大会終了後に発表された高校サッカー選手権の優秀選手のリストを見て驚いた。

 

 FWがたった5人しかいなかったのである――GKは4人もいたのに!

 

 高校サッカーの優秀選手を決定するのは、長くこの世界に関わってきた目利きの指導者たちである。彼らの目に、今大会に出場したFWたちはは相当物足りないものに映ったのだろう。それにしても、GKとFWの人数がほぼ同じとは、なかなかの椿事である。

 

 相手がシュートを打ってくれなければ仕事のできないGKは、どれほど優れた選手であっても、試合によっては何のアピールもできない場合がある。FWは違う。自分たちが主導権を握っている試合であれば、たっぷりと持ち味を発揮する場面に恵まれる。にもかかわらず、目利きたちの目に留まった人数が、GKと大差がなかったというのだから、若年層のアタッカー不足、いささか心配である。

 

 ただ、少ない人数の中にも、楽しみな素材はいた。

 

 誰でもそうだろうが、わたしも、若い才能を見る時は過去の選手を物差しにする。攻撃的な選手であれば磯貝洋光、小倉隆史、小野伸二あたりがわたしにとってのベンチマークだった。近年で言えば――。

 

「カネコちゃん、1回戦、どこ見に行くの?」

 

「滝川二の試合に行ってきます。ただ、相手が石川の星稜なんで、楽勝だと思いますけど」

 

「いや、わかんないよ。星稜、一人面白いのがいるから」

 

 冬の選手権開幕を前に、グランパスのスカウトをしていた金益祚さんとそんな話をしたのは、もう10年以上前のことである。昨年若くして亡くなられた金益祚さんは、パワフルなサッカーを指向しがちな在日コリアンが多かった中、徹底して技術とパスサッカーにこだわった異端児でもあった。

 

 指導者を経てプロのスカウトに転身してからも、金益祚さんは次々とダイヤの原石を発見していった。ただ、その選手評はかなり辛口で、自分が取った選手であっても、手放しで褒めることはあまりなかった。そんな人物が言う「面白い選手」――それが本田圭佑だった。

 

 言うまでもなく、実際にみた本田圭佑は「面白い」どころの選手ではなかった。たった1試合ですっかり魅了されてしまったわたしは、その数カ月後、Jリーグの新人王予想に彼の名前を書き込んでいた。

 

 以来、わたしにとって本田は若い才能を測る上でのベンチマークとなり続けている。その後出てきたどんな選手も、彼のインパクトを超えてくれてはいな……かった。

 

 だが、今年は金益祚さんであれば「すごく面白いね」とでも評していたであろう才能と出会うことができた。桐光学園の小川航基。本田より高く、本田より速い。自らのPK失敗で高校生活にピリオドを打ってしまった悔しさを糧にすれば、一気の大化けもありうる。磐田での活躍を大いに期待したい。

 

<この原稿は16年1月14日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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