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(写真:南アフリカ戦の選手たちの好プレーを見て「本当にここから絞らないといけないのか」と思った手倉森監督)

 1日、日本サッカー協会は都内で会見を開き、リオデジャネイロ五輪の登録メンバー18人を発表した。既に内定しているオーバーエイジ枠3人に加え、DF植田直通(鹿島アントラーズ)、MF遠藤航(浦和レッズ)、MF大島僚太(川崎フロンターレ)、MF矢島慎也(ファジアーノ岡山)、FW浅野拓磨(サンフレッチェ広島)、FW南野拓実(ザルツブルク)らが順当に選ばれた。シーズン終盤にケガをしたFW久保裕也(ヤングボーイズ)、トゥーロン国際大会で負傷したDF岩波拓也も選出された。リオ五輪アジア最終予選突破に貢献したFW鈴木武蔵(アルビレックス新潟)はバックアップメンバーへ回り、MF豊川雄太(ファジアーノ岡山)は涙を飲む結果となった。

 

 託す側と託される側――。今回の選考について、チームを指揮する手倉森誠監督はそう表現した。

 

「これまで僕とともに戦ってくれたU-23世代の選手たちも、ここで託す側と託される側に役割が分かれる。託す側に回った選手たちはもちろん、外れた悔しさがある。その悔しさを糧に“日本のサッカーの発展のために努力をし続けてほしい”ということをメッセージとして伝えたい。託される側は喜んでいる場合じゃない。仲間の想い、国民の想いを感じ、日本のサッカーの可能性を伸ばすために責任と覚悟をもって五輪に臨んでほしい」

 

 人の想いを人一倍大切にする指揮官らしく、選外となった選手にも日本サッカーの将来のための役割はあるというメッセージから会見は始まった。オーバーエイジ3人とGK中村航輔を除くとリオ五輪アジア最終予選を戦ったメンバーが選出された。手倉森監督は「調和のとれたメンバー。柔軟性を十二分に発揮できるメンバー構成だ」と、自らが作ったメンバーリストの感想を語った。

 

 注目は全18人中7人の選手で構成されているMFだ。7人のうち中盤の底であるボランチに大島、遠藤、原川力(川崎フロンターレ)、井手口陽介(ガンバ大阪)と4枠を割いた。さらに本来は攻撃的MFの矢島もこの位置でのプレーも可能だ。手倉森監督はこう説明する。

「五輪に挑む時、果たして攻撃的にやれるのか。僕は必ず、押し込まれて守らないといけない大会になると思う。そうなった時、サイドバック、センターバック、ボランチ、ここを厚くするためにボランチを4枚にしました。ボランチの遠藤は後ろ(センターバック、サイドバック)はどこでもできる。そしてセンターバックの塩谷はサイドバックもできる。複数のポジションをこなせる選手を置いて、後ろを万全にしておきたかった」

 

 理想ばかりを追い求めず、冷静にチーム力を見極めて戦い方を選択できる手倉森監督らしい人選と言っていいだろう。18人しか選考できない五輪において守備的なポジションをほとんどカバーできる遠藤と塩谷、両サイドをこなせるDF亀川諒史(アビスパ福岡)、中盤ならどこでもプレー可能な矢島の存在は大きい。「柔軟性は十二分」と手倉森監督が言うのも頷ける。

 

 最終予選では手倉森監督の大胆なターンオーバーが目立った。リオ五輪もグループリーグは中2日の過密日程で行われるが、「全部は代えられないが、早川直樹コンディショニングコーチと選手の状態を見極めて、疲労の分散をしながらみんなで戦い抜きたい」と目論む。

 

 すでに短期決戦におけるチームマネジメント力を予選で見せつけている指揮官は「一番上のメダルを目指してやりたい」と目標を口にする。手倉森監督は自らが選んだ精鋭とリオ行きが潰えた仲間の想いを胸に48年ぶりのメダルを奪いに行く。

 

【リオデジャネイロ五輪日本代表メンバー】

 

GK

櫛引政敏(鹿島アントラーズ)

中村航輔(柏レイソル)

DF

藤春廣輝(ガンバ大阪)

塩谷司(サンフレッチェ広島)

亀川諒史(アビスパ福岡)

室屋成(FC東京)

岩波拓也(ヴィッセル神戸)

植田直通(鹿島アントラーズ)

MF

大島僚太(川崎フロンターレ)

遠藤航(浦和レッズ)

原川力(川崎フロンターレ)

矢島慎也(ファジアーノ岡山)

中島翔哉(FC東京)

南野拓実(ザルツブルク)

井手口陽介(ガンバ大阪)

FW

興梠慎三(浦和レッズ)

久保裕也(ヤングボーイズ)

浅野拓磨(サンフレッチェ広島)

 

※バックアップメンバー

GK

杉本大地(徳島ヴォルティス)

DF

中谷進之介(柏レイソル)

MF

野津田岳人(アルビレックス新潟)

FW

鈴木武蔵(アルビレックス新潟)

 

(文・写真/大木雄貴)