【ザ・ロイヤルGCに挑む】里崎智也(元プロ野球選手)「戦略性が高く、攻め甲斐あり」

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「世界へ発進! 脱日本式ゴルフのすすめ」ではザ・ロイヤル ゴルフクラブ(ザ・ロイヤルGC・茨城県鉾田市)を舞台に、ゴルフの新たな楽しみを提案していきます。


 今回、全長8000ヤードを超す世界基準のロングコースに元アスリートのゴルフ愛好家がチャレンジしました。挑んだのは元プロ野球選手の里崎智也さんです。現役時代、強打のキャッチャーとして鳴らした里崎さんは千葉ロッテで二度の日本一、第1回WBCでは野球日本代表に選ばれ"世界一"に輝きました。攻撃的リードで知られた里崎さんは"世界基準"をどう攻めたのか? 早速、レポートしましょう。

 

 野球選手の必修科目

「ものすごくキレイなコースですね」
 ラウンド当日、朝イチでやってきた里崎さんは開口一番、こう言った。天然木内装のクラブハウスやロッカールーム、そしてラウンジの窓から見える景色など、「なんだか、海外にいるみたい」と、到着早々からザ・ロイヤルGCのホスピタリティマインドを存分に感じたようだ。

 

 プロ野球選手にはゴルフ愛好家が多い。その理由は?「チームの納会や会社関連の人とのコンペなどがあるから、必然的にやらなきゃいけなくなる。ある意味で必修科目です。若手はゴルフを始めると先輩選手と回ることになり、そこでゴルフのマナーを覚えます。野球選手は上下関係が絶対ですから、先輩たちを待たせるなんてとんでもないこと。だからプレーは早い。僕もそういうところで鍛えられたので、サクサクしたプレースタイルです」

 

 この日のラウンドは10番ホールからのインスタート。風もなく、気温も暑くもなく寒くもない。「僕のゴルフと一緒ですよ。なかなかうまくもならないし、ヘボくもない、っていう。アハハハ」。里崎さんは同行する新崎弥生プロ(ザ・ロイヤルGC副支配人)やキャディを得意の"ささやき戦術"で自分のペースに引き込んでいく。

「せっかく1日一緒に居るんですから、楽しい方がいいでしょう」というのが里崎流である。

 

 スタートの10番ホール、ティーショットがいきなりバンカーに入ったものの、そこからナイスリカバリーで3オン。強めのパットでピンに寄せて、2パット目はわずかにカップを外れてダブルボギー。「今日はカップが小さめですか(笑)」と、あくまで明るいゴルフスタイルだ。続く11番ホールはティーショットが池ポチャも、持ち直してダブルボギー。そして399ヤード・パー4の12番ホールは2オンからロングパットを1メートルに寄せて、そこからパー! 前言どおりにサクサクとスピーディにプレーを進めていく。

 

 一言で表せば、里崎さんのゴルフには「迷い」がない。キャディのアドバイスを聞き、ティーグラウンドに上がるとボールの後ろに立ち「まっすぐね」と声を出してからアドレスに入る。そしてスイング。さらにショットの良し悪しに気持ちが左右されることがなく、切り替えも早い。

 

「打ってしまったことを悔やんでも仕方ない。それよりもラフやバンカーからどう打つか、二打目のことを考えた方がいいでしょう。良く『ティーショット、こう打っておけば』とか『ちょっと開いちゃったなー』と、いつまでも引きずってる人がいますけど、終わったことですから、時間がもったいないですよ」

 

 サクサクと進む"里崎流"で午前中のハーフは順調に終了した。スコアは48。「いつもハーフで40とちょっと、トータルで85くらいですからね。それだけこのコースが難しいということでしょう。でも、攻略しがいのあるコースですね。午後も楽しみです」と、午前中のラウンドですっかりザ・ロイヤルGCの魅力にハマったようである。

 

 バンカーが難所

 午後のラウンドは1番ホールをパーでまとめて上々のスタートを切った。2番ホールは2打目をバンカーに入れたが、そこからグリーンに乗せてパーチャンス。惜しくも3パットとなったものの「どのホールも傾斜があって難しいグリーンだけど、打った分だけ素直に転がる。これは面白い」と、ダブルボギーにもヘコむ様子がない。

 

 その後も里崎さんはフェアウエイ、バンカー、ラフ、そして木の根元など、あらゆる場所へボールを運んだ。515ヤード・パー5の8番ホールでは3オンからバーディパットをカップまで1センチに寄せるナイスタッチのパッティングを見せた。「ああ、弱い。攻めきれなかったぁー」と天を仰いだが、結局ナイスパー。最終9番ホールはダブルボギーだったものの、午前中よりもスコアをのばして44。トータル92でホールアウトした。

