今シーズンも無事に終えることができました。1年間、応援ありがとうございました。経営面では、単年度黒字を計上できそうな球団ができたこと、黒字にはならなくても、大幅に収支を改善できた球団もあり、これも運営スタッフたちの並々ならぬ努力の成果だと思います。しかし、その収益が一番大事な集客ゾーンにまで広げることができなかったことは残念でなりません。これは来シーズンの最重要課題としてリーグ全体で取り組んでいきたいと考えています。
 では、なぜ集客がうまくいかなかったのでしょうか。今シーズンのリーグ全体の観客動員総数は28万4670人。1試合平均にすると、1318人でした。初年度の昨シーズンは1790人ですから、26.4%減少してしまったことになります。理由は私たちがファンが求めているものを少し勘違いしていたことにありました。

 というのも、いくらリーグの技術レベルを上げても、それでお客さんは呼ぶことはできません。国内トップ組織のNPBでさえ、超一流でなければ技術だけで人をひきつけることはできないのですから、BCリーグでは絶対的に不可能なのです。それよりも、大事なのは試合でのひたむきなプレーや練習での努力している姿、ファンに対しての真摯な態度……そういった野球人としての姿勢をどれだけファンに見せられるかが勝負なのです。そのことを何よりも痛感させられた1年でした。

 さらなる発展を目指した2年目の今シーズンでしたが、逆に慣れによる努力不足で逆に退化してしまった感は否めません。その証に昨シーズンにはなかったチーム間や審判とのトラブルが多く発生してしまいました。実はリーグが招待した地域の子どもたちが試合中に起こったトラブルを見て泣き出してしまったこともあったのです。僕たちは地域貢献を目的にリーグをつくりましたし、そのことを1年目から強くアピールしてきました。しかし実際は、選手たちにそのメッセージがきちんと伝わっていなかったのです。

 3年目は改めてリーグとしての姿勢や理念を明確にし、指導者や選手に浸透させていこうと考えています。現在、6球団の代表者とともに、私達がこの地域で成し遂げるべき理念を策定中です。この理念と具体的な活動内容は開幕前に、地域の皆様の前で発表します。各球団の指導者や選手たちには、野球だけではなく、地域貢献活動に積極的に取り組ませます。あくまでも野球はそのための手段だということを徹底させるのです。

 そのためには言動はもちろん、身だしなみも含めて子どもたちの手本となるような選手にならなければなりません。例えば、不精ヒゲや茶髪、ユニホームの着こなし方がだらしない選手に「正しい挨拶をしなさい」と言われても、説得力はゼロですからね。選手たちには子どもたちにとって野球以外の面でも尊敬できる選手になってもらいたいのです。

「ヒゲやヘアースタイルは個人の自由だ」と反発もする人もいるでしょう。しかし、選手にとってもこれはプラスに働くことは間違いありません。なぜなら、この2年間でのBCリーグからのドラフト指名選手を見てみると、彼らに共通しているのは野球に対する姿勢はもちろん、マナーや身だしなみもきちんとしていたことです。つまり、NPBは技術うんぬんよりも、どれだけ野球に真摯に取り組むことができるかで、BCリーグの選手を見ているのです。今ある技術ではなく、そういった部分で伸びしろがあるか否かを判断しているのだと思います。

 BCリーグのゴールはNPBに送り込むことではありません。僕らにとって成功のゴールはやはり地域社会に貢献することなのです。具体的には努力の結果、NPBに行くことができなかった選手が夢を諦め、お世話になった地域で社会人として地元企業に勤めた時、「さすがBCリーグ出身の選手だけあってマナーも態度もとても優秀ですね。ありがとうございます」と地域の人たちに言ってもらうこと。その時初めてリーグが成功したと言えるのだと思っています。また、出口だけでなく、入口について言えば、高校や大学の指導者が教え子の進路を考えた時、「BCリーグに行けば、野球はもちろんのこと、それ以上に人間として鍛えてくれるぞ」と言ってもらえるような存在になりたいのです。

 僕らがやれることはこういうことしかありませんし、逆にこれでお客さんが来てくれなければ、BCリーグの存在意義はありません。一流たちが集まったNPBやスリル満点のトーナメント形式である高校野球と同じ価値観をつくりあげることは僕たちにはできません。ならば新しい野球の価値観をつくるしかない。そうしなければ独立リーグの成功はないと思っています。

 来シーズンから選手の報酬を一律ではなく、10〜40万円の変動制にし、元NPBプレーヤーを呼べる体制にしたのにも理由があります。一つは20代前半でNPB球団から戦力外通告を受けてしまった若者の受け皿となり、もう一度NPBにチャンレンジする場を与えたいということです。そしてもう一つは、各球団に技術ではなく前述したマナーや態度という点で一野球人としてのレベルアップを図ってもらいたいという目的からです。というのも、NPBに行くような選手は挨拶やマナーといった野球以外のことについてもレベルが高いのです。実際、今シーズン各球団には元NPB選手がいましたが、ほとんどの選手が人としても優秀でした。だからこそ、チームの底上げができたのです。

「2年目の壁」「2年目のジンクス」とはよく言いますが、今シーズンは本当にいろいろなことを学び、反省することの多かった1年でした。この反省をいかし、来シーズンは新しい姿をお見せしたいと思っていますので、どうぞ3年目のBCリーグにご注目ください!

村山哲二(むらやま・てつじ)プロフィール>:BCリーグ代表
新潟県出身。柏崎高校では野球部に所属。同校卒業後、駒澤大学北海道教養部に進学し、準硬式野球部主将としてチームを全国大会に導いた。2006年3月まで新潟の広告代理店に勤め、アルビレックス新潟(Jリーグ)の発足時から運営プロモーションに携わる。同年7月に株式会社ジャパン・ベースボール・マーケティングを設立し、代表取締役に就任した。



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 今回は村山哲二BCリーグ代表のコラムです。「選手育成への情熱」。ぜひ携帯サイトもあわせてお楽しみください。
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