9二宮: いよいよプロ野球の開幕です。今季の注目チームは?

緒方: 僕は巨人です。なぜなら他のチームと比べるとマイナス要素が少ないんです。阪神は2年連続セーブ王のオ・スンファン、東京ヤクルトは守護神のトニー・バーネット、中日は主軸のエクトル・ルナ、広島はエースの前田健太が抜けました。他チームでは中心選手がいなくなりましたが、巨人はレギュラー選手に抜けがありません。

 

 

二宮: たしかに選手層は厚いですね。

緒方: 加えて、今季からメジャー通算122本塁打のギャレット・ジョーンズが入団しました。4番候補のギャレットが期待に応えてくれるかどうかで、チームの成績は大きく変わると思います。巨人が4番を外国人で補強することは少ないと思うので、これまで以上に助っ人外国人の活躍が重要な年になるでしょう。

 

二宮: 新戦力といえば、早稲田大学からドラフト2位で入団した重信慎之介がオープン戦で良いアピールをしていました。

緒方: 重信は足が速くて面白い存在ですよ。走る時に関節がうまく使えている。腕もよく振れているし、足も高く上がっている。力で土を蹴るというよりも、回転や足の運びで進んでいくようなタイプです。

 

二宮: 50メートルを5秒7で走るそうです。

緒方: そういえば、20メートル走で歴代最高の記録を出したと、トレーニングコーチが言っていました。

 

二宮: 巨人には20メートル走があるんですか?

緒方: 僕らの時代はありませんでしたが、­いまは年に1度、キャンプ期間中に計測しています。塁間(27.431メートル)からリードとスライディングの距離を差し引くと、実質走っている距離は21メートルくらいなんです。なので、50メートル走よりも20メートル走で速く走れる選手の方が盗塁できる選手だと思います。

 

二宮: 20メートル走となると、すばしっこい選手が速いでしょうね。

緒方: そうですね。短い距離で良いタイムを出すためには、いかにトップスピードに速く入れるかどうかです。普通の選手が4歩でトップスピードに入るところを3歩で入る。1歩目の使い方が重要です。

 

二宮: 巨人は、今季から高橋由伸新監督が指揮を執ります。緒方さんは高橋監督に対してどんな印象をお持ちですか?

緒方: 彼は頭が良い。質問をすると、いつも明確な答えが返ってきます。例えば、選手の起用法を質した時に「緒方さん。彼を最初に使ったら試合後半のベンチはすごく薄くなってしまいます。でも、この選手をとっておいて、この選手を先に使うとこうなるんですよ」と、きちんと説明できる。春季キャンプで彼と話していて、“もう監督だな”という印象を受けました。

 

二宮: 去年から選手兼任コーチを務めていましたから、そういう目で試合を見ていたんでしょうね。

緒方: そうだと思います。自然とそういうことができるのは、彼の持って生まれた才能でしょう。監督業は大変なプレッシャーがあると思いますが、頑張ってほしいですね。

 

二宮: 高橋監督の参謀役として同学年の井端弘和が一軍内野守備走塁コーチに就任しました。

緒方: コーチの仕事に慣れるまで大変だと思います。井端は選手の中ではベテランでしたが、コーチでは一番年下になるので立場的に苦労することもあると思います。しかし、選手に対してアドバイスをしたり、自分の思ったことは伝えているみたいです。1年目からそれができるということは、選手のことをきちんと考えている証拠だと思います。彼を見ていて“おぉ! 大したもんだな”と感心しました。

 

ベースコーチの難しさ

 

5二宮: 緒方さんは、一塁コーチと三塁コーチの両方を経験されています。どちらが難しいのでしょうか?

緒方: 僕は巨人のコーチ時代、二軍では一塁コーチ、一軍では三塁コーチを経験しました。その場の状況判断が必要なのは三塁コーチです。ランナーを回すか回さないか、瞬時の判断力が問われます。一方、一塁コーチは、その場の状況と相手投手の傾向を伝えることが仕事です。

 

二宮: 今年から本塁前でのブロックが禁止になるので、その分機動力が生きてきます。ベースコーチの腕の見せ所が増えそうですね。

緒方: 僕は“スリリングな野球”がいいと思うので、全部腕を回すくらいの気持ちでいいと思います。ノーアウトや4番が次に控えている時は別として……。

 

二宮: ベースコーチの難しいところは?

緒方: 三塁コーチはチームの得点を預かっているので、判断ミスでランナーをアウトにしてはいけないところです。しかし、一番最悪なのはランナーを止めた時に「いま回したらセーフだったんじゃないのかな……」と後悔することなんです。

 

二宮: なるほど。自分の決断に責任を持てということですね。

緒方: 「ここで回さなかったのは正解だったのか。これで点数が入らなかったら、さっき回しておけば良かったのかな」と考え込んでしまうと、自分自身もキツイんです。結果はどうあれ“回しておけば良かった”との後悔だけはしないことです。

 

二宮: 後悔するくらいなら回せと?

緒方: はい。逆に、僕の判断で回したランナーがアウトになった時は、チームには申し訳ないと思いますが後悔はありません。

 

二宮: 迷った時はどうするんですか?

緒方: ノーアウトの場合は止めます。2死だと回します。1死が非常に難しいんですよ。イニングや点差、次のバッターなどいろいろなことを考えた後に、相手のポジショニングを確認する。ここまで準備したら、あとは打球の強さと方向で判断します。

 

二宮: 判断材料がいくつもありますね。

緒方: 僕のコーチ時代、原辰徳さん(当時の監督)に「次のバッターが5割以上だったら迷え」と言われました。つまり「迷ったら回せ」と、原さんはそういう考えでした。盗塁も同じように年がら年中、グリーンライトでした。

 

二宮: ベースコーチとしてはやり甲斐があったでしょう?

