平昌五輪ノルディック複合個人ノーマルヒルが14日に行われ、渡部暁斗(北野建設)が2大会連続となる銀メダルを獲得した。エリック・フレンツェル(ドイツ)が2大会連続の金メダルに輝き、ルーカス・クラプファー(オーストリア)が銅メダルとなった。日本勢は渡部善斗(北野建設)が12位、永井秀昭(岐阜日野自動車)が14位、山元豪(ダイチ)は33位でレースを終えた。

 

 メダル争いが有力視された世界の強豪たちの多くが強風の影響で距離を伸ばせない中、最終ジャンパーだった渡部は冷静に実力を発揮した。渡部は前半のジャンプでヒルサイズに3.5メートルと迫る105.5メートルを飛び、123.7点で3位につけた。これによりジャンプで首位に立ったフランツヨゼフ・レーアル(オーストリア)からは28秒差で、後半のクロスカントリーをスタートすることになった。

 

 前半を終えて「悪くない位置につけられた。金メダルを獲れるように臨機応変に対応したい」と振り返った渡部。クロスカントリーに自信を持つだけに、メダル獲得へ手応えを掴んでいた。

 

 後半のクロスカントリーの距離は10キロ。ジャンプの得点をタイム差に換算し(1点=4秒、15点=1分)、トップ以降の選手はそれによるタイム差に応じて順次スタートを切っていく。今季のワールドカップランキング個人総合首位の渡部は、期待通りの走りを見せて順位を1つ上げたもののフレンツェルとの一騎打ちに敗れ、4.8秒差で惜しくも悲願の金メダル獲得はならなかった。

 

「フェアな戦いができた。お互い同じくらい(集団を)引っ張り合ったし、他の誰と戦うよりもフレンツェルと戦うのは面白い。彼が勝ってくれて良かった。(後ろで体力を温存していた)クラプファーに勝たれるよりは」

 

 レース後に渡部は笑みを浮かべていた。4年前のソチ五輪と同じくフレンツェルとの金メダル争い。白熱のレースを演じられた充実感もあったのだろう。レース終盤はまさに2人による金メダル争いだった。残り800メートルを切ってからの上り坂でフレンツェルがスパートをかけ、そのまま突き放されてしまった。「彼の方がスピードがあった。完敗という感じ」。潔く負けを認めつつも、このまま引き下がるわけではない。

 

 渡部は今季W杯で自己最多の5勝をあげ、個人総合首位に立つなど絶好調。その勢いが本物であることを証明してみせた。

 

 まだ個人ラージヒル、団体とリベンジの機会は残されている。

「4年前はノーマルヒルでメダルを獲れたのが嬉しくて、気持ちが少し切れてしまった部分があった。今回は“金メダルを獲りにきた”と宣言しているので、気持ちを切り替えてラージヒルと団体でもベストを尽くしたい」

 

“シルバーコレクター”から“キング・オブ・スキー”へと昇り詰めるための戦いは、これからが本番だ。

 

(文/交告承已)