170623kakihara1 マッチメークを考えるのは楽しい。

『カッキーライド』(8月14日、後楽園ホール)の試合カードを決めている時間は至福の時だ。

 

 テーマは「UWFの世界観」であるため、出場する選手は限られてしまうが、それでも知恵を絞れば夢のカードは作り出せる。出場交渉から行なうのでやりがいがある。

 

「新生UWFの風を届けるには、船木(誠勝)さんと鈴木みのるさんは外せない」

 当時、ハタチだった2人が、新日本プロレスからUWFに移籍したのを専門誌で知った時の衝撃は凄かった。UWFに未来への光が差し込んできたように思えたのである。

 

「UWFはもっとスゴイことになる」。10代だった僕は更にUWFに熱狂し、自分の進む道を決めたのだった。

 

 その後、17歳でUWFの門をくぐると、この2人から公私共に多大なる影響を受けことになる。

 道場でのスパーリングでは、ボロ雑巾になるぐらいシゴかれたのだが、そのお陰で強くなれた。

 

 ひとつUWFの道場で心残りがあるとするならば、“関節技の達人”藤原喜明選手とスパーリングができなかったことだ。自宅が遠方であったため、藤原さんはめったに道場に現れなかったのである。

 

 前田日明さんをはじめ、UWFのほとんどの選手を育てた超一流の鬼教官とスパーリングをやれなかったことが、ずっと心に引っかかっていたのである。

「UWFの頃の忘れ物を取りに行く」。これを実行すべく、前代未聞の『道場スパーリングマッチ』が決まったのであった。

 

「オープニングマッチで藤原さんの胸を借り、ここから第二のプロレス人生のスタートにしよう」

 体重差は30kg以上もあるうえ、相手は今も現役バリバリ。リタイヤしていた自分が簡単に攻略できる相手ではないが、「同じ病で苦しんでいる方たちの希望の光」になるためにも全身全霊でぶつかっていこうと思う。

 

「今できるベストを尽くそう」。緊張と恐怖心が交錯し、現役だった頃のあの感覚が蘇る。

 高みを目指し、毎日を過ごすことなど闘病中にはなかっただけに今は幸せな気分でいっぱいだ。人生をかけた一戦に注目してもらいたい。

 

 さて、第2試合のカードは、船木誠勝vs.田中稔戦だ。

 新生UWFの頃、ボクシング技術を取り入れたファイトで、上の選手を次々と葬り去っていく船木選手は、とてつもない輝きを放っていた。あの掌底が爆発したら後楽園ホールが大変なことになるだろう。

 対戦相手の田中稔選手は、UWFへの思い入れが強い選手でもあるので、きっとスイングすると思う。

 

 続いての第3試合は、『ミスターUWF』こと中野龍雄(現・たつあき)の登場だ。

 文句なしにUWFワールドを演出してくれるに違いない。かつてのUWFの空気を真空パックに閉じ込め、それを全身にまとっている選手だからだ。対戦相手もこれまた“UWF馬鹿”と言ってしまうほどのU信者ファイター中村大介選手だ。彼は総合マットでも実績があり、最先端の技術を持ち合わせているだけに2人の試合がどんな化学反応を起こすか楽しみである。

 

 第4試合に出場するのは鈴木秀樹選手と野村卓也選手だ。大日本プロレス提供マッチの様相を呈しているが、ここはカッキーライドのリング。当然ながらUWFルールでやるだけに打撃が出来る若い野村選手にもチャンスがある。一方、鈴木秀樹選手は、この世界に入るきっかけが宮戸代表のUWFスネークピットだけにグランド技術はピカイチだ。

 

 師匠は僕と同じビル・ロビンソン先生でもあり、テクニックの引き出しをどれだけ見せてくれるのか個人的にも注目している。余談だが、近年見た試合で一番印象に残っているのが、鈴木秀樹選手のタイトルマッチだ。今年3月、後楽園ホールでの関本大介選手とのBJW認定世界ストロングヘビー級選手権試合を見た後には、思わず立ち上がって拍手してしまったほど興奮した。

 

 昭和レスラーの風格を兼ね備え、独特の世界観を持つ鈴木選手がマット界の頂点に君臨する日も近いと思う。

 

 セミファイナルは、鈴木みのる選手とロッキー川村選手の一戦だが、師弟対決だけに遠慮なしの激しい試合になるだろう。鈴木みのる選手は現在、新日本プロレスのNEVERのベルトを巻いているが、ロッキー選手もパンクラスの王者である。プロレスと総合のチャンピオンが対戦する試合は珍しい。お互いのジャンルを背負っての対決は、意地とプライドがぶつかる壮絶バトルになると思う。

 

 メインは大注目の異色カードである。

 トリに登場するのは、新生UWF時代の同期生である冨宅祐輔選手だ。

 UWFの後は、藤原組からパンクラスで活躍し、現在はインディマットでプロレスを続けているのだが、もっと輝ける選手だということを同期の自分が一番知っている。おそらく本人は謙遜するが、あの藤原さんをスパーリングで極めたこともあるほどの実力者なのである。

 

 対するは“プロレスの天才”丸藤正道選手もグラウンド技術に自信のある選手だ。レスリング出身だけにベースはしっかりしており、かつて格闘技団体キングダムのプロテストを受けたことがあるほど格闘思考が強い一面を持っている。UWFルールで闘う丸藤選手の姿を観て、驚くファンもきっと多いことだろう。

 

 このように見所満載のカッキーライドだけに会場での生観戦をオススメしたい。間違いなく心に残る大会になると思う。来てくれたお客様に闘いを通じて『生き様』を伝えるつもりだ。

 

(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)


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