緒方: 僕的に後悔しないような“ストップ”でも、原さんに「あれはいけたんじゃねぇか?」と言われることもありました(笑)。

 

妻と飲んだ“W祝い酒”

 

3二宮: だいぶグラスも空いてきました。緒方さんは何でも飲めるタイプですか?

緒方: 何でも飲めますが、多いのはビールと焼酎ですね。

 

二宮: 普段はどれくらい飲みますか?

緒方: ビールだと500ml缶を1本。焼酎だと水割りで3~4杯かな。大体これが一日に飲む量です。1年365日あるなかで、350日は飲みます。休みの日は17時半くらいから家でナイターを見ながら飲んでいますよ。

 

二宮: これまでを振り返って、一番心に残っているお酒は?

緒方: 1994年に「10・8」を制して、リーグ優勝した時のビールかけは忘れられないです。あの試合、僕は打席に立つことはありませんでしたが、守備固めで途中出場したので、優勝が決まる瞬間はグラウンドにいました。

 

二宮: 同一首位の中日と最終戦で雌雄を決することになりました。あれは野球史に残る“名勝負”でした。

緒方: 実は、94年はプライベートの方も充実していました。僕は妻と19歳のプロ1年目から付き合い始めたので、そろそろ結婚を意識するようになっていました。妻が「25歳までにしたい」と言っていたので、僕もそれぐらいかなと思っていたんです。

 

二宮: 奥さんとは同い年ですか?

緒方: はい。94年は26歳になる年でした。僕の誕生日は9月2日で、妻は10月15日。10月を過ぎてしまうと妻が26歳になってしまうので、シーズン中に入籍しなければいけなかったんです。約束を果たさなければいけないと思っていたんですが、94年は史上稀にみる混戦だったので、プライベートな時間がなくて……。あれよ、あれよという間に、10月を迎えてしまいました。

 

二宮: それで奥さんとの約束は果たせましたか?

緒方: ちょうど「10・8」の前日が移動日だったんです。その日に朝から妻と2人で役所に行って、無事に婚姻届を出すことができました。それで入籍したからには優勝しなければならないと思っていたら、「10・8」の最終決戦で中日に勝利してリーグ優勝することができました。西武と戦った日本シリーズ第5戦では、勝利を決定づける満塁ホームランを放ったわけです。

 

二宮: 緒方さんの活躍もあって巨人は5年ぶりの日本一に輝きました。正月と盆がまとめて来たような感じですね(笑)。

緒方: そうですね(笑)。10月7日に入籍したものの、2人で乾杯もできていなかったので、最初の乾杯が“優勝の乾杯”と “結婚しましたの乾杯”になりました。あの時のお酒は、公私ともに忘れられません。

 

二宮: 「10・8」の前日に、こんな感動的なエピソードがあったとは……。

緒方: 現役時代ではないですが、2009年も忘れられません。その年のシーズンが始まる前に、初めて日本代表のコーチに就任して、日本はWBCを制して世界一に輝きました。チームに戻ると、巨人の一軍コーチとして、リーグ優勝と日本一を達成しました。そして、日韓クラブチャンピオンシップでは韓国を破って優勝。その日の夜に、高見昌宏マネジャーと「お疲れ様」と言って飲んだ酒は最高でした。

 

二宮: 気が付けばそろそろお時間が……。初めてのそば焼酎『雲海』はどうでしたか?

緒方: そば焼酎と聞いていたので、そばの感じがもっと強いのかと思っていました。しかし、飲んでみるとそばの香りがちょうど良くて、飲みやすかった。僕は麺もそば党なので、これからは焼酎もそばで行きたいと思います。

 

二宮: 是非、また一緒に飲みましょう。今シーズンからブロックに関するルールが変わったことで、解説者としても腕の見せ所ですね。

緒方: ありがとうございます。いよいよ明日からプロ野球が開幕します。読者の皆さんも、是非、球場に足を運んで選手たちを応援して下さい。宜しくお願いします!

 

 

10<緒方耕一(おがた・こういち)>

1968年9月2日、熊本県出身。熊本工高から87年ドラフト6位で巨人に入団。3年目に一軍デビューを果たすと、内外野で出場機会を得た。同年、プロ初本塁打をランニングホームランで記録する。90年に初めて規定打席に到達すると、33盗塁で盗塁王に輝いた。93年に24盗塁をマークして2度目の盗塁王を獲得。94年の日本シリーズ第5戦では、満塁本塁打を放ち、長嶋巨人の日本一達成に大きく貢献した。30歳の若さで現役を引退。02年以降の通算7年間、巨人で守備・走塁コーチを務めた。09年第2回ワールド・ベースボール・クラシックから2大会連続で日本代表の外野守備・走塁コーチを任された。現在は野球解説者として活躍する傍ら、今年からBASEBALL FIRST LEAGUE・兵庫ブルーサンダーズの巡回コーチに就任した。

 

 今回、緒方さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。


提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>

麓屋

東京都新宿区西新宿2丁目2−1

TEL:03-3344-2885

 
営業時間:
ランチ  月~金 11:30~15:00
ランチ  土・日・祝 11:30~16:00
ディナー 月~金 17:00~23:00(L.O.22:00)
ディナー 土 16:00~23:00(L.O.22:00)
ディナー 日・祝 16:00~22:00(L.O.21:00)
 
☆プレゼント☆

緒方さんの直筆サインボールを本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「緒方さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は4月15日(金)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、緒方さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真/安部晴奈)


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