列島を沸かせた平昌冬季五輪の主役は金メダル3つ(女子500メートル、女子チームパシュート=団体追い抜き、女子マススタート)を含む6つのメダルを獲得したスピードスケートだった。4年前のソチ大会では女子チームパシュートの4位が最高だっただけに大躍進と言っていいだろう。


 大躍進の象徴が「小よく大を制した」女子チームパシュートである。年間300日にも及ぶ合宿を実施し、チーム戦術の徹底化を図るとともに、ワンラインを可能にするスケーティング技術を磨き上げた。


 多くのメディアが報じているように、これまでスピードスケートの強化は実業団主体であり、日の丸の下で選手たちがひとつになることはなかった。ある冬季五輪出場経験者は「所属企業が違えば会話もかわさなかった」と語っていた。それがソチ大会での惨敗を受け、尻に火がついた。ワンジャパンなくしてワンチームもワンラインもありえなかったのである。


 ワンジャパン。果たして五輪とパラリンピックはそのような関係になっているだろうか。


 平昌パラリンピックノルディックスキーチーム日本代表監督の荒井秀樹は言う。「フィンランド、スウェーデン、ノルウェーなどスキーの強い国は健常者と障がい者の組織が一緒になっている。日本も早く一本化すべきではないでしょうか」


 日本では健常者の組織は全日本スキー連盟だが、障がい者の組織は日本障害者スキー連盟と分かれている。「全日本スキー連盟の中にパラリンピック部門をつくって欲しい。NF(国内の競技団体)が2つある必要はない」。それが荒井の主張だ。


 通常、パラリンピックは五輪の後に行われる。同じ競技会場を使うことが多いため、組織が一本化していれば情報も共有できる。クロスカントリースキーであれば雪質、雪温に加え、どんなワックスを使ったか、どんなストラクチャー(滑走性を高めるためにスキー板につける傷)が有効か、それが確認できるというのである。五輪開催時に比べ、平昌の気温は上昇しているとはいえ、役に立たない情報はない。


 ところが荒井によれば、今はまだ競技会場などの情報提供は個人の人間関係に頼っているのが実情だという。「引き継ぎの正式な仕組みはまだできていません」。ワンジャパンへの組織面、制度面でのバリアフリーは喫緊の課題である。

 

<この原稿は18年3月7日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


◎バックナンバーはこちらから