 

 クラブハウスに場所を移して、ザ・ロイヤルGCの印象を聞いた。

 

--世界基準、実感できましたか?
「世界基準という言葉をホームページで見ていて、"どんな感じなのかな"と思っていましたが、ラウンドするとそれが実感できました。見た目はきれいで美しいコースですが、実際には……。バンカーにも良く入れて、非常に出しづらい。いつものつもりで打ってもバンカーから出ないことがあった。"これは手強いぞ"と思ったものです。でもその分、攻略したくなる。攻め方を考えさせてくれるコースですね」

 

--特に難しさを感じたのは?
「フェアウエイをただキープすればいいわけじゃないということです。9番ホールだったか、ティーショットを狙いどおりバンカー右側に落としましたが、そこから転がってラフ、木の根元まで行ってしまった。よく転がるフェアウエイなので、ティーショットでも自分の距離をわかった上で打たないといけないんですね」

 

 ここで、新崎プロが補足した。
「5月に行われた男子ツアーのミズノオープンでも、多くのプロがフェアウエイのランに苦労していました。最初のラウンドでザ・ロイヤルGCの難しさとして、フェアウエイのランに気づいていただけたのは光栄です。あと、バンカーの話を補足すると、ザ・ロイヤルGCのバンカーは砂の粒子が細かく柔らかくて、量もいっぱい入っています。だから少しでもダフると砂の中にクラブが入り込んでしまいボールを出しづらいんですね」(新崎)

 

 再び、里崎さん。
--他にザ・ロイヤルGCの印象は?
「全長8000ヤード超と謳っていますが、あらゆるレベルの人が楽しめることを考えて作られているな、と思いました。特にティーグラウンドが前から後ろまで5~7カ所、設けられている。しかも"レディスティー"や"シニアティー"という名称ではなく、"一番前"とか"何番目のティ"という呼び方なのもいい。誰でもどのティーから挑戦できます。しかもティーをどこから打つかで、何回来ても楽しめることになる。一番前のティーから打てば簡単かというと、たぶんそんなことはないでしょう。前に出た分、また違う攻め方をしないとスコアはまとめられない。うーん、話していて、また来たくなりましたよ(笑)」

 

--最後に野球とゴルフを比べると?
「同じように道具を使う球技、しかもバットやクラブを振るという動作は同じようなものですが、野球は3割も打てば成功で、ゴルフは10割が求められます。今日の池ポチャ、あれなんて野球だったらファウルですよ、打ち直し(笑)。でも、ゴルフにはファウルがない。それが難しい。野球は相手と戦いますが、ゴルフはまずは自分との戦い。しかも100点のプレーはない。スイングにしてもパットにしても"つかんだ!"という瞬間がなくて、永遠に試行錯誤、勉強が続くんです」

 

--ゴルフの一番の魅力は?
「僕はプロ野球という勝負の世界からは退きましたが、今はゴルフでコースと戦っています。アスリートとして勝負事が継続できるのが魅力ですね。しかも世界中でプレーできるし、どんな年齢、性別の人とも一緒にできる。ゴルフはスポーツとしても、コミュニケーションツールとしても最高だと思います」

 

 ザ・ロイヤルGCの初プレーを終えた里崎さんは帰り際に、ちらりとコースを見やった。世界を制した頭脳派キャッチャーの眼は、すでに次の"対戦"に向けて"世界基準"の攻略法を探っているようだった。

 

 

 

<里崎智也(さとざき・ともや)プロフィール>元プロ野球選手
1976年5月20日、徳島県出身。帝京大から99年、ドラフト2位で千葉ロッテに入団。03年から1軍に定着し、正捕手として05年、10年の日本一に貢献。10年はリーグ3位からの勝ち上がりで「史上最大の下剋上」を達成した。06年、第1回WBC日本代表に選ばれ世界一に。大会ベストナインにも選出された。14年に現役引退。通算打率.256、108本塁打。ベストナイン、ゴールデングラブ賞2度受賞。現役時代に始めたゴルフ歴は17年目を迎え、ベストドライブは318ヤード、ベストスコアは78(イン42/アウト36@ロッテ皆吉台カントリー倶楽部)。得意なクラブはユーティリティ22度(写真)。このクラブは、あるコンペでミドルホール・ワンオン賞品として手に入れてから16年の付き合いになるという。現在、年間ラウンド数は20~25回。「100の練習よりも1の実戦。もっとコースに立ちたい!」と語る。

 

(取材・文/SC編集部・西崎暢之 写真/ザ・ロイヤルGC、SC編集部 監修/二宮清純)

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