NPBの各球団はキャンプを打ち上げましたが、香川オリーブガイナーズは3月からキャンプインです。3月末の開幕に向けて大学とのオープン戦など仕上げの時期に入りました。新しいシーズンを迎えるにあたり選手たちの成長が楽しみです。

 

 知恵を出し、創意工夫せよ

 私自身の現役時代を振り返ると、83年、ルーキーで参加した初キャンプは戸惑いの連続でした。一番驚いたのはプロの練習量です。それまでやっていたアマチュア野球と異なり、広島は朝から晩まで練習メニューが組まれていた。広島は今と同じようにキャンプの練習量と質には定評があり、1日野球漬けという環境でペース配分がなかなかつかめませんでした。


 しかも山本浩二さん、衣笠祥雄さんというベテランのすごい人たちがいたし、高橋慶彦さんなど黄金期のメンバーが揃っていた時代です。年代の違う人たちと野球をやることにもちょっと戸惑った覚えがあります。

 

 でもオープン戦を通じてプロの球に慣れてきて、そこで自分もプロ野球チームの一員になれたかなと思いました。その後、1年目から代打の切り札として起用されて、初ヒット、初ホームランと結果を出していく中でチームの先輩たちに認められました。まあどこのチームもそうでしょうが、結果を出して初めてプロとして認めてもらえるんでしょうね。

 

 香川のキャンプでは新しい選手の力量を確かめたい。独立リーグは新人でもスッとチームに溶け込めるので新人選手も特に臆することなくプレーできるでしょう。その上でオープン戦で自分の役割をどれだけ果たせるか。新人選手にとっては腕試しの場でもあります。


 四国アイランドリーグplusを含めて独立リーグの練習環境はNPBに比べれば恵まれてるとは言えません。食住が保証されているわけでもなく、アルバイトをしながらその合間に練習をする選手もいます。そうした中で如何に創意工夫をしてやっていくか。独立リーグの選手にはそれが求められます。

 

 同じことは私を含めて首脳陣にも言えます。独立リーグの監督の仕事は選手の適材適所を見極めてやりくりすることです。香川で指揮を執って12年の経験がある分、その見極めには自信があります。ですが、場合によってはその経験が邪魔になるんですよ。

 

 先入観で判断したり、自分の考えに固執してしまったり。私はそうならないように常に新しい考えを取り入れたくて、NPBの2軍が練習でどんなことをやっているのかを観察することもあります。

 

 今はインターネットやスマートフォンでいいバッターの動画が見られます。選手にはいつも「環境は恵まれないかもしれないけど、その中でもやれることはある。自分で工夫して勉強しろ」と言っています。

 

 3月はすでに大学チーム、韓国プロ野球などと6試合のオープン戦が決定しています。12月、1月、2月と実戦から遠ざかっていた選手がゲーム勘を取り戻すのと同時に、各自がテーマを持って戦ってほしいですね。ピッチャーならストライク先行でウイニングショットに自分の得意な球を放れるかどうか。バッターはストライクゾーンの球を積極的に打ちにいったり、走塁など状況判断の精度をどれだけ上げられるか、など。試合の中で収穫を見つけ、反省を繰り返して、シーズンを迎えてもらいたいですね。

 

 NPBの選手たちは野球力では当然、優れた存在です。でも香川の選手たちはチームの方針として、人間力の向上にも務めています。地域貢献や社会活動などを通じて様々な人と出会い、そして何かを学ぶ。こうした野球力プラスαの力を持つ香川の選手に、今季も盛大な応援をよろしくお願いします。


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