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(写真:ダブルスを制した男女ペア。左から中島、天野、水谷、吉田)

 16日、全日本卓球選手権6日目が東京体育館で行われ、女子ダブルス決勝は天野優&中島未早希組(サンリツ)が土井みなみ&土田美紀組(中国電力)を3-0(11-8、11-6、11-8)で下した。天野&中島組は全日本選手権初優勝。男子ダブルス決勝は水谷隼(beacon.LAB)&吉田雅己(愛知工業大)組が松生直明&鹿屋良平組(リコー)を3-1(8-11、12-10、11-8、11-7)で破り、全日本選手初制覇を果たした。水谷は岸川聖也とのペアを合わせると同種目6度目の優勝。シングルスは男子が水谷、吉村真晴(愛知工業大)、笠原弘光(協和発酵キリン)、張一博(東京アート)、女子が石川佳純(全農)、加藤杏華(十六銀行)、伊藤美誠(スターツSC)、平野美宇(JOCエリートアカデミー)とベスト4が出揃った。8名は17日に同会場で準決勝、決勝を行う。

 

 攻めの姿勢で掴んだ初V ~女子ダブルス~

 

 女子ダブルスはともに初の全日本選手権決勝。どちらが勝っても初優勝だった。臆することなく攻めの姿勢を貫いた天野&中島組が頂点へと辿り着いた。

 

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(写真:中島<右>の上から打ち下ろす強打は相手を苦しめた)

「ここまでいけるとは思っていなかった。一戦一戦が決勝のつもりで戦った」と天野。準決勝では2連覇中の平野早矢香(ミキハウス)&石川組と対戦した。天野は「ここがヤマだと思っていました。相手の方がプレッシャーがあって、安全にくる」と踏んで、アグレッシブに攻め続けた。天野と中島の強気な攻撃に平野は「押されてしまった」と語り、石川は「思い切って攻めてきて、自分たちのパターンに持っていくことができなかった」と悔やんだ。第1ゲームは落としたものの、3ゲーム連取。天野&中島組が3-1で女王ペアを撃破した。

 

 その余勢を駆って、決勝も一気に突き進んだ。明徳義塾中・高出身の天野にとって、土井と土田は先輩にあたる。土田はダブルスでペアを組んだこともある勝手知る相手。だが天野は「高校の先輩なので、慣れられているし慣れている。その日の調子次第」と特別に苦手意識は持っていない。対戦成績も「勝ったり負けたり」という印象で、中島は「チャンスはある」とポジティブな気持ちで試合に臨んだ。

 

 試合は主に前陣速攻の天野と、中島が後ろで強打を放つというサンリツペアの攻勢が目立った。3球目攻撃などラリーではなく早い勝負に持ち込んだ。第1ゲームは5-3から5連続ポイントで一気に畳みかけ、ゲームポイントを奪った。そこから粘られたが、11-8で押し切った。そのまま勢いに乗ると第2、第3ゲームも連取。ほぼ危なげなく勝利をモノにした。

 

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(写真:初優勝を決め、抱き合って喜ぶ天野<左>と中島)

 結成2年半のペア。天野と中島が所属するサンリツの近藤欽司総監督は「2人はタイプが違う。天野は前で、中島は後ろ。お互いにチャンスを作ってパートナーのいいところを引き出せる。そこがうまく噛み合った」と振り返った。かつて全日本女子を率いたこともある近藤総監督は、「2人で1本を取る。ダブルスは1+1が、パートナーが悪いと2にならない。彼女たちは3や4になる」と評する。その抜群のコンビネーションが彼女たちの強みである。

 

 天野と中島は個人としても初の日本一を手にした。2014年から全日本社会人選手権は連覇し、着々と結果を積み上げてきている成長株だ。天野が「日本リーグで負けない存在になって、プロツアーや世界選手権に出たい」と意気込むと、ペアを組む中島も「日本リーグでは確実に得点を取り、世界選手権で活躍したい」と応えた。新女王となったペアの視線は世界へ――。

 

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FORZA SHIKOKU 2014年2月掲載

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>>第2回「恩師を追いかけて高知へ」

>>第3回「“1本”へのこだわり」

>>最終回「日本を制して世界へ」

 

 新ペア結成で世界へ挑む ~男子ダブルス~

 

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(写真:試合後、ガッチリ握手する26歳の水谷<左>と21歳の吉田)

「選んだことは間違いじゃなかった」。男子ダブルスとして6度目の優勝を挙げた水谷はそう語った。これまで5度の優勝は約10年ペアを組んできた岸川とのもの。世界選手権で2度のメダル獲得、国際大会でも優勝を勝ち取った盟友とは昨年の秋にペアを解消した。

 

「何年か前からこれ以上、上にはいけないと感じていた」と水谷。岸川とのペアで全日本選手権は4年間優勝を逃しており、昨年の世界選手権(中国・蘇州)には出場できなかった。心のモヤモヤが晴れぬまま、プレーし続けるわけにはいかない。「苦渋の決断」。水谷は2歳上の岸川の代わりに5歳下の吉田を選んだ。

 

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(写真:水谷が「どんな場面でも使える」と高く評価する吉田のロングサービス)

 21歳の吉田は愛知工業大の3年生。水谷と同じ青森山田中・高の出身である。同世代の明治大コンビ丹羽孝希、町飛鳥の陰に隠れてはいたが、ドイツ・ブンデスリーガで4シーズンプレーしている実力者だ。「オファーをもらって、すごくビックリした」と吉田。隣でプレーして水谷の凄みを実感した。「自分が強打して返されたらパートナーがミスすることがあった。でも水谷さんはカウンターされた球も返したり、打球の的確さ、ラリーの強さ。全部持っている」。ワールドクラスの水谷と組むことで、見える景色は変わってきた。

 

 準々決勝では2連覇中の森薗政崇(明治大)&三部航平(青森山田高)組と対戦した。水谷としては、2年連続決勝で敗れている相手。「今年はリベンジ」と燃えていた。ここで3-0(11-9、13-10、11-8)のストレート勝ちを収めた。「あの試合で波に乗れた」と水谷は振り返る。準決勝では大島祐哉&上村慶哉組(早稲田大)の若くて勢いをあるペアを退け、松生&鹿屋組とペア初優勝を賭けて戦った。

 

 だが第1ゲームは吉田にミスが目立つ。初の全日本選手権での決勝。大舞台での経験も決して多くない。吉田本人も「意識しすぎてプレーが硬くなった」と認めている。8-11とゲームを先取された。続く第2ゲームは12-10で接戦を制すると、第3ゲームは吉田の攻撃にも勢いが出てきた。最後は吉田がスマッシュを決めて11-8で取る。第4ゲームは6-7のビハインドから5連続ポイントで逆転し、そのまま優勝を決めた。

 

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(写真:プレーでも吉田<右上>を引っ張った水谷<左上>)

 結成間もないペアでの全日本選手権制覇。確かな手応えを水谷は感じている。「僕たちはサービスとレシーブが多彩。常に先手をとれる。ダブルスはフォアハンドが主体だが、僕らは得意。世界に通じる」。水谷は今後もペアを組む意向を示し、「彼は若い。これから何度も優勝したい」と語った。

 

 水谷はシングルスでもベスト4に残っている。リオデジャネイロ五輪代表にも内定を決めており、ITTF世界ランキングは日本人最上位の6位。日本のエースとして、負けるわけにはいかない。狙うは当然、歴代最多に並ぶ8度目の優勝だ。準決勝は昨年苦しめられた笠原と対戦する。その先にシングルス3連覇、5年ぶりの2冠が見えてくる。

 

(文・写真/杉浦泰介)