愛媛FCサポーターにとって、ダブルヘッダーだった。

 5月21日(日)は、愛媛県総合運動公園内にて愛媛FCレディースの試合と愛媛FCトップチームの試合が組まれた。

 

 レディースは県総合運動公園球技場にて午後1時から、トップチームは隣接するニンジニアスタジアムにて午後4時キックオフというスケジュール。タイトな連戦を控え、サポーターも気持ちが高まる。

 

 この日に向けて、およそ3週間前から、集客活動が活発に行われていた。愛媛FC事務局主催による街頭でのチラシ配りに、大勢のサポーターたちがボランティアとした。3000枚近くの(ホームゲーム開催の)告知チラシが松山市を中心にショッピングモールでも配布され、人々にスタジアムへの来場を呼び掛けた。

 

 当日のトップチームの対戦相手が名古屋グランパスということで、街を往来する人々の関心も高かった。チラシを手渡す度に、「名古屋とやるの! 凄いね!」「有名選手が来るの? 観に行きたい!」など声を掛けられ、面識がない方々との会話も弾んだ。

 

 愛媛FC事務局はチラシ配りに加え、イベントやテレビでの告知も行った。少し過剰と思うほどの広報活動を行ってきたが、それには訳がある。4月頃からホームゲームの観客動員数が若干だが、落ち込み始めているのだ。「1試合の平均観客数5000人」という今季の目標を掲げている中、現状として平均が4000人を割り込んでいた。現状打破のためには、もっと大胆なアイデアや努力が必要だった。

 

 選手たちはピッチの上で必死に頑張っている。集客の問題に関しては、私達サポーターも危機感を持って、クラブと一緒に取り組まなくてはならない。

 

 多くの人たちの、色々な準備の甲斐もあり、迎えた試合当日。好天にも恵まれ、お客様の出足も好調だった。2017プレナスなでしこリーグ2部の第9節「愛媛FCレディース対FC吉備国際大学Charme」の一戦には、ホームゲーム今季最多の600人を超える観客が会場へと詰め掛けた。

 

 試合は、FC吉備国際大学Charmeのキックオフでスタート。前半15分に敵のセットプレーから失点し、苦戦を強いられる愛媛FCレディース。それでも後半に入ると、相手のプレッシャーにも慣れ、積極的に攻め込む姿勢を見せ始める。後半21分、右サイドのMF山城見友希選手からゴール前に向けてロビングのパスが供給される。このボールを捉えたのは、FW上野真実選手。敵DFを背後から抜き去り、ペナルティーエリアへと侵入。バウンドするボールへ上手くタイミングを合わせ、右足を振り抜いた! ボールは敵ゴールマウスに突き刺さり、同点に追いつく。

 

 その5分後、今度は、右サイド深くまでボールを持ち込んだMF西川早弓選手からのグラウンダーのクロスをFW大矢歩選手が捉える。相手DFに身体をぶつけられ、体勢を崩しつつも大矢選手は踏ん張り、シュートを放った。ボールはGKの足元を擦り抜け、見事ゴールイン!

 

 最終スコア2-1で、愛媛FCレディースが痛快な逆転勝利を収めた。取るべき選手が得点し、勝利してくれた今節。連勝ということもあり、チームは上り調子だ。今後のリーグ戦や間もなく始まるカップ戦でも活躍が期待できそうである。

 

 一方、J2第15節の「愛媛FC対名古屋グランパス」の一戦は、なでしこリーグ2部の試合終了の1時間後にスタートした。告知活動の甲斐もあり、観客数はホームゲーム今季最多となる7863人の大観衆がニンジニアスタジアムへと集結した。試合は、3連勝中の愛媛FCのキックオフでスタート。愛媛FCは序盤から相手に押し込まれるシーンが続き、苦しい立ち上がりだった。

 

 防戦が続く中、ロングフィードやカウンター攻撃を駆使して打開を図る。前半27分、敵陣中央でボールをキープするFW河原和寿選手が、ペナルティーエリアへ浮き球のパスを供給。相手DFラインの裏へと抜け出したFW近藤貴司選手が、このボールをワントラップで足元に収め、素早く右足を振り抜いた! ボールは敵GKの脇をすり抜け、見事ゴールイン。愛媛FCが先制点を奪取した。

 

 スタジアムが大歓声に包まれる。近藤選手を称えるチャントが鳴り響く! 先制ゴールにより、優位に試合を進められるかと思ったが、名古屋も黙ってはいなかった。前半終了間際に同点へと追いつかれ、後半15分には逆転弾を決められてしまった。

 

 それでも、諦めず必死に反撃を試みる愛媛FC。あと少しで得点という惜しい場面も何度か訪れたが、2点目が遠かった。アディショナルタイムに突入し、敵陣内へと攻め込んだところで、無情にもタイムアップ。最終スコア1-2で、愛媛FCが惜しくも敗れ、4連勝とはならなかった。

 

 悔しい気持ちもある。だが、試合後のサポーターから悲観的な言葉はあまり聞こえてこなかった。強敵を相手に良く戦えていたし、先制点を奪ったことで、「客観的に観て、試合も面白かった』と感じた観客も多かったようだ。

 

 大勢のお客様が来場された今節。初めて愛媛FCの試合を観戦された方も多かっただろう。この中で今後、リピーターとしてスタジアムへと足を運んでいただける方がおられるなら、本当に有り難いことである。

 

 これまで行ってきた集客活動に、一定の効果はみられるものの、まだまだ、平均観客数の目標値には達していないのが現状である。問題を後回しにはせず、サポーターという立場からも、新たな集客の活動へと取り組んでいくべきだろう。

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja

Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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