました。

 

二宮: 柳本さんご自身も挫折を糧にしたんですね。それが全日本女子監督の指導に生きたと?

柳本: そうですね。落ち込んでいても何かのきっかけで踏み切れば、必ず挫折や失敗をいい経験に代えることができるんです。なので、落ち込んでいる選手には“踏み切り、割り切り、思い切り”が大事だとよく言いました。僕みたいに踏み切って経験に変えて、割り切ることで見えてくるものがあります。そして、自分の思いを切る(断つ)んです。あとはノリでダーッと、思いっ切りやればいいんですよ。

 

二宮: 3つの“切り”が大切なんですね。美味しいお酒を片手に、柳本さんの指導論を聞いていたら、あっという間に時間が過ぎてしまいました。

柳本: 久しぶりに、美味しいお酒で、有意義な時間が過ごせました。二宮さん、今度は大阪の新地で一緒に飲みましょう!

 

160201プロフ(加工済み)<柳本晶一(やなぎもと・しょういち)>

1951年6月5日、大阪府出身。現役時代のポジションはセッター。全日本代表としても活躍し、74年アジア大会優勝、同年世界選手権で3位、76年にモントリオール五輪で4位入賞に貢献した。80年から新日鐵選手兼監督となり、82年に日本リーグで優勝。91年に現役を引退し、監督専任となる。97年に東洋紡オーキスの監督に就任すると、2年目にチームを優勝に導いた。03年に全日本女子代表監督に就任。翌年のアテネ五輪世界最終予選で2大会ぶりに五輪出場を決めると、本大会では5位に入賞した。2大会連続で出場した08年北京五輪に出場でも5位に入った。同年、全日本の監督を退任。現在は10年に関西を拠点に五輪出場経験者らで「アスリートネットワーク」を立ち上げ、次世代にスポーツの魅力を伝えていくなど幅広く活動している。

 

 今回、柳本さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海 黒麹」。自然豊かな宮崎・五ケ瀬蔵で、伝統の黒麹、九州山地の清冽な水で造り上げた本格そば焼酎です。爽やかさの中に、すっきりと落ち着いた香り。そしてまろやかでコクのある味わいと、キレのあるのど越しです。ソーダで割ることで華やかでスパイシーな香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>
イタリアンレストラン Kamiya

東京都新宿区三栄町6 第一原嶋ビル1F
TEL:03-5379-6628

 

営業時間:
ランチ   11:30〜14:00
ティー   14:00〜16:30
ディナー 17:30〜23:00(L.O.22:00)

 

サイン写真☆プレゼント☆

柳本さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海  黒麹」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「柳本さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は3月11日(金)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、柳本さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成/安部晴奈、写真/大木雄貴)


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