後期リーグが始まってから、もうすぐ1カ月が経ちます。武蔵ヒートベアーズは7試合戦い、2勝5敗(7月12日現在)。前期は12勝22敗2分けで東地区最下位に終わったので、後期は巻き返しを図りたいと思います。

 

 投手陣の中心は、前期と後期の開幕投手を務めた中村一仁です。2年目の今季は13試合投げて2勝8敗、防御率6.17と伸び悩んでいます。彼の弱点は変化球でストライクを取れないこと。ストレートを狙い打ちされて失点するケースが非常に目立っているので、変化球のコントロールを磨かなければ、結果を残すことはもちろん、NPBに入ることも難しいでしょう。ただ最近登板した2試合は失点しながらも、きちんと先発としてゲームメイクができていたので、彼はこれからグンと良くなると思います。

 

 現在チームトップの勝ち星を挙げているのは、1年目の久保田一馬です。これまで13試合投げて4勝4敗、防御率3.74。彼は真っすぐのキレが良くなり、球速も上がってきています。先述した中村とは対照的に変化球でストライクを取れるタイプなのできちんと結果がついてきているのでしょう。

 

 しかし、久保田がNPB入りする可能性はまだ低いでしょう。たしかに球速は上がっていますが、現状135キロくらい。NPBに行くためには、まずは常時140キロ出すことを目指して欲しいです。これは久保田に限らずピッチャー陣全員に言えることですが、140キロ後半を出せるようになればNPB入りは確実になるので、スピードを上げることが一番の課題ですね。

 

若手の注目株・3番山川隆介

 

 攻撃面は昨季まで主力だった選手が5人も抜けてしまったので、前期は多くの選手にチャンスを与えました。後期に向けて様々な打線を組んでいくうちに、ようやくクリーアップは、「3番奈良雄飛、4番フェリックス・ムニョス、5番山川隆介、6番関口寛己」に固まりつつあります。

 

 打線のキーマンは奈良、山川、関口の3人です。4番を迎える前に出塁するのが奈良の役割です。一発のあるムニョスは相手バッテリーから勝負を避けられることがあるので、その時は後続の2人が非常に重要になります。チームが勝つためには彼らの活躍は欠かせません。

 

 ルーキーの山川は若手の注目株でもあります。足も速いし、体も強いので、本来なら1番タイプと言えるでしょう。前期は1番で起用しましたが、バッティングで悩んでいました。5番に代えたことで、打撃も良くなってきています。もっと足を生かして欲しいのが本音ですが、彼自身は5番が合っているようです。

 

 山川の代わりにトップバッターを任せている角晃多は、チーム2位の打率.335をマークしています。角が先頭でヒットを打てばチームは勢いづきますし、彼の出塁から得点に繋がればチームは波に乗れます。その点で角はベンチの期待に応える役割を果たしてくれているので、当分は1番に固定するつもりです。

 

 うちの野手の特徴は、左打者が多いことです。右打者は熊谷将平と白井優馬の2人しかいないので、10日の福井ミラクルエレファンツ戦のスタメンは1~8番まで左バッターが並びました。僕は力のある左バッターであれば、左ピッチャーを打てると思っているので、右バッターが少ないことにデメリットは感じていません。むしろNPBを目指すのであれば、右左に関係なく打てないといけないですからね。

 

 チームの目標は後期優勝です。優勝するためには、やはり攻守における一球に対する執念が必要になります。守備をする際は、ボールを最後まで見て捕球すること。バッディングでは、甘い球を一発で仕留める集中力を持つこと。選手たちにはそういう気概で取り組むよう日々の練習から指導していきたいと思います。後期も応援よろしくお願いします!

 

小林宏之(こばやし・ひろゆき)>:武蔵ヒートベアーズ監督
1978年6月4日、埼玉県出身。春日部共栄高を経て、97年にドラフト4位で千葉ロッテに入団。02年にセットアッパーとして1軍に定着し、05年は先発で12勝をあげ、日本一に貢献。以降、3年連続で2ケタ勝利をマークする。06年の第1回WBC、07年の北京五輪アジア予選では日本代表も経験。10年にはクローザーとして29セーブをあげる。FA権を行使し、11年に阪神へ移籍。13年にはロサンゼルス・エンゼルスとマイナー契約。シーズン途中にBCリーグ・群馬へ。14年は信濃でコーチ兼任でプレーする。14年7月、埼玉西武に入団し、同年限りで引退。15年は新規参入した武蔵の投手コーチに就任し、5月から監督代行に昇格。今シーズンから監督に昇格。NPBでの通算成績は385試合、75勝74敗29セーブ、1135奪三振、防御率3.57。


◎バックナンバーはこちらから