(写真:新宿中央公園での『TOKYO outside Festival』で早速チビッコたちからパワーをもらった)
「新宿でのイベントで、ミヤマ☆仮面の復活宣言をしようと思う」
僕のこの意見に家族は少し困惑していた。まだ抗がん剤治療の最中というのがその理由だった。主治医からの正式なゴーサインが出ていたわけではないので、僕も不安がないと言ったら嘘になる。だが、人前に出ることによって、自然治癒力が上がってくると思ったのだ。
何よりもチビッコたちが持っているあの元気パワーは絶大である。きっと免疫力が活性化するに違いない。僕は、インフルエンザなどが流行する冬場はおとなしくしていたが、春の声を聞いて決心を固めたのであった。
「立ち上がるには、このタイミングしかない」
1年前のこのアウトドアイベントから募金などの僕への支援活動が全国に広がっていった。その出発点の場所で復活宣言するのが最高のシナリオだと考えたのである。決して焦っているわけではないが、元気が売りの元レスラーとしては1日も早く闘病のイメージを払拭したかった。
『カッキー応援隊』のメンバーの協力を受け、3月27日の新宿中央公園でのイベントにて「復活宣言」をさせてもらうことが正式に決まった。
イベント当日の朝、僕はキャンピングカー『ミヤマ☆仮面号』でイベント会場へと向かった。寒暖差のある季節だけに屋外のイベントはカラダに堪えるため、キャンピングカーを控え室として活用させてもらうことにした。この日の朝は肌寒かったので、テントの控え室では厳しかったと思う。それに食事療法をやっている身としてもキッチンが装備してあるので、その部分でもストレスは軽減できる。僕のコンディションを考えるとキャンピングカーほど有難い乗り物はない(写真)。
車内で玄米を炊いているとノックする音が聞こえた。
「カッキー、調子はどう?」
キャンピングカーの窓越しに顔が見えたのは、UWF時代の先輩・山崎一夫さんだった。
山崎さんのあの優しいスマイルを見て、一気に緊張がほぐれた。僕が「やまちゃん」Tシャツを着ているのを目にするとモゾモゾと上着を脱ぎ始めた。
「オレも着てるよ~ん」と言いながら、なんと僕の応援Tシャツを見せてくれたのだった。
1年前に着ていた応援Tシャツをこの日も身に着けてくれる心配りが何とも嬉しい。ここまで後輩に気を使ってくれる先輩は山崎さん以外にいないと思う。UWFにいたことを心から感謝である。しばらくすると金原弘光選手や高山善廣選手といった元Uインターの後輩たちが続々と駆けつけてくれた。
高山選手は、4月17日からスタートしたフジテレビの新ドラマ『OUR HOUSE』にレギュラー出演しているため、連日ドラマの収録で忙しい。その合間を縫って来てくれたのだが、その風貌にビックリ。なんと自慢の金髪ヘアーを黒に染め、肩まであった長髪もバッサリと切っていたのだった。役柄のためとはいえ、このイメージチェンジには正直驚いた(写真<後列左から5番目>)。
「連ドラだから、かなり大変でしょう?」
僕の言葉に苦笑いを浮かべていたが、それもそのはず。主演は、天才子役の芦田愛菜とNHK連続テレビ小説『マッサン』のヒロインを演じ、一躍知名度を上げたシャーロット・ケイト・フォックスだ。
現場では蒼々たる役者陣に囲まれ、演技をしていかねばならないのだから、精神的にかなりハードだと推察する。デビューしたてのグリーンボーイがメインの試合に抜擢されたような状況なのかもしれない。しかし、そこは帝王。リングを降りてもまさに“ノーフィアー”だった。
後日、家族でそのドラマの放送を視聴したが、予想していた以上に出番が多い。演技もお世辞抜きに良かった。やはりプロレスの頂点を極めた男はどんな状況下でも輝くことができるのだ。現場の空気を瞬時に察知し、求められている事に応える能力が長けているからだろう。ミヤマ☆仮面に彼の爪の垢でも煎じて飲ませたいものである。
「新たな世界に臆することなくチャレンジする姿はカッコイイよね?」
僕は自分を諭すように一緒に観ていた娘に向かって話しかけた。
「わたしも高山さんのように芸能界で色んなことに挑戦したいな」
ドラマに釘付けになっていた娘も高山選手に大きな刺激を受けたようだった。
新たな挑戦をしているのは彼だけではない。金原選手も整体師の免許を取るために頑張っている。新宿でのイベント当日は、国家資格の合格発表を翌日に控えていたためか、どこかソワソワしているようにも感じた。
「ドキドキですが、たぶん合格していると思いますけどね」
強心臓の金ちゃん節が聞けて安心した。
この春から巣鴨に治療院を開くのは、総合格闘技「修斗」で活躍した桜井“マッハ”速人選手だ。彼もその準備の合間を縫って、イベントにわざわざ顔を出してくれたのだった。
他にも総合格闘家の菊田早苗選手やパンクラスの伊藤崇文選手、元リキプロの和田城功選手など多くの仲間がステージに集結してくれた。僕の復帰宣言ごときに、ここまで選手たちが集まってくれて感謝感激である。
「応援してくれている皆さまのお陰でここに帰ってくることができました」
クワガタ忍者に扮した息子がステージを盛り上げてくれたところに、ミヤマ☆仮面のマスクを被った僕が登場した。アイドル『バクステ外神田一丁目』として娘も脇を固めてくれた。まだスタート地点に立ったばかりだが、1年前を思い出すと本当に信じられない。
「試験的ではありますが、4月23日の昆虫イベントから活動を再開していきます」
たくさんのチビッコたちや関係者を前にして、僕は何とも言えない感情が込み上げてきた。
「もう、時計を止めたくない」
小さくても一歩一歩、着実に前進していくつもりだ。
(このコーナーは第4金曜日に更新します)
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