平昌五輪スノーボード男子ハーフパイプ決勝が14日、行われた。予選3位だった平野歩夢(木下グループ)が95.25点で2位に入った。15歳で臨んだ前回大会ソチ五輪に続く銀メダルを獲得した。日本勢では3回目に87.00点を出した片山来夢(バートン)が7位入賞。1回目39.25点だった戸塚優斗(ヨネックス)は2回目に激しく転倒し、起き上がれずに担架で搬送。3回目は棄権した。

 

 3回滑走し、そのなかの最も高いスコアで順位が決まる決勝は、予選を通過した12人によって行われた。金メダルの期待がかかる平野は1回目に転倒し35.25点に終わったが、2回目に真価を発揮した。最初のエアで5.5メートルの高さを記録する。続いて縦に2回転、横4回転する大技「ダブルコーク1440」の連続技に成功。95.25点という高得点を叩き出し、2回目を終わった時点でトップに立った。

 

 しかし予選を首位通過したトリノ、バンクーバー五輪金メダリストのショーン・ホワイト(米国)が3回目に97.75点をマークし逆転。2大会ぶり通算3個目となる金メダルを獲得した。世界王者のスコッティ・ジェームズ(豪州)が92.00点で銅メダルとなった。

 

 3回目のランで転倒していた平野は、逃げ切りを信じてホワイトの試技を見守ったが、金メダルの夢は叶わなかった。2大会連続での銀メダル獲得となり、日本スノーボード界で初めて複数メダルを手にした選手となった。

 

 平野は試合後、「前回も銀メダルで上を目指すために4年間練習してきたので悔しさも残ってますけど、自分のできる範囲では全力でやれたのかなと思います」と笑顔を浮かべた。「(ホワイトとジェームズと)3人で争って、今までで一番の大会だったんじゃないのかなと思います」と2度目の五輪を振り返った。力を出し尽くして戦い抜いた充実感が、その姿にはあった。

 

 銀メダルの原動力となった「ダブルコーク1440」は、昨年3月に行われたアメリカのプロ大会で平野が負った大ケガの原因となった最高難度の大技である。平野はこの技に挑み転倒。左ヒザ靭帯と肝臓を損傷し、約2カ月間をリハビリに費やした。

 

 その後は恐怖心との戦いであった。ケガのシーンが脳裏によみがえり、持ち前の攻めの姿勢が消えてしまった。ヒザの痛みは消えても、4回転を飛ぶことができなくなっていた。

 

 平野の背中を押したのは、ライバルのホワイトだ。ホワイトも昨年秋に転倒し、顔面を62針も縫う大ケガを負っていた。だがそんな苦境をものともせず、12月にアメリカ・コロラド州で行われたワールドカップで代名詞である縦2回転横3回転半の「ダブルマックツイスト1260」を披露し復活を果たした。その姿に刺激を受けた平野は、徐々に本来の感触を取り戻していった。そして本番となる平昌の舞台でも、見事空高く4回転の連続技を決めたのだ。最後はホワイトに逆転を許したものの、平野の魅力を存分に世界にアピールした。

 

 己の中の恐怖に打ち勝ち、強敵と相まみえて掴んだ銀メダル。色は前回ソチ五輪の時と同じだが、その重みはまた格別であるはずだ。

 

(文/交告承已)