6月30日現在、セリーグの首位を走る広島は貯金15で、2位・巨人に9ゲーム差をつけています。6月14日から29日まで11連勝を収めるなど、交流戦が明けてもカープの好調は止まる気配がありません。今季のセリーグはよほどのことが限りカープが優勝すると、ここに断言します。

 

 ホーム試合を見ていると、マツダスタジアムはチームカラーに染まっていて、完全ホームの空間ができ上がっています。まるで、黄色と黒のトラ模様で埋め尽くされている阪神甲子園球場のようです。真っ赤に染まった球場を見ていると、最終回で1、2点差なら逆転サヨナラをしそうな雰囲気すら感じます。実際、6月は5度もサヨナラ勝ちを収めていて、ホーム試合を得意にしています。あの中でプレーするビジターの選手はやりにくいでしょうね。

 

 カープの強さの秘訣は、選手層が厚いことが挙げられます。開幕からクリーンアップを担ってきたブラッド・エルドレッドが故障で離脱しましたが、代わりに2カ月ぶりに一軍復帰したエクトル・ルナが4番に戻ってきました。チームの中心には雰囲気を良くするベテランの新井貴浩がいますし、レギュラークラスは田中広輔、菊池涼介、丸佳浩らが試合でコンスタントに結果を残しています。3試合連続決勝ホームランを放った鈴木誠也など若手の台頭も目立ちます。主砲エルドレッドが抜けても、チーム状態が変わらないということは、戦力が充実している何よりの証拠です。

 

 ここまで独走状態が続くと、1996年の“メークドラマ”を思い出すファンもいるのではないでしょうか。この年、カープは巨人に最大11.5ゲーム差をつけて、首位を独走していましたが、最後は巨人に大逆転負けを喫して優勝を逃しました。しかし、これは過去の話です。当時といまではチーム状況や戦力は全く違うので、“メークドラマ”が再現されることはないでしょう。カープ戦を見ていると、他の5球団がカープを意識し過ぎるあまり、力んでいるように感じます。

 

胴上げを知るOBからのアドバイス

  5球団に共通して言えることは、決め手に欠けていることです。昨季優勝した東京ヤクルトは、昨季トリプルスリーを達成した山田哲人を中心に中軸は良くなってきていますが、まだ下位打線が弱い。これは投手陣にも言えることです。守護神のローガン・オンドルセクは首脳陣とひと悶着して謹慎処分を食らうなど、なかなかチーム状況が安定していません。

 

 現在2位の巨人は阿部慎之助が戻ってきましたが、全盛期のような怖さが感じられない。エースの菅野智之は前回登板した試合で、3回9失点と自己ワーストを記録しました。今後は菅野で勝てない試合が続くとなると、巨人は非常に苦しくなっていくでしょうね。

 

 レギュラーシーズンは半分消化し、残り70試合を切っています。残り30試合を終えた頃には、優勝争いをするチームが絞られるでしょう。恐らく、カープの優勝が近付くにつれて、周囲は騒がしくなると思います。そうすると、選手たちも優勝を意識せざるを得なくなります。カープOBとして僕は選手たちに「優勝を意識するな」ではなく、「大いに優勝を意識しなさい!」と言いたいです。チームに優勝経験者はいませんが、今季のカープは新たな殻を破る勢いがあります。いまのカープを倒せるチームはなかなかいないと思いますよ。

 

 カープは25年も優勝から遠のいていますが、その間にじっくりと選手たちを育ててきました。今年、ようやくその努力が実ろうとしています。選手たちは、“俺たちは優勝するんだ”という強い気持ちを持って、残り試合を戦って欲しいです。あとは、足元をきちんと見つめて、やるべきことをきちんとやれば、おのずと結果はついてくるでしょう。

 

 カープOBとしてカープに優勝して欲しいですけど、優勝までに一波乱二波乱あったほうがリーグ全体は盛り上がります。5球団にも頑張ってもらって、面白いペナントレースになることを期待しています。

 

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