28日、JA全農世界卓球団体選手権東京大会が開幕し、チャンピオンシップ・ディビジョンのグループBの日本女子代表(ITTF世界ランキング3位)はベラルーシ代表(同18位)と対戦した。日本は平野早矢香(ミキハウス)、石川佳純(全農)、田代早紀(日本生命)で危なげなく3連勝。3対0で初戦をモノにした。一方の男子(ITTF世界ランキング3位)はグループCのギリシャ代表(同16位)を相手に第1戦を水谷隼(DIOジャパン)で先取する。だが第2戦を岸川聖也(ファースト)が、第3戦を松平健太(ホリプロ)が落としてしまい窮地に追い込まれた。第4試合は水谷が取り返し、2対2のタイに持ち込むが、最後は岸川がストレートで敗れ、グループリーグは黒星スタートとなった。
(写真:31年ぶりの東京開催。チャンピオンシップ・ディビジョンなどは代々木第一体育館で行われた)
◇チャンピオンシップ・ディビジョン
・女子グループB
日本 3−0 ベラルーシ
(平野3−1パブロビッチ、石川3−0プリワロワ、田代3−1クチュク)

 女子は盤石のスタートを切った。2006年のベルリン大会からグループリーグは21連勝。ベルリン大会銅メダルのベラルーシを寄せつけなかった。

 直前に男子が敗戦を目の当たりにし、嫌な空気を振り払ったのが平野だった。「世界選手権は改めて怖い。難しい試合になるな」と気を引き締めた。「初戦の1番はチームの最初の流れを作る役割がある。“自分の力でいい流れを作りたい”と臨みました」

 長身のカットマンのビクトリア・パブロビッチは世界ランキング11位と実力者だ。「相手を見ながら調整していこうと思っていました」と、平野は攻め急ぐことはせず2ゲームを連取した。第3ゲームを落としたものの、第4ゲームを取り3−1で先勝した。

 1番手がいい流れを作り、2番手はエースの石川だ。アレクサンドラ・プリワロワを強打で圧倒。2ゲームを11−4、11−9と連取した。第3ゲームを13−11の接戦で制し、ストレート勝ち。平野が作った流れに勢いをつけた。

 第3戦は世界卓球デビューとなる田代。「頭が真っ白になった」と緊張して迎えた第1ゲームを落としたが、それでも徐々に得意のバックハンドが冴えた。序盤から連続ポイントを重ね、リードし11−4で取り返すと、残る2ゲームも連取し試合を決めた。

「みんないいプレーをして試合を終えることができた。チームの雰囲気としてはいいかたちで始まれた」と平野。初出場の田代も「緊張したけど楽しかった」と大舞台を経験でき、いいイメージを持てたことも大きい。福原愛(ANA)という核を欠く今大会。3対0の完勝と好発進した。前回ドルトムント大会では逃したメダル獲得へ、弾みがついたはずだ。

・男子グループC
日本 2−3 ギリシャ
(水谷3−2クレアンガ、岸川2−3ギオニス、松平2−3パパヨールユー、水谷3−1ギオニス、岸川0−3クレアンガ)

 グループリーグ全勝突破を目指していた日本だが、いきなり出鼻をくじかれた。37年ぶりの決勝進出を目指す日本は、昨年のヨーロッパ団体選手権準優勝のギリシャに屈した。

 第1戦を任された水谷はカリニコス・クレアンガの強打に苦しめられた。第1ゲームを8−11で落とすなど、ゲームカウント1−2と追い込まれる。ここでエースが粘りを見せる。第4ゲームを接戦で取ると、ファイナルゲームを11−5で連取し3−2でまず先勝する。

 続く岸川がカットマンのパナギオティス・ギオニスを相手にゲームカウント2−1とリードした。ところが第4ゲームを8−11、第5ゲームを7−11で落としてしまう。これで1対1のタイスコアに。「ここで勝っていれば完全にこっちのペースだった」と岸川は悔やんだ。第3戦は松平。松平もファイナルゲームまでもつれる接戦の末、敗れる。連敗で一気に形勢は逆転。日本は後がなくなった。

 ここで再び水谷がギオニスを3−1で一蹴し、第5戦の岸川に託した。しかし岸川はカットマンから強打の対戦相手との落差に対応できなかった。流れを掴むことなくクレアンガにストレート負け。大事な初戦を落としてしまった。

 油断していたわけではない。「対策を練ってきたが、それを上回る勢いと強さがあった」と、男子代表の倉嶋洋介監督は負けを認めた。ギリシャを相手に水谷、岸川に最大2試合を任せるオーダーには2つの狙いがあったという。1つは「カットマン対策」だ。ギリシャにはギオニスがいる。カットマンに苦手意識のない2人を置いた。そしてもうひとつは「場馴れ」である。いずれも5回目の世界団体選手権を経験している水谷と岸川。地元開催というプレッシャーも考慮しての起用だった。

 エースの水谷は2勝し、期待に応えた。しかし、倉嶋監督が「団体戦に強く。すごく使いやすい」と高く評価する岸川は、2敗と誤算だった。いきなり黒星スタートと、幸先の悪い立ち上がりとなった。だが、銅メダルを獲得したモスクワ、ドルトムントと過去2大会もグループリーグで1敗している。明日のルーマニア戦で、まずは大会初勝利で、悪い流れを払拭したい。

(文・写真/杉浦泰介)