今年もカッキーライド開催
「今年は、カッキーライドをやらない」
高山善廣選手の支援大会『TAKAYAMANIA EMPIRE』の開催日が8月31日に決定したのを主催関係者から聞き、僕はカッキーライドを行なわない方が良いと判断した。
同じ8月で大会日程が近いこともあり、今回は『TAKAYAMANIA EMPIRE』の方に集中すべきだと思ったからである。まずは優先すべきは高山選手の大会に決まっている。
高山選手は、カッキー応援隊として僕の闘病中、様々な形でサポートしてくれた。今度は自分が恩返しする番だ。僕は『TAKAYAMANIA EMPIRE』に全力を尽くそうと考えたのである。
高山選手のお見舞いに行った時も僕はこの旨を本人に伝えたのだった。
しかし、高山選手からは「垣原さんもまだ闘病中なのですから、ご自身のための興行をしてください」と背中を押されてしまった。
「しばらく考えさせて欲しい」
僕は即答を避け、慎重な姿勢を崩さなかった。安請け合いをすることで、僕の想いが中途半端で終わるのを懸念したからだ。
家族とも相談をしたのだが、16歳の息子から威勢のよい言葉が飛び出し、少々面食らった。
「カッキーライドがめちゃくちゃ成功したら、世間は必然的に『TAKAYAMANIA EMPIRE』に目が向くはず。高山さんの言うとおり、やった方が絶対に良い」
こんな積極的な息子を見たのは初めてかもしれない。
「よし、それじゃあ、オマエが先頭に立って揺らいでいるオレの心を引っ張ってみてくれ」
なんと息子はカッキーライドの実行委員長に名乗りを上げ、大会を大成功させると豪語したのである。「オマエの心意気に乗るよ。ライドするよ」。なんだか急に面白くなってきた。
「ところでやるからには具体的に大会を面白くする秘策とか考えてるの?」
僕は息子に突っ込んだ質問をしてみた。
「去年、音響とか演出面を手伝わせてもらったけど、もっと色々と手を加えられると思った」
息子は裏方として、あらゆる面で大会に関わっただけに自分なりの考えがあるようだった。
「まず、がん患者と同居している家族の方々をご招待するのはどうかな?」
なるほど。がんの家族の方の気持ちは同じ立場だけによく理解しているだろう。
「病気だけでなく、高山選手のように怪我で苦しんでいる方もご招待したいよね」
息子に触発されて僕もこのような案を思いついた。友人に肢体不自由児協会の関係者がいるので、その方を通じて声を掛けてみようと思う。エイド的な要素を色濃く出すことを提案した息子の意見を取り入れることにした。カッキーライドの前身は、カッキーエイドだ。自分も多くの方に支援されたからこそ今がある。これからは、僕が病気や怪我で苦しんでいる方々をサポートする番なのである。
「カッキーライドはエイドの精神を忘れてはいけないよね」
僕は、今更ながら自分の使命に気付かされた。
そしてもう1つ忘れてならないのは、僕をずっと応援してくれているファンの方々だ。何か恩返しをしたいと常に思っている。
「大会のテーマは、集え! Uインター魂でいこう」
Uインターにこだわるのは、高山選手がデビューした団体であるからだ。
つらい新弟子時代を過ごした団体に対しての思いは特別なのである。これは選手ならみんな同じ気持ちだと思う。
「かつてのUインターの選手それにフロントのみんなを集結させたいなぁ」
もちろん、簡単なことではないだろう。でも、『TAKAYAMANIA EMPIRE』に良い形でつなげるには、Uインターの結束が絶対に不可欠なのだ。とにかく全力で動きまわり、かつての仲間に誠意を伝え、今大会への協力を仰ぐしか方法はない。通りたくない道もあるけどやるしかない。
「一番大切なお父さんのファンに感謝を表すのにこんな方法はどうかな?」
息子はファンサービスとして、入場時の提案をしてきた。
「えっ、マジで……それは大変だけどやるしかないね」
竹の子のようにボコボコとアイデアが沸いてくる息子に敬意を払い、僕はすべて実施することを誓った。
最年少の実行委員長は、大会ポスターのデザインに至るまで、あらゆるところまで目を光らせている。学校を休んででも記者会見に出ると言い出す始末。僕はやると言った以上、とことんやるべきだと思った。学生の本分である勉学を疎かにしないという約束を交わし、カッキーライドの成功を親子で誓ったのだった。
「肝心要の試合カードも8割は決まったし、25日の記者発表を待つだけだ」
本日(25日)、大日本プロレスの上野大会でカッキーライドの会見を行なうことになっている。
会見には、実行委員長の息子を筆頭に娘の綾乃(MC担当)、応援隊・代表の山崎一夫さん、Uインター時代の同志・大江慎さんと心強いメンバーが揃った。
まずは、マスコミの皆様に大会への熱い想いをぶつけてくるつもりだ。
(このコーナーは毎月第4金曜日に更新